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書評に震えた

私の新刊書『国語を楽しく』について、無藤隆先生が核心を突く書評を書いてくださった。無藤先生のご了解を得て、ここで紹介させていただく。以下、無藤先生から頂戴した書評です。

 著者は国語教育の研究者。その著者が国語教育に関わる提言を明快に説く。
 その特徴はその言語学習観から発し、長年の国語教育の実践への研究者また実践助言者としての関わりから練り上げてきたことにある。whole languageつまり意味としての言葉を重視する立場からの理論的な明快さと、それを実践に活かすための実践を通して作り上げられてきた工夫が多く示されている。
 その言語学習と教科としての国語教育の考え方を引用してみよう。
「言葉は、形と意味が一体になってはたらくものであり、言葉から意味を取り除いたとたんに、言葉は言葉でなくなる。意味のない言葉は、言葉の抜け殻でしかない。言葉の形だけを取り出して学習しても、言葉の力は豊かにならない。
 国語科で学ぶのは言葉であるが、言葉が運ぶ世界も学ぶのが国語科である。そういう意味で、国語科は「二重カリキュラム」的である。「二重カリキュラム」とは、言葉の学習と、言葉を通して伝えられる内容の学習が同時に成立するという二重性を一体的にとらえるカリキュラムである。」
「国語科は言葉の力を伸ばす教科であるが、国語科であつかう話題の範囲は広く、人生・社会・自然・文化など全般に及ぶ。」
「言葉はすべての教科で使われ、使われることによって学ばれる。つまり、すべての教科が、その教科の学習内容を学ぶ場であると同時に、言葉を学ぶ場となるのである。そういう意味で、国語科以外の教科もまた、「二重カリキュラム」的である。」
「国語科は、教科の枠にとらわれない幅広い範囲から話題を選んで、それについて聞いたり話したり読んだり書いたりする経験を通して、言葉の力を高める教科である。と同時に、世界・宇宙・人生・文化・芸術など、幅広い範囲について、聞き、話し、読み、書くことを通して学ぶのが、国語科という教科の特色である。」
 この考えを徹底させて行きつつ、常に授業での具体論として考えて、指摘し提言するのが特徴的である。おそらく著者の国語科の捉え方や全体言語的な言語学習観に全面的に賛同しなくても、その具体的な整理については、多くの国語教育に携わる教育者にとって得るものは多いのではないだろうか。その具体的な内容は目次を見ると分かると思う。著者独自の命名ではあるが、その中味については多くの授業で使えるヒントに満ちている。
 ちなみに、最終章では、幼児期の言葉と文字の教育つまりその遊び的活動を解説してくれている。保育者に勧めたい。
 なお、本書を読んでのもう一つの読後感は、著者に張り詰めた精神が隅々にまで行き渡っている文章の見事さである。熱意に溢れた、考え抜いた文章から学ぶことは少なくない。

以上が、無藤先生がくださった書評です。
人生には、自分のことをわかってもらえた喜びというものがあります。この書評を拝読して、私はその喜びに震えました。わけもわからず目がうるみました。流行に背を向け、群れることを避けてきた私ですから、その喜びは強烈です。
無藤先生がこの書評を書いてくださったのは「友達限定」のFB投稿でした。それを私の投稿に入れて公開することをお許しいただいて紹介させてもらいます。
この本が全国の書店に並ぶのは1月17日です。もうすぐです。
ネット書店では、次のURLで、予約注文を受け付けていて、「まえがき」と「目次」の全文、および特色と概要を見ることができます。
アマゾン https://amzn.to/3FjLpcw
楽天ブックス https://bit.ly/3uBr9hA
紀伊国屋書店 https://bit.ly/3hdrnIy
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