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コロナワクチン接種センターこそ最高の教育現場だ!

東京では、一般市民向けコロナワクチン事業が5月から始まった。
私は、たまたま医療機関のスタッフとしてこの事業を担当することになった。
幸い、私の従事しているクリニックではインフルエンザシーズンに企業へ集団接種を行っていたのでノウハウがあった。
筋肉注射に関しても、積極勧奨を行っていなかった子宮頸がんワクチンをずっと提供し続けていた為スキルが習熟していた。
その為、スタッフのスキル面や運用面に関する心配は皆無であった。

何故教育の現場なのか?

コロナワクチン集団接種事業は、我が国においても初の試みだ。
当然、どのような事を行えば良いのか想定が出来ない。
行政においては、集団接種などの事業に関するノウハウは当然持っていない。

・どのような緊急物品を用意すれば良いのか?
・会場はどの程度の広さが必要なのか?
・会場のレイアウトはどのようなデザインが良いのか?
・医療従事者は筋肉注射をしっかり出来るのか?
・高齢者1人あたりの接種に掛る時間はどれくらい?
・一般市民は何が気になるのか?
などなど、未知の事は山積みだった。

つまり、新たなノウハウやスキル構築する最高の場所だった。

今後同様の案件が発生するのであれば、私は派遣会社からの派遣スタッフではなく新卒公務員や学生を多く投入すべきだと思う。
この場で得られるスキルはとても多い。

まず、コミュニケーションスキルが上達する。
学生は簡潔に話すスキルを身に付ける機会が少ない。
1日数百人来られる会場において、簡潔に伝わるコミュニケーションは必須のスキルだ。
分かりにくければ置いて行かれるし、しっかり伝えられなければ極論医療事故につながる。

また、こちらが求める情報を手に入れるためにどのような質問を投げれば良いのか、を考える機会になる。
ストレートな聞き方では、少し刺々しい印象を与えてしまい、炎上するケースはよく見かける。
特に業界問わず、新卒に見られる傾向が多い。

次に、各フェーズごとのニーズ把握が出来る。
実は、接種に来られる時期及び年齢層によって、懸念点や相談内容の傾向が違う。こういった情報は教育の場ではわざわざレクチャーしてまで教えることはないだろう。
しかし、これを把握することでどういった接種体制を敷くべきなのか、などの現場感覚が身に付き、自分が率先して行うときの材料となるのは間違いない。
集団接種を行う際の情報の引き出しを作ることが出来るのだ。

良い所は自らの血肉に、悪い所は反面教師に。
現場にはそのサンプルがたくさんあった。

大久保利通は、明治七年殖産興業に関する意見書にて以下のように記している。
「およそ国の強弱は人民の貧富に由り、人民の貧富は物産の多寡に係る、物産の多寡は人民の工業を勉励とすると否ざるとに胚胎すといえども、その源頭を尋るに、未だかつて政府政官の誘導奨励の力に依らざる無し」
国力は国民の貧富で決まる。国民が豊かになるためには政府・官僚の適切な政策実行が不可欠だ。
そのためには現場に立って、大局を見極め、意思決定しなければならない。

こういったことを踏まえると、医療者を目指す者や、医療行政に携わりたい人、医系技官は学ぶ場としても経験する場としても、とても良い機会だったはずだった。

これが活かされない未来は、教訓を得られない事と同義であり、同じことが起きたとしても洗練されることは無く、0からのスタートとなるだろう。

そうならない為にも、ぜひ3回目接種時は自らの目で見て、肌で体験し、自らの頭で考える機会を持ってほしい。

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