ニューノーマルにおける「価値」の変化
コロナショックは世界を不可逆的に変化させた。
世界は変わった。社会は変わった。人類は新しいステージに立った。
ビジネスは、この変化のうねりに、どう向き合うべきなのか。
本稿は、アフターコロナ、ウィズコロナによって変化する「ニューノーマルにおける価値」について考察する。
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人類は「分業」と「交換」で繁栄した
人類が地球上で最も繁栄した理由。それは「分業」による「専門化」と「交換」をすることを覚えたから。
人が一人で家を建てるのと、木を切る人・加工する人・運ぶ人・設計する人・建てる人・装飾する人などが分業して家を建てるの。どちらが効率的でどちらが質が向上するかは火を見るより明らかだろう。
人間は「分業と交換」、そしてその方法に対する「アイデア」で自然の淘汰に打ち克つイノベーションをおこし、繁栄してきた。
だから人々は「city(都市)」や「polis(都市国家)」を形成した。分業と交換をより進めるために、密に集中し、閉鎖的であることを選んだのだ。
それは分業と交換にとってのバリュープロポジションが「Physical(物理的・身体的)」であったことにもよるだろう。
一極集中をより加速させることが、人類の繁栄にとって必要不可欠だったのだ。
人類を繁栄させた「一極集中」を捨て去るべき時
一方で一極集中にも弊害が出た。
一極に政治・経済・金融などが集中することで、ストロー現象が起こり、経済も人も歯止めが効かず、超一極集中していくことがわかった。
「地方創生」が叫ばれる昨今だが、それによって地方衰退も起こった。
また、リスクにも弱い。災害や戦争が起きた時に、その集中した拠点が破壊されれば、全てが崩壊してしまう。
コロナによって、それはさらに浮き彫りになった。
コロナによって急激に起こった不可逆的な時代の変化のこの瞬間。
密集・集積・閉鎖である「city」「polis」を捨てなければならない状況が明確に起こり始めた。
そして、過疎・開放の社会を築く必要がある。
人間が繁栄を築いた原点である「Physical」な価値に重きが置かれた時代には、それは不可能であった。
多数の死者を出しながら、それでも前を向いて生き抜くことしかできなかったのは、過去のパンデミックを振り返ってもわかるだろう。
アフターコロナ × アフターデジタルが人類をまた進化させる
しかし、現代は「アフターデジタル」でもある。
アフターコロナ × アフターデジタルは、バリュープロポジションが「Physical」から「Psychological」に変遷しているともいえる。
分業と交換に加えて、人間一人ひとりの個体の個性を活かす多元多様性が認められる新たな社会が築かれる。
より高度に「Digital」「Virtual」を活用することで、人類は新たなステージに進むことが出来る可能性がある。
必ずしも「モノ」が目の前にある必要はない「Physical」な価値が薄れた時代がアフターデジタルであった。
しかしまた同時に、アフターコロナはPhysicalな価値が今まで以上に高まるという時代が訪れることでもある。
密集・集積・閉鎖によって提供されてきたPhysicalな価値は、もちろんそのままでは提供できなくなる。
例えば、8席の小さい高級寿司屋はもう成り立たないのだ。しかし、客数を1組に限定すれば、圧倒的に高い価値を提供できる(つまり高単価な対価が受け取れる)ビジネスになり得るのだ。
未曾有の危機だからこそ未来を見据える
フィジカルな価値をデジタルで代替するのか。
デジタルによって新たなフィジカルな価値を創出するのか。
ウィズコロナの世界でのビジネスは、Physicalな価値が重要視された旧世代のビジネスが成立しなくなる可能性が多分にあるし、もうすでにその変遷は起こり始めている。
既存事業の延長線上にあるリノベーションは未曾有の危機に対応するために、短期には必要だ。
しかしまた