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「本屋もない島での暮らし」 草野海月

15年ぐらい前、私は沖縄の離島に住んでいた。そこには本屋もCDショップもカラオケもなかった。もちろんパチンコ屋も。その島では「本」は娯楽であった。

住んでいた家にはインターネットも引いていなかったから、物は店で直に買うしか方法は無かった。それがそこの「暮らし」だった。隣の島にたまに飛行機に乗って行く時が唯一、娯楽である「本屋」と触れ合える機会だった。

元来、本好きの私にはそれはドリームタイムだった。その島には「街」があり、その街には「本屋」があった。

住んでいた島には「暮らし」と「仕事」があった。島の世界の中には「まつりの精神」が脈々とあった。文字ではない世界が。文字は都市を作り、唄は暮らしを彩る。「本屋」のある場所へ戻ってきて、今度は島の夢を見ている。

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