竹条ひと花

小説を読んだり書いたりします。 公募始めて約一年。最高戦績は、2024年のノベル大賞4…

竹条ひと花

小説を読んだり書いたりします。 公募始めて約一年。最高戦績は、2024年のノベル大賞4次通過。

記事一覧

14/1635。
ここまで残させていただいて、本当にありがたいです。
思い出深い作品になりました。

5

女のための文学賞、2本書き上げました。まだ推敲というか、見直しは必要ですが。3本目、なかなか筆が進まない。

松本清張賞は諦めました。仕事の都合上、その辺りで長編を書くのは難しくなってしまいました。

竹条ひと花
10日前
6

2024年の集英社オレンジ文庫ノベル大賞四次選考通過作品を掲載しました。『ハチドリ』です。一章あたりが長いので読みづらく申し訳ありませんが、よろしければご覧ください。

竹条ひと花
3週間前
2

ハチドリ 第三章

ハチドリ 凜はふと目を覚ます。自室のベッドの上だ。  時計を見ると、十一時。外は明るい。  とっさに、仕事! と焦るが、今日が土曜日だったことを思い出す。  胸を…

竹条ひと花
3週間前
3

ハチドリ 第二章

プロジェクト しばらくは、平和な日々が続いた。  石黒から、例の事件の際の案件代行の礼がしたいと、珍しく凜は外にランチに出ている。普段は節約のためも大きいが、そ…

竹条ひと花
3週間前
3

ハチドリ 第一章

新参 さあ、色を乗せよう。  ピンクのカラーコントロールが入った下地、明るめのイエローオークのリキッドファンデーションに、うっすらパールの入ったパウダーを乗せ…

竹条ひと花
3週間前
8

砂漠の果てで虹を待つ

 2024年の集英社ノベル大賞に応募していました。  結果は、四次選考通過、最終候補入りならずでした。後述もしますが、そこまで行けたのは完全にラッキーだった思います…

竹条ひと花
4週間前
6

イガを握りしめる

 話題の選評を拝読しました。 https://shosetsu-maru.com/pr/keisatsu-shosetsu/new_3rd_award_result.html  この厳しさの是非はさておき。  私はいくつか新人賞公募…

竹条ひと花
1か月前
8

夢喰い堂の悪食 第3話

第3話 甘露の夢 ─ 志島明香里の場合  薄暗がりの夢喰い堂。定位置に座ったゲテが、艱苦の燈會に目を向ける。  まだ小さな炎が消えそうになりながら揺らめいている。 …

竹条ひと花
4か月前
1

夢喰い堂の悪食 第2話

第2話 憤怒と恥辱の記憶 ─ 橘颯太の場合  わあ、きゃあという声で、俺は目を覚ます。薄いカーテンから日が透けている。もう昼過ぎのようだ。  むくりと体を起こし伸び…

竹条ひと花
4か月前
5

夢喰い堂の悪食 第1話

第1話 終焉と救済の記憶 ─ 佐々木苺の場合  課長のデスクの前に立ち、身を固くする。 「お前さ、その癖、どれだけ経ったら治るわけ?」  四十を過ぎて頭髪に翳りが見…

竹条ひと花
4か月前
4

夢喰い堂の悪食 プロローグ

あらすじ 過去の傷に苦しむ人の前に突如として現れる奇妙な〝夢喰い堂〟。  獏のゲテと火車の黎は、淡々と獲物を待つ。艱苦の燈會に導かれた人間は、その世界へと迷い込…

竹条ひと花
4か月前

猫のいる殺人 第4話

第4話  翌々日の朝、十二月十三日。  〝その人物〟は、谷川北署の取調室に呼ばれていた。表向きの要件は任意の裏取り聴取だった。  芽依は、〝その人物〟の前に座り、…

竹条ひと花
4か月前
1

猫のいる殺人 第3話

第3話  十二月十日。その日の朝も、芽依は一番乗りをして、捜査会議の準備を手伝った。  捜査会議では、通信記録の取得がまだ遅れていること、永濱が七日の二十時半頃に…

竹条ひと花
4か月前
1

猫のいる殺人 第2話

第2話  事件発生から二日後となる翌朝、誰よりも早く芽依は帳場に来ていた。  捜査本部となる予定の会議室を職員から聞き出し、手持ち無沙汰にウロウロとする。昨日は頭…

