税務の弁護士はどんな仕事をしているのか?

0. はじめに

この記事では「税務の弁護士がどんな仕事をしているのか?」を簡単にご紹介します。
税務の弁護士の仕事は、大まかに分けるとだいたいこんな感じだと思います。

  1. 取引の課税関係に関する相談

  2. 事前照会

  3. 税務調査

  4. 税務訴訟・審査請求

以下、それぞれについて簡単にご説明します。

1. 取引の課税関係に関する相談

スポットでのご相談がほとんどで、相談内容としては例えば以下のようなものがあります。

  • セカンド・オピニオン
    他の専門家(顧問税理士、アドバイザリー業務を行う税理士法人など)の見解に納得がいかないので検討して欲しい、といった類のものです。

  • あるプロジェクトの中で生じた税務に関する論点の検討
    例えば、M&Aの契約交渉で税務上の論点が生じた場合に、その論点を検討し、必要な条項を契約書に追加する、といったものです。

  • 行為計算否認に関する検討・意見書
    組織再編やグループ内取引については、税法の規定の要件を満たしていても、それが不自然な行為による場合は税務当局が納税者の税務処理を否認できることになっています。そのことを「行為計算否認」と呼びます。
    行為計算否認に関しては、私の知る限り、大手の税理士法人が正面からアドバイスを提供することがほとんどないこともあり、弁護士が意見書を求められることがあります。

いずれの場合も、相談に対しては、まず事実を伺って論点を検討し、検討結果をお伝えするというのが大体の流れになります。

2. 事前照会

取引の課税関係がはっきりしない場合、確定申告までであれば、管轄の税務署に照会をすることができます。これが「事前照会」です。

ただし、「よく分からないので教えてください」みたいな単に教えを乞う照会はNGで、納税者の見解とその理由の説明が求められます。それを照会書の形に取りまとめ、参考資料とともに税務署に提出するのが、弁護士の仕事です。

また、照会書の提出後に税務署から追加の説明や資料提出を求められることもあり、これらに対応するのも弁護士の仕事です。

税務署からの回答は口頭で伝えられます。

3. 税務調査

私は税理士登録もしていますが、顧問税理士として、つまり申告書を作成した税理士として税務調査に立ち会うことは無く、事務所全体でもほとんど無いと思います。

多くの相談は、税務調査がある程度進んで、どうやら調査官がここを狙っているようだというのが分かってきたタイミングで、その特定の論点についての対応を相談したい、というものです。

相談内容は様々ですが、最近私が担当したものとしては、例えば以下のものがありました。

  • 取引先への支払いが「寄附金」に該当するか

  • 子会社売却にともない譲渡損失を計上したことの当否

  • 源泉徴収漏れ(租税条約絡みの論点)

  • 外国子会社合算税制

対応方針も様々ですが、まずは調査官の見解、具体的には調査官が主張している「法令解釈の内容」と「事実認定の内容」の確認から始めることが多いです。
そもそも法令解釈の内容が曖昧だったり、その件を否認するためだけの場当たり的なものであることが珍しくないので、そこから攻めることが多いです。

4. 税務訴訟・審査請求

訴訟も審査請求も、課税処分を受けてしまった場合に、その処分の取消しを求めるための手続きです。裁判所に申し立てるのが訴訟で、国税庁の下部組織である国税不服審判所に申し立てるのが審査請求です。

相談の経緯としては、税務調査で課税処分が打たれそうだという段になってご相談を受けるケースが大半です。

内容としては、事実認定よりも法令解釈が争われているものがほとんどです。私の過去の担当事件でここに書いて問題ないものとしては、例えば以下があります。

  • ヤフー事件・IDCF事件
    組織再編の行為計算否認が争われた事件です。

  • サザビーリーグ創業者事件
    種類株式の時価が争われた事件です。

  • エー・ディー・ワークス事件
    消費税の仕入税額控除の用途区分が争われた事件です。

当然ながら勝つことがミッションで、そのために主張書面を作成することが主な対応事項となります。

5. 終わりに

以上が税務弁護士の仕事内容のご紹介となります。ご参考になれば幸いです。

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