弁護士•税理士 栗原宏幸 / Hiroyuki KURIHARA

森・濱田松本法律事務所パートナー。税務/M&Aを手掛けています。 主に税務の最…

弁護士•税理士 栗原宏幸 / Hiroyuki KURIHARA

森・濱田松本法律事務所パートナー。税務/M&Aを手掛けています。 主に税務の最新情報や気になる論点をご紹介しています。第二東京弁護士会(61期)/ニューヨーク州弁護士/東京税理士会/日本証券アナリスト協会 認定アナリスト。

記事一覧

日産CFC事件最高裁判決(最判令和6・7・18)に関する短いコメント

1. はじめに以前noteの別稿で取り上げた日産CFC事件について、本日(2024年7月18日)、最高裁判決が言い渡されました。 結果は、国の逆転勝訴で、日産自動車に対する課税…

不動産オーナーから同族会社への賃貸(マスターリース)に関し、オーナーが課税処分を受けた事案について

1. 事案の概要不動産のオーナーが同族会社に多数の不動産を一括して賃貸(マスターリース)したところ、その賃料がサブリースの賃料(エンドユーザーが同族会社に支払った…

国税不服審判所の裁決(令和5年9月〜12月)の紹介

0. はじめに令和5年9月〜12月の国税不服審判所の裁決要旨が公表されたので、気になったものをいくつかご紹介します。 1. 消費税の課税仕入れの用途区分まず一つ目は消費…

組織再編の税務処理が否認されたPGM事件について―被告(国)の主張

【ご注意】この記事は、同業者、租税法研究者、これらに準ずる好事家向けの記事であり、前提知識の説明などをすっ飛ばしていますので、上記以外の方々にとっては読みづらい…

種類株式の税法上の時価

1. はじめに会社法により発行が認められている種類株式は、スタートアップ企業の資金調達などで広く活用されていますが、その税法上の時価はどのように算定すればよいので…

最高裁判決が言い渡される、自動車メーカーの税務訴訟について②

1. はじめにこの記事は、日本の著名な自動車メーカーに対し、課税庁が、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)を適用して巨額の課税処分をした事件に関するもの…

最高裁判決が言い渡される、自動車メーカーの税務訴訟について①

1. はじめに―どんな事件か本件は、日本の著名な自動車メーカーに対し、課税当局が、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)を適用して巨額の課税処分をしたとい…

税務調査で法的な話ができない調査官

はじめに税務調査で対峙した調査官について、思いつくままに投稿していこうと思います。 今回は「法的な話ができない」調査官についてです。 法的な話ができない調査官調…

税務の弁護士はどんな仕事をしているのか?

0. はじめにこの記事では「税務の弁護士がどんな仕事をしているのか?」を簡単にご紹介します。 税務の弁護士の仕事は、大まかに分けるとだいたいこんな感じだと思います。…

「税制改正を踏まえた税制適格ストックオプションの最新実務動向とストックオプション・プール」(TAX LAW NEWSLETTER & STARTUP …

当事務所のスタートアップと税務の弁護士が、ストックオプションに関するニュースレターを発行しましたのでご紹介します。 「税制改正を踏まえた税制適格ストックオプショ…

国税庁は通達やQ&Aなどをどう使い分けているのか?

はじめに「国税庁は通達やQ&Aなどをどう使い分けているのか?」 気になったので国税庁に行政文書の開示請求をしました。 開示請求をした行政文書「国税庁が、租税に係る法…

日産CFC事件最高裁判決(最判令和6・7・18)に関する短いコメント

1. はじめに以前noteの別稿で取り上げた日産CFC事件について、本日(2024年7月18日)、最高裁判決が言い渡されました。

結果は、国の逆転勝訴で、日産自動車に対する課税処分が適法であったことが確定しました。

2. 判決文など最高裁判決はこちらです。

判決直後の日経新聞の記事へのリンクも掲載しておきます。

また、1.の冒頭で言及した、この事件に関するnoteの別稿は以下のとおりです。

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不動産オーナーから同族会社への賃貸(マスターリース)に関し、オーナーが課税処分を受けた事案について

1. 事案の概要不動産のオーナーが同族会社に多数の不動産を一括して賃貸(マスターリース)したところ、その賃料がサブリースの賃料(エンドユーザーが同族会社に支払った賃料)に比べて低すぎるとして、オーナーが課税処分を受けた事案について、大阪地裁は、課税処分の取消しを求めるオーナーの訴えを認め、課税処分を取り消しました(大阪地裁令和6年3月13日判決)。
(なお、そのオーナーは接待交際費や車両の減価償却