竹条ひと花
4か月前
1

猫のいる殺人 第1話

あらすじ アパートの一室で若い女性が殺された。事件に挑むのは、捜査一課の新人刑事・明城芽依。バディの大越研吾刑事とともに、半密室の殺人事件解決のため、奔走する。…

竹条ひと花
4か月前
2

14/1635。
ここまで残させていただいて、本当にありがたいです。
思い出深い作品になりました。

女のための文学賞、2本書き上げました。まだ推敲というか、見直しは必要ですが。3本目、なかなか筆が進まない。

松本清張賞は諦めました。仕事の都合上、その辺りで長編を書くのは難しくなってしまいました。

2024年の集英社オレンジ文庫ノベル大賞四次選考通過作品を掲載しました。『ハチドリ』です。一章あたりが長いので読みづらく申し訳ありませんが、よろしければご覧ください。

ハチドリ 第三章

ハチドリ 第三章

ハチドリ 凜はふと目を覚ます。自室のベッドの上だ。
 時計を見ると、十一時。外は明るい。
 とっさに、仕事! と焦るが、今日が土曜日だったことを思い出す。
 胸を撫で下ろす。それと同時に昨日起こった事件の数々を思い出す。
 昨日は賀久井リゾートに往訪して、理不尽な仕様変更を言い渡され、侮辱的な言葉を言われ、会社に戻ったら怪文書騒ぎで、そして、清瀬に告白された。
 ベッドの上に体操座りをし、掛け布団

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ハチドリ 第二章

ハチドリ 第二章

プロジェクト しばらくは、平和な日々が続いた。
 石黒から、例の事件の際の案件代行の礼がしたいと、珍しく凜は外にランチに出ている。普段は節約のためも大きいが、そもそも料理が好きなのもあって、凜の昼食は弁当だ。
 石黒が選んだのは小洒落たイタリアンの店だった。
「朝野ちゃん、偉いわよね、毎日お弁当作って。うちは子供の保育園が給食だから助かるわ」
「偉いというか……お弁当を埋めるのって達成感があるんで

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ハチドリ 第一章

ハチドリ 第一章

新参 さあ、色を乗せよう。

 ピンクのカラーコントロールが入った下地、明るめのイエローオークのリキッドファンデーションに、うっすらパールの入ったパウダーを乗せる。
 月曜日の朝、テンションを上げるために、先日買ったばかりのアイシャドウ。ピンクオレンジとイエローグリーンの難しい組み合わせだが、色同士が喧嘩しない配置で美しく仕上げていく。
 頬には定番のピンクオレンジ。一時期流行ったクリームやリキ

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砂漠の果てで虹を待つ

 2024年の集英社ノベル大賞に応募していました。
 結果は、四次選考通過、最終候補入りならずでした。後述もしますが、そこまで行けたのは完全にラッキーだった思います。

 四次選考通過が発表されてから七月中は、身を焼くような、そして、徐々に絶望が体を冷やしていくような日々でした。
 いつ、いわゆる〝受賞連絡〟が来るのか、私は受賞したことがないので知りません。だから、ただ素直に待っていました。一日一

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イガを握りしめる

 話題の選評を拝読しました。
https://shosetsu-maru.com/pr/keisatsu-shosetsu/new_3rd_award_result.html

 この厳しさの是非はさておき。

 私はいくつか新人賞公募に出してきたわけですが、それがもし受賞したとして、そのあとのことを考えられていなかったと気づきました。
 受賞して、そのあと出版されて、今の私のような一般読者の目に

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夢喰い堂の悪食 第3話

夢喰い堂の悪食 第3話

第3話 甘露の夢 ─ 志島明香里の場合

 薄暗がりの夢喰い堂。定位置に座ったゲテが、艱苦の燈會に目を向ける。
 まだ小さな炎が消えそうになりながら揺らめいている。
「おや、黎。火種だよ」
「また久しぶりの餌だな。まったく、その燈會の条件は厳しすぎないかい」
 黎はカウンターの上に座り、グルグルと文句を言う。
「そんなこと、私に言われてもなぁ。時間があくのは良いとして、今回こそ甘露の夢の返し先を引

