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減点法の彼と加点法の私。別れる理由なんて、何かが「違った」だけ

「好きかどうかわからない」で付き合った恋人たちの末路【おまけ②】

夜中の3時に元彼からくるラインなんてろくなことがない。

案の定、好きな人と別れたばかりだという彼の寂しさを紛らわすのに利用された感は否めなかったが、別れてから8か月ぶりに再会し、耳にした彼の声に鼓動が速まったのも事実だった。

働き始めた仕事の忙しさのせいか、少しやつれて見えたが、好きな人と別れたばかりの傷心も重なってのことだろうと容易に想像できた。


私と別れてしばらくして、彼には好きな人ができたらしい。
その人と付き合って、遠距離で、性格が合わなくて、大切にされなくて、耐えられなくなって別れたという。

うまくいかなかったけど、その人のことは好きだったんだね。
私のことは好きじゃなかったのに。

胸の内から湧き上がる声に蓋をして、傍観するように彼の話に耳を傾ける。

その人と別れて気づいたという。私が付き合っていた時に彼にしてあげていたこと、当たり前に思っていたことが大切にされていたのだと。

「俺たちは性格が合っていた」

今さらそんなことを言ったってなんの意味もないことを、お互いが理解しているような沈黙が流れた。


彼は、はじめに「好き」の直感がないと恋愛ができない人だった。それがなかった私とは恋愛を続けることができないと、私と付き合って初めて気づいたのだという。
だから彼は今度、「好き」と直感した人と付き合ってみた。すると今度は「性格が合わない」という要素に苦しんで、恋愛が続けられないと思ったらしい。

彼の話を聞いていて、「この人は減点法で人間を見る人なんだな」と思った。

彼にとっては最初の「好き」がピークで、相手のことをよく知らない状態でも「好き」と直感した人に向かって走らずにはいられない。だけど、付き合って相手のことをよく知る段階になってようやく、自分と合わない性質の人なのだと知る。

性格が合わない、価値観が合わない、連絡の頻度が合わない。

そういった”自分とは合わない点”でどんどん減点していった結果、気持ちがなくなっていってしまう。

私は真逆だった。他人に言われたことがある、「あなたは加点法で好きになる人だ」と。
はじめに「好き」を直感しなくても、時間を重ねるうちに相手の好きな部分に気づいていく。

他人を否定しない考え方が好き、思考の深いところが好き、笑った時にできる目じりのシワが好き。

どんどん好きな点を発見していって、気づけばまるっとすべてが好きになっている。

私と彼は恋愛面において性質の違う人間だった。
求めているものが違うのだから、そんな人たちの間に恋愛が成立するはずがなかった。

「私とあなたは性格は合っていたけれど、恋愛観だけが決定的に違ったんだね」

何時間も会話を重ねてようやく気がついた。
私たちは合わなかった、だから別れたのだと。


彼と別れたばかりの頃は、必死に理由を探していた。

なんで別れたのだろう。私の何がダメだったのだろう。何か気に障ることを言ったのだろうか。

自分を責めるようなことばかり考えて自己嫌悪した。
だけど、別れる理由って、何か決定的な一撃があったからではなくて、もっとあいまいで、きっと明確な理由なんてなくて、なんとなく、全体的に、何かが「違った」だけ。

だれも悪くない。お互いが必要としていなかっただけのことだった。


感情の答え合わせ。

8か月ぶりに再会した彼と対話を重ねて、かつて抱いたモヤモヤを答え合わせしていくと、いろんなことが腑に落ちた。まるでパズルのピースが正しい位置にはまっていくかのように、すべてがぴったりと腑に落ちた。

何もかもが腑に落ちて、8か月経ってようやく、別れることになった私たちの結末を肯定することができたのだった。


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