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一人会社の経理塾(税理士選定ガイド)


(1)はじめに

経営を行う中で、経理や税務といった分野はどうしても複雑で敬遠しがちなものです。

特に、個人事業主や一人会社の経営者の多くは、多くの業務を一人でこなさなければならないため、経理の知識などがその中でどれだけの重要性を持つのか、見極めるのが難しいと感じる方も少なくないでしょう。

先に、「知っておくべき経理知識」や「知っておくべき決算書知識」といったテーマで、経理の基礎や決算書の基本的な読み方をお伝えしてきました。

しかし、これらの知識を持っていたとしても、時として専門家の助けが必要になる場面があります。特に税務面については、業務の煩雑さという側面だけでなく、税務調査に伴う追徴課税リスクなどの可能性があるため、税理士に業務を依頼する方も多いのが実情です。

しかし、
どのタイミングで税理士を選定するとよいのか?
どのようにして適切な税理士を選ぶべきなのか?
適正な税理士報酬水準は?
といった税理士選定時のポイントについては十分に理解されていないのも実情です。

本記事では、そんな個人事業主や一人会社の経営者の皆様に向けて、解説を行いたいと思います。

(2)税理士との契約形態

税理士との契約形態は、主に以下の3つに区分されます。
契約形態の選択に際しては、依頼したい業務の具体的な範囲、MTG有無/頻度、そして税理士との相性や信頼関係の構築度合いも踏まえて検討されます。経営スタイルやビジネスの方向性、ニーズに最も適合する契約形態を選ぶことが、円滑な業務進行の鍵となります。

【主な税理士との契約形態】
①顧問契約

月々の経理業務代行や税務相談などを含む定期的なサポートを受けるケース
②年一決算申告
年一度、決算と確定申告のサポートを受けるケース
③スポット相談
特定の課題や疑問点に対して、相談を行うケース

税理士との契約パターン

【税理士の主な業務内容】
①経理(記帳)
月次や年次の経理業務。必要な領収書や収支のデータを税理士へ提供し、税理士がこれを基に会計ソフトへの入力や整理を実施します。
②決算書作成
税理士が損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)などの財務書類の作成を実施/サポートします。
③確定申告書作成
法人税や所得税など、必要な確定申告書類の作成を税理士が実施/サポートします。
④会計税務相談
経営の疑問や悩み、税務上のリスクや将来の税務対策に関する相談などを税理士と定期的に実施します。

(3)税理士選定タイミング

税理士への外注を検討している方は、経理全体像を理解(経理方法、決算書の理解など)してから、税理士にどのような業務を依頼するかを判断するとよいでしょう。

自身で経理の全体像を理解していない状況下で時期尚早に依頼してしまうと、具体的な依頼内容が固まっていない中での選定となり、双方の期待が合致せず、後から期待ギャップが生じる可能性が高まります。

依頼する側だけでなく、依頼される税理士側にとっても、「この内容は報酬に含まれていないが…」ということもよくありますので、税理士に何を求めるのかは明確にしておきましょう。

税理士選定のタイミング

(4)報酬水準

個人事業主や一人会社経営を安定させるためには経費管理が重要ですが、適正な税理士報酬がどの程度なのかは、気になるポイントの一つでしょう。
税理士の報酬は、契約の内容や範囲、サービスの質、地域差など様々な要因で変動しますが、個人事業主や一人会社など比較的小規模な事業にかかる一般的な相場感を以下に示します。

<1. 個人事業主のケース>
①顧問契約
報酬の相場は月1~3万円程(月額報酬に加え、決算申告料が月額報酬の4~6ヵ月分追加で生じる)
②年一決算申告
一回の業務としての報酬となり、5~20万円程
③スポット相談
1時間あたり1~3万円程

<2. 法人のケース>
①顧問契約
報酬の相場は月2~5万円程(月額報酬に加え、決算申告料が月額報酬の4~6ヵ月分追加で生じる)
②年一決算申告
一回の業務としての報酬となり、10~30万円程
③スポット相談
1時間あたり1~3万円程

(5)税理士への外注判断基準

税理士への業務外注の是非を考える際には、3つの主要な観点から自身のニーズと状況に合った最適な方法を選択するとよいでしょう。

税理士への外注判断の考え方

【①本業へ専念したい方】
本業に集中し、経理や税務処理といった専門的な業務は専門家に任せたいという方
は、税理士への外注が最適です。これにより、専門的な知識や経験を持った税理士が適切に業務をサポートしてくれるため、ビジネスの発展に専念することができます。
ただし、ご自身でも決算書の読み方など最低限の経営リテラシーは身に付けておきましょう

②コスパで判断したい方】
経理に関する作業時間と、それにかかる費用を元に、税理士への外注が経済的に合理的かどうかを判断する方法もあります。
例として、年間64時間の作業時間で税理士報酬が32万円の場合、1時間あたりのコストは5,000円となります。
ご自身の実情に合わせ時間単価を計算し、その金額に納得がいくのであれば、税理士への外注が適しています。逆に、この金額感に納得がいかない場合は、自身で経理を行うことを検討すべきでしょう。

なお、個人事業主や一人会社で経理や確定申告などの一連の作業を行う際には、一般的に、年間40時間~100時間ほどの作業時間を要するかと思いますので、目安としてください(ただし、初年度は、システムの初期設定や不慣れな状況などを考慮すると、さらに時間を要すると思います)。

③経費を最小化したい方】
限られた予算内で経理を効率的に行いたいという方は、自身での経理(自製)が良い選択となるでしょう。
ただし、自身で経理を行う際には、適切な知識やスキルの習得が必要となります。

(6)おわりに

経営者としての日々の業務は多岐にわたり、数多くの判断や選択を求められます。その中で、経理や税務といった業務は、ビジネスの健全な成長をサポートする重要な要素の一つです。

最終的な税理士選定の選択は、各事業主のビジネスの状況や将来の展望、また自身の価値観やビジョンに基づいて行われるべきですが、
今回の記事では、税理士への外注を検討する際のポイントや、それに伴う適切な方法の選択に関する情報をご紹介させていただきました。

個人事業主や一人会社として、一人で事業経営を行うということは、自由な半面、心細いものです。
税理士を起用される方は、事業を続ける上でのパートナーとして、税理士との良好な関係を築きながら、経営のさらなる発展を目指してください。

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