税務調査で法的な話ができない調査官

はじめに

税務調査で対峙した調査官について、思いつくままに投稿していこうと思います。

今回は「法的な話ができない」調査官についてです。

法的な話ができない調査官

調査官には、「法的な話ができる」調査官と、「法的な話ができない」調査官がいます。
(実際には前者にお目にかかったことはありませんが、どこかにいるはずです。)

厳密な定義があるわけではないのですが、「法的な話ができる」とは、例えば次のようなことです。

  • 条文に即した説明や議論ができる。
    例えば、課税の根拠が何条の何項であるとか、この要件はこの事実から認定したとか、そういった説明や議論ができる。

  • 条文の解釈が必要となる場合も、解釈の根拠を具体的に示すことができる。そして、何故それが根拠といえるのかを論理立てて説明し、議論できる。

他方、「法的な話ができない」とは、上で述べたことの逆で、例えば次のようなことです。

  • 条文に即した説明や議論ができない。
    課税の根拠が何条の何項であるのかを明確に言えない。
    また、要件(条件)という発想がないためか、要件との関係で意味のない事実を殊更に強調したり、事実の総合判断によっているとか、それも「理由の一つ」だといった曖昧な説明しかできない。

  • 条文の解釈が必要となる場合に、解釈の根拠を提示できず、結論しか言えない。また、裁判例が根拠だと言いながら、何故その裁判例の判断内容が本件にも当てはまるのかを具体的に説明できない。

法的な話ができない調査官に当たったら

法的な話ができない調査官に当たった場合、言っている意味が分からず、なぜ課税を受けないといけないのかの具体的な理由もよく分かりません。そのため議論が成り立たず、また、反論する/しない以前の問題としてフラストレーションが溜まります。

また、企業の場合、税務調査の内容を役員に報告するときに、課税を受ける理由が分からないなんて経理担当者は一体何をやっているんだ、という話にもなります。

そのような調査官に当たった場合は、その調査官と粘り強く話す必要があるので、弁護士に相談することをお勧めします(私に相談いただけるなら、最善を尽くします。)。

具体的な対処法は、申し訳ありませんが企業秘密です(そもそも一概にどうといえるものでもありません。)。

終わりに

「法的な話ができない」は、「課税の根拠が固まっていない」と同義です。何故なら、課税の根拠とは、事実を税法の規定に当てはめることに他ならないところ、その内容が固まっているならば、それを説明すれば良いだけであり、説明できない理由がないからです。

場面が異なりますが、私が司法修習で勉強した検察の起案(被疑者の処遇を決める決裁文書の起案)では、例えば窃盗罪の成否を検討する場合であれば、窃盗罪の要件を列挙した上で、すべての要件について、認定した事実をあてはめて要件を満たしていることを確認しなければなりませんでした(当然のことなのですが)。

税務調査の調査官も、私人に対して不利益な処分を課すという点では検察と同じであり、そのため検察と同じような判断をしなければならないはずなのに、何故それをしないのか、また、それをしていないにも関わらず何故納税者に課税を迫ることができるのか、理解に苦しみます。

今回は以上です。ご笑覧いただきありがとうございました。

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