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国税不服審判所の裁決(令和5年9月〜12月)の紹介

国税不服審判所の裁決(令和5年9月〜12月)の紹介



0. はじめに令和5年9月〜12月の国税不服審判所の裁決要旨が公表されたので、気になったものをいくつかご紹介します。

1. 消費税の課税仕入れの用途区分まず一つ目は消費税の裁決で、金融機関の間で授受されるATM相互利用手数料の用途区分が争点(納税者敗訴)。

判断基準やその当否は不明ながら、ADW最判の趣旨からすると課のみ対応が狭くなるのもやむを得ないか。
(同様に非のみも狭くなるべきですが

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組織再編の税務処理が否認されたPGM事件について―被告(国)の主張

組織再編の税務処理が否認されたPGM事件について―被告(国)の主張

【ご注意】この記事は、同業者、租税法研究者、これらに準ずる好事家向けの記事であり、前提知識の説明などをすっ飛ばしていますので、上記以外の方々にとっては読みづらいかもしれません。

1. はじめにPGM事件は、東京地裁で長らく審理が続いていましたが、私が適法に入手した情報によれば、本年(2024年)4月に弁論が終結し、9月に判決言渡しが予定されています。

そこで、私が適法に入手した情報に基づき、同

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種類株式の税法上の時価

種類株式の税法上の時価

1. はじめに会社法により発行が認められている種類株式は、スタートアップ企業の資金調達などで広く活用されていますが、その税法上の時価はどのように算定すればよいのでしょうか?

「よく分かりません」がこの記事の結論です。申し訳ありません。でも、世の中なんてそんなもんです。確かなことなんてほとんどありません。

しかし、これまでの議論の状況を知っていれば、実際の事案で時価が問題になったときに、問題を解

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最高裁判決が言い渡される、自動車メーカーの税務訴訟について②

1. はじめにこの記事は、日本の著名な自動車メーカーに対し、課税庁が、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)を適用して巨額の課税処分をした事件に関するもので、前回の記事の続きになります。

前回の記事は以下をご参照ください。

前回の記事でご紹介したとおり、本件については6月13日(木)に最高裁の弁論が予定されています。そこで、この記事では、本件の概要と高裁判決の内容をご紹介します。
(噛

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最高裁判決が言い渡される、自動車メーカーの税務訴訟について①

1. はじめに―どんな事件か本件は、日本の著名な自動車メーカーに対し、課税当局が、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)を適用して巨額の課税処分をしたという事件です。

自動車メーカーは、課税処分の取消しを求めて裁判所に提訴しました。

2. これまでの裁判の状況一審の東京地裁では国(課税当局)が勝訴しましたが、二審の東京高裁では納税者が逆転勝訴しました。この逆転勝訴は、当時、主要な新聞媒

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税務調査で法的な話ができない調査官

はじめに税務調査で対峙した調査官について、思いつくままに投稿していこうと思います。

今回は「法的な話ができない」調査官についてです。

法的な話ができない調査官調査官には、「法的な話ができる」調査官と、「法的な話ができない」調査官がいます。
(実際には前者にお目にかかったことはありませんが、どこかにいるはずです。)

厳密な定義があるわけではないのですが、「法的な話ができる」とは、例えば次のよう

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税務の弁護士はどんな仕事をしているのか?

0. はじめにこの記事では「税務の弁護士がどんな仕事をしているのか?」を簡単にご紹介します。
税務の弁護士の仕事は、大まかに分けるとだいたいこんな感じだと思います。

取引の課税関係に関する相談

事前照会

税務調査

税務訴訟・審査請求

以下、それぞれについて簡単にご説明します。

1. 取引の課税関係に関する相談スポットでのご相談がほとんどで、相談内容としては例えば以下のようなものがありま

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「税制改正を踏まえた税制適格ストックオプションの最新実務動向とストックオプション・プール」(TAX LAW NEWSLETTER & STARTUP UPDATES 2024年5月号)

当事務所のスタートアップと税務の弁護士が、ストックオプションに関するニュースレターを発行しましたのでご紹介します。

「税制改正を踏まえた税制適格ストックオプションの最新実務動向とストックオプション・プール」

文責: 酒井真、岡野貴明、山岡孝太、河野隆太朗

国税庁は通達やQ&Aなどをどう使い分けているのか?

はじめに「国税庁は通達やQ&Aなどをどう使い分けているのか?」
気になったので国税庁に行政文書の開示請求をしました。

開示請求をした行政文書「国税庁が、租税に係る法令の解釈適用に関する国税庁の見解を新たに周知しようとする場合(国税庁の名義によらず匿名で周知しようとする場合を含む。)に、当該見解の周知を、関連法令の取扱通達、Q&A、質疑応答事例、雑誌への取材協力その他の方法のうち、いずれの方法によ

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