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夢喰い堂の悪食 第2話

夢喰い堂の悪食 第2話

第2話 憤怒と恥辱の記憶 ─ 橘颯太の場合

 わあ、きゃあという声で、俺は目を覚ます。薄いカーテンから日が透けている。もう昼過ぎのようだ。
 むくりと体を起こし伸びをすることもなく、猫背の体を引きずりながら二階の自室の窓から外を見る。中学生のグループがはしゃぎながら通っていく。
 俺はカーテンを再度引き、強く握りしめる。嫌な記憶が蘇った。顔を片手で覆う。伸びた髭に手が当たった。
 ──お隣の橘さ

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夢喰い堂の悪食 第1話

夢喰い堂の悪食 第1話

第1話 終焉と救済の記憶 ─ 佐々木苺の場合

 課長のデスクの前に立ち、身を固くする。
「お前さ、その癖、どれだけ経ったら治るわけ?」
 四十を過ぎて頭髪に翳りが見える男性が、ぎしりとオフィスチェアを鳴らし、頭の後ろで手を組む。湯本課長、私の上司にあたる。
「あがり症か何か知らないが、また古賀の同行でフリーズしたんだって? 先方から問い合わせがあったよ。バックオフィスでも企画でも、予想外の質問が

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夢喰い堂の悪食 プロローグ

夢喰い堂の悪食 プロローグ

あらすじ 過去の傷に苦しむ人の前に突如として現れる奇妙な〝夢喰い堂〟。
 獏のゲテと火車の黎は、淡々と獲物を待つ。艱苦の燈會に導かれた人間は、その世界へと迷い込む。
 恐怖を感じると体が固まる会社員。引きこもりの青年。雨に怯える大学生。
 様々な傷を抱えた人々が、夢喰い堂に囚われる。
 苦しみの記憶を喰われるか、それとも残すか。
 そして、記憶を喰うゲテの目的とは。
 現実ではない世界で現実と向き

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猫のいる殺人 第4話

猫のいる殺人 第4話

第4話

 翌々日の朝、十二月十三日。
 〝その人物〟は、谷川北署の取調室に呼ばれていた。表向きの要件は任意の裏取り聴取だった。
 芽依は、〝その人物〟の前に座り、大越は横に仁王立ちした。
「今日はお時間をいただき、ありがとうございます。裏取りの結果、南井さんのお宅の玄関に、植村将義の下足痕が残っていたことが見つかり、南井さん殺害は植村の犯行ということで、確定となりそうです。
 植村は、既婚者であ

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猫のいる殺人 第3話

猫のいる殺人 第3話

第3話

 十二月十日。その日の朝も、芽依は一番乗りをして、捜査会議の準備を手伝った。
 捜査会議では、通信記録の取得がまだ遅れていること、永濱が七日の二十時半頃に〝キャッツシールド〟の拠点に戻ってきていたことの裏取りが、ICカードの記録によってできたことなどが報告された。
 それに加えて、大越が、南井に最近できたという〝彼氏〟がいたことと、永濱が〝キャッツシールド〟に戻った時間帯に、〝ウエムラマ

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猫のいる殺人 第2話

猫のいる殺人 第2話

第2話

 事件発生から二日後となる翌朝、誰よりも早く芽依は帳場に来ていた。
 捜査本部となる予定の会議室を職員から聞き出し、手持ち無沙汰にウロウロとする。昨日は頭が冴えてあまり休めなかった。
 会議室の扉がガチャリと音を立てて開く。
「え!?」
「あ、おはようございます!」
 驚く谷川北署員に、芽依は爽やかに挨拶した。
「すみません、もう人が来ているとは思わず」
「いえいえ、私が早く来ちゃっただ

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猫のいる殺人 第1話

猫のいる殺人 第1話

あらすじ アパートの一室で若い女性が殺された。事件に挑むのは、捜査一課の新人刑事・明城芽依。バディの大越研吾刑事とともに、半密室の殺人事件解決のため、奔走する。
 保護猫カフェ、猫ボランティア、謎の男に第二の事件。猫を中心とした不可思議な事件の黒幕とその意図とは。
 黒猫の金の瞳だけが、すべてを見ていた。

本編第1話

 その人物は肩で息をしていた。針のような静寂が身を包む。
 何故こんなことに

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