見出し画像

階下から聴こえるギターの音色①

表題はいつか出版したいと思う
エッセイのタイトル。
試しにこの場を使って、
執筆していってみようと思う。

更新頻度は2週に一度。
まずは春まで続けてみるつもりです、
よかったらお付き合いください。


うちの夫は自宅でギター教室を営む。
わが家のリビングは2階で、
1階が彼の仕事場であり教室なため
こうしてリビングにいると
いつも床下からギターの音がする。

長く二人で生活していたアパートでは
うすい壁の向こうから聴こえていた音が、
足元からくぐもって聴こえるようになった。
ただそれだけのことだけど
それ以上のことのようにも思える。

とにかくわたしはこうやって
暮らしの足元に
日々進歩する老若男女さまざまな
生徒さん方のギターの音やその音楽を
体感しながら暮らしている。

とはいえ実際はギターだけじゃなく
流している音源や特にベース音が
響いてきたりもする。
歌声も。

そしてご本人もそうならば、
聴こえる音も聴こえ方も様々で
曲調によるものも大きいけれど
こちらのシチュエーションによる影響も
印象に大きく関わってると思う。

子どもを寝かしつけながら(寝室2階)
真っ暗な部屋で階下の音を聴くときに
なつかしく思い出す友人の家がある。

中学生時代に仲の良かった友人
Aの家は1階がスナックで、
泊まりに行くと、夜
下からカラオケの音や歌声がした。

わたしはそれがなんだか妙に安心したし
Aの家も、Aの家族も、
とにかくAがすきだった。

でもAは、
わたしが恋したKくんのことが嫌いだった。
それに、わたしがみんなに呼ばれる
なじみのあだ名も嫌って
Aだけがわたしをひさりんと呼んだ。
(Aのおちゃめなお父さんは
そしてわたしをきゃさりんと呼んだ。)

わたしはそういうのぜんぶ
Aに大切にされている気がして
嬉しかった。

でも、心は
KくんとAのあいだで引き裂かれた。
わたしはKくんに恋をして
Aに対しても恋心に似た想いを
持っていたように思う。

どちらも、成就しなかったけど。

Aは、誰とも同じ高校に
進みたくないと言って
志望校を教えてくれず
結果、片道で2時間近くかかる高校に行った。
その頃に吐かれ続けた嘘に
なぜか気づいてしまったわたしが
問い詰めたときから
Aとは遊ばなくなった。

後悔しているのは、でもそれじゃなく
卒業前の学園祭かなんかで
Kくんに一緒に舞台で歌をうたおうと
誘われたのに
Aを気にして断ったこと。

Aとは、Aの家にあった
キーボードで歌を作ったり
Aの大好きなロックスターの動きや
歌い方を研究した。

Kくんとは、
クラスの合唱コンクールでの思い出もあるし
何度もカラオケに行った。
みんなででも、少数人ででも。

わたしは何より歌うことが好きだった。

Aとだって学園祭で舞台で歌を歌った。
振り付けをして昭和歌謡。中1のとき。
だったらKくんとも、
中学生活の最後、歌えばよかった。

Kくんはわたしの青春のどまんなかにいた。
Aとはどこか日陰のつきあいだった。
(現実にAには学校では
わたしより良くつるむ親友がいた)

なんでわたしは、ゆずっちゃったんだろう。

わたしはわたしらしく
自分で自分の真ん中から
歌っていればよかった。

Aに遠慮することなく
Kくんにももちろん。

Aはどうしているのかな。
Kくんは死んでしまった。

わたしにかっこつけるなといいながら
かっこいいKくんはかっこいい自分しか
ゆるせなかったんだと思う。
みんな勝手だ。

Aはどうしているのかな。
自分が自分に響かせる音色
今、Aのどのあたりから鳴っているだろう。

あなたがついた嘘まるごと
わたしにとってはなつかしい。

あなたが嘘をつかないとならなかった
あの時代、
わたしがいたから、それ
叶えてあげられたんだ。
ということでよければ、
神さま、
いつかの晩の夢に
AとKくんとわたしがいっしょに
仲良く学祭でうたうところ見させてください。

階下から聴こえるギターの音色にのせて
シャウトするから。
ど真ん中から。

わたしの創作活動をサポートしてくださる方がありましたらぜひよろしくおねがいいたします。励みとし、精進します。