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樹液採集のたび。クラフトビールの酵母を求めて

大人になって、いや、社会人になってから
ビールを飲むことが好きになった。

そして、京都に来てからというもの、京都醸造さんをはじめとするとってもおいしいクラフトビールに出会ったことで、わたしの中でクラフトビールの世界は一気に広がった。


そんな中、友人に誘われて行った今回の旅で
まさか酵母の原料となる樹液を求めて探検することになるとは思わなかった。


クラフトビールのうまみ構成要素


クラフトビールと聞くと、大手メーカーの手がける一般的なビールと比べてフルーティーで華やかな味わいをイメージする方が多いのではないだろうか。

私もその一人だが、クラフトビールの独特の”うまみ”を構成する要素は大きく分けて4つある。(今日知った)


①酵母 ②麦芽 ③ホップ ④水

そのなかでも、今回は”酵母”の原料となる樹液を求めて、森の中に入っていった。


意外と、森の中には樹液があった


”酵母”と聞いてピンとくる方はどのくらいいるのだろう。

”天然酵母のパン”などは聞いたことがある方もいるかもしれないが、酵母はお酒やパンなど、我々の日常生活に意外と多く使われているということがわかる。

酵母とは、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物のこと。植物や樹液、野菜や果物の表面、空気中など、自然界のあらゆるものに生息しています。

アルコール発酵をおこなうので、古くからお酒の醸造に使われてきました。また、パンづくりにも酵母(イースト)は欠かせません。発酵の際に生成される炭酸ガスがパン生地を膨らませるのです。さらに発酵過程で香り成分を生み出すのも、酵母のはたらきによるものです。

発酵のきほん
https://www.hakko-blend.com/study/b_02.html

この”酵母”の原料となる樹液を求めて森に入ったわけだが、目的があると普段見ている木や森も違う景色に感じるからおもしろい。

気になるところや視点が変わり、見えるものが変化するからこそ、その違いを感じることが新鮮だった。

そして樹液探しをするにあたって、素朴な疑問が浮かんできた。


『そもそも樹液って、どういうところに出てくるんだろう…?』


まずはそこから考えてみることにした。


思いを巡らせてみた結果、
実は人間と同じなのでは・・・?

という考えが頭に浮かんだ。


…というのも、私は先日怪我をして深い傷を負った際に、その傷口を治そうと体が自然と体液をたくさん出していたのを思い出したからだ。

木々も同じで、他の木とぶつかったり動物が引っ掻いたりした傷痕を修復するために、木の内側から樹液を出していたのである。

なんだか人と自然の原理が同じだったことに少しばかり嬉しさと驚きを感じつつ、自分の実体験が知識に結びついた喜びも感じていた。


色も違えば、微生物の数も違う。


最初に見にいった森には針葉樹が多く、マツの木から様々な樹液が採取できた。

そして2つ目の森では広葉樹が多く、主に桜の木から採取をした。(我々はあくまで見つける担当)

溢れるように流れ出ている樹液もあれば、カッチカチに乾燥した液もある。
まだ新鮮で透明の液もあれば、メープルシロップのように艶々の茶褐色で、熟成した液もあるからおもしろい。

どうやら桜やさくらんぼの木からはいい樹液が出やすいらしく、それはなんとなくわかる気がした。

白い樹液を出すマツの木

こんなふうに白く溢れ出ている樹液は珍しく、微生物の量が多いからすぐには培養できないらしい。

樹液というと、クワガタやカブトムシなどの昆虫が好んで食べる印象があった。


こんなにまじまじと見たのは初めてだったが、見ているとなんだか美味しそうに感じてくるから不思議である。

つやっつやの樹液



『一体、どんな味がするんだろう・・・?』

そんな興味一心で、気付いたら友人とともに樹液を手にとり、ペロリと舐めていた。

『あれ・・・甘くない。』


むしろ、ハッカとミントの間のようなスーッとした香りと後味。
舌触りはスニッキーな食感が残り、舐めた後もずっと唇がくっつくような感覚があった。

酵母(微生物)は糖が好きとも聞いていたので、クワガタはさぞ甘くておいしい樹液を食べているのだろうと思い込んでいた私はとても驚いた。


思っていた味とは全く違ったけれど、樹液を味わったことでなんだかクワガタの気持ちを少し感じることができたような気がした。(勝手に)

同じ木の幹でも、同じ種の木でも、生えている場所の植生や場所によって樹液の酵母の性質は異なる。

だからこそ多くの樹液を採取して、いろんなサンプルを調査するらしい。

色が濃くとろみがある樹液は発酵した証のようだ。


まなびのきほん


今回の旅は、思わぬ形で「酵母の原料となる樹液採取の旅」となった。

だけど、クラフトビールを作るためにこんなふうに酵母を採取し、培養液で培養して原料にしているということを知れたことで、これまでと全く違った視点を得ることができた。

今回の旅を通して感じたのは、本当に「百聞は一見にしかず」ということである。

実際に樹液の味を確かめてみたり、樹液を採取してみたり。それが酵母の原料になるということを直接学ぶことで、これからクラフトビールを飲むのが楽しみになるくらい、わくわくする時間だった。

改めて、自分の学びには体験と経験が必要で、そのためには自分で足を動かし、見て、感じて、それを実践/発信していくことが必要なのだと体感できた。

貴重な時間を共にすることができた皆様に感謝である。

同世代が、本当にいいものを作るために探究している姿もとても刺激になった。


早くまたおいしいビールが飲みたいな。

甘くない、すっきりした味の樹液を食べるクワガタや、
樹液の採取から始まるビールづくりの作り手に思いを馳せながら。


今日もとっても素敵な1日でした。
明日もきっといい日になるさ〜





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