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席を譲ったあとどんな顔でどこにいればいいのか分からない

変わらぬ給料、降り注ぐ残業。
理不尽な要求に、消え行く同僚。

疲弊した身体は電車に揺られ今にも崩れ落ちそうだ。

椅子から見える、真っ暗な夜空はさながら未来。俺の未来。

俺のことが好きな人以外みんな消えてしまえばいいのに、なんて思っていると老人が乗りこんできた。

「あ、次で降りるんでどうぞ~(ニッコリ」

譲っちゃうのよ。おれ、席を譲っちゃうタイプなのよ。

座れなくなったのにさ、譲ったあとにさ、パアアァァァッーー!って目の前が明るくなるのよ。さっきまで煮込んだ泥水みたいな顔してたのに。
自己満足?そうだよ、俺は自分のためだけに生きてるからな。俺が満足するために譲ってるんだよ。

レディーファーストなカブトムシ

だけどさ、譲ったあとに目の前で立ってると気まずくない?ここからが俺の真骨頂。

一旦降りる。
本当はこの駅が目的地じゃないの。
降りたあと別の車両に乗り直すの。
これで状況はゼロに還る。気まずさなんて残らない。くぅ~~~~~~!!!!

ほどよい距離感のフキバッタとササグモ

ここまでが電車の話ね。

で、問題はバスよ。
優先席しか空いてない状況あるじゃん?
で、狭いバスの車内で立ってるのも邪魔じゃん?
座るじゃん?
新しい人が乗るじゃん?
「あ、次で降りるんでー(ニッコリ」とか言って譲るじゃん?
一旦降りるじゃん?
隣の車両とかないじゃん?無理じゃん?

で、余計なことを言わないで譲った場合ね。
「あ、どうぞー(ニッコリ」

もうその人の目の前に立つしかないのね。
コミュ力モンスター(*)だったら、そこから仲良くなったりするんでしょうけど、おれには無理。「あ、夜は寒くなってきましたね、あはは」が関の山。

(*)コミュ力モンスター…コミュニケーション能力に優れ、初対面でもお互いに気持ちよく「うえーい!」と肩を組んでしまえるような新人類の総称。

結局、バスは座らないのが一番なのよ。

邪魔にならないポジション取りって難しいよね。ってお話。

譲り合いを知らないベニシジミ
ほど良い距離感のクビキリギスとシブイロカヤキリ。トンネルで越冬中。
ほど良い距離感のツヤアオカメムシ

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