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根気より呑気でたのしむ外国語

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英語をはじめ、外国語のもつ “おかしさ”、“たのしさ”、“おもしろさ” について、のんびり気楽に書き留めていく。雑考。
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2020年4月の記事一覧

#58. 翻訳者という「裏切者」

#58. 翻訳者という「裏切者」

翻訳は、裏切りにも似た行為である。

そんなこと言ったら、本業の方に怒られてしまうだろうか。

だがこれはなにも、ぼくの個人的な意見ではない。

イタリア語に、次のような言葉があるのだ:

Traduttore, traditore.
翻訳者とは、裏切者だ。

イタリア語 traduttore は英語で言うところの translator(翻訳者,通訳者)で、traditore は英語の trait

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#57. 月の向こうから、失礼します

#57. 月の向こうから、失礼します

福沢諭吉は、戊辰戦争で上野が戦場になったさなかにも、大砲の音を聞きつつ講義を続けたという話がある。

先週の記事で、いまこの状況でくだらない言語ネタを書いていくのは、世間とのずれをひしひしと感じ、抵抗があるということを書いた。世界が大きな混乱にある中、なにを書くべきなのだろうかと。

しかし、上記の福沢諭吉の逸話を知って、すこしだけ肩の荷が下りた。自分が本当に書きたいことがあるのなら、外の世界がど

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#55. いまや世界が燃えているのに

#55. いまや世界が燃えているのに

ここ最近よく脳裏に浮かぶ、英語の慣用表現がある。

というのも、この数カ月、英語オタクの呑気なつぶやきがめっきり書けなくなっていて、書こうにもどうも、そういう気分にはなれないのだ。

そういう気持ちになるワケは、次の記事の中でライターの古賀史健さんがキレイに表現してくれている。

古賀さんには目下取りかかっている著書があるのだが、先日その発売を延期することについて考えたらしい。

こういう本をつく

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#54. illness の i が we になるとき

#54. illness の i が we になるとき

久しぶりに鳥肌の立つ感覚を味わった。

世界中の人々がロックダウン下で自宅にいることを強いられる中、YouTube で Virtual Choir(バーチャル合唱団)と呼ばれる動きが起きはじめている。

地球上のさまざまな場所にいる人たちが、自分の歌声を録画して送り、それらが一つに合わさることで、物理的には離れている人々による「合唱」ができあがる。

百聞は一見に如かず。ともかく聴いて、観てほしい

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#53. それでも笑えれば

#53. それでも笑えれば

普段あまり口を開かない父に、「...... あんまり暗くなるな」と言われるほど落ち込んでいた数年前、家族が寝静まってから深夜に独り、布団の中で漫才動画を観ていたのをよく覚えている。

暗い時代を乗り越えるのに、笑いは必要不可欠だ。事態がなにも変わらなくても、笑っているその瞬間だけは、不安や恐怖も忘れられる。



近ごろ憂鬱なニュースが続き、本来ならば、英語オタクのザレ言・タワ言・ヒトリ言を書く

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#52. これから先の英会話

#52. これから先の英会話



ときは 2075 年
「おばあちゃん、どうしてそんなにお外に座ってるのが好きなの?」
わたし「こうすることが、法律で禁止されていた時代があったのよ」

世界の人口の 1/3 がなんらかの移動制限下にあると紹介したのは月曜日だが、それから 4 日が過ぎた今日。とうとう「人類の半数がロックダウンの制限下にある」ということを記事で知る。

前回の記事の冒頭部でも説明したが、コロナウィルスは、人類の住

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