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パリの画家に会いに行く

パリ9日目。今朝は東京の友人の紹介で、パリ在住の画家、黒田アキさんに会いに行く。ヴェリブを漕ぐ事約30分。14区アレシアにある黒田さんのアトリエに着いた。

入口から見たアトリエの様子

アトリエに入った途端、折り重なって置いてある何十枚もの作品から湧き出るエネルギーに圧倒される。「すごい!」と何度も呟いてしまう。それしか言葉が出てこない。

アトリエに置いてある数々の作品

色使い、描き方、全てがエネルギッシュ。一方で黒田さんの語り口は静かだ。大学では美術史を専攻し、70年代から著名なフランスの哲学者達や数多くの知識人との交流を重ねただけあって、本人も哲学者さながらだ。

アトリエの黒田さん

とても70代後半とは思えない精神的な若さと柔軟性。若い人達の動向を追い、彼らから積極的に学ぼうとしている。今日本で起こっていること、流行りのYouTuberなどにも詳しい。そして50年以上パリで暮らしてきた培われた国際的視点。日本を、世界を俯瞰し、これからの世界を生き抜く為のビジョンを明確に持っていた。

ファッションにもこだわりがあり、ヨージ・ヤマモトなどを以前は愛用していたらしい。「今はお金がなくてユニクロばっかり」と笑うが、長身でスリムな黒のパンツをとてもカッコ良く着こなしている。

過去の栄光に囚われず、絶えず進化し、挑戦し続ける人。常識を覆し続け、面白いこと、夢中になれることを貪欲に模索し続けている。世界に名高いアーティストはその生き様もアートそのものだった。

興奮がなかなか冷めやらず、午後は娘と一緒にパレ・ロワイヤル付近にある黒田さんが描いた壁画を見に行く。「コスモガーデン」と名付けられたシリーズの一つである壁画はパレ・ロワイヤル近く、コロネル・ドリアン通りにある建物の側面に大きく描かれていた。

黒田アキさんの壁画

ギリシアがモチーフでもあり、人影のようなものは人であると同時に、奥の異空間に続く小径、パッサージュでもある。人影の位置など緻密に計算されていて、壁画は建物に馴染んでいた。

コロネル・ドリアン通りをそのまま行けば、元商品取引所の建物を利用したアートギャラリー、ピノー・コレクションに行き着く。黒田さんから建築家の安藤忠雄さんがこの建物をリノベしたと聞き、中に入ってみることに。

ピノー・コレクションの内部

豪華な外観とは違い、大ホールの壁画など良い所はそのまま残しつつも、中には安藤建築らしい、静謐でミニマリストな空間が広がっていた。

「Une seconde d’éternité (永遠の1秒)」と名付けられた現代美術の展示の数多くはインタラクティブで、物によっては触れたり、跡をつけたりできる。現代美術は敷居が高いと敬遠していたが、娘も大喜び。意外とすんなりアートを楽しむことが出来た(意味を理解しているかは別として。)

中に浮かぶ「魚」には触っていい
建物を貫く螺旋階段

閉館時間ギリギリまで美術館を楽しんだ後は、ルーブル美術館を通り、チュイルリー公園を歩く。パリの中心地にあるこの公園は夕暮れ時、多くの人で賑わっていた。

チュイルリー公園

公園を歩いていると、いつの間にできたのか観覧車を発見。どうやら夏の間だけ遊園地が設置されるらしい。

チュイルリー公園の観覧車

観覧車のみならず、ゴーカートやバンパーカーなど60以上のアトラクションがある。娘にせがまれて「アヒル釣り」をし、結局二人で25ユーロも払い観覧車に乗ることに。

観覧車から見たパリ右岸

高いだけあって観覧車は3回回転し、頂上でしばらく止まった。夕暮れに照らされたパリの風景は見事だった。特に右岸のモンマルトルまで続く街の様子はいつまでも見ていたかった。

満足して観覧車を降りると、娘が観覧車の中で「男の人と女の人がキスしていたのが見えた」とくすくす笑いながら言ってきた。子供の目の付け所は違う。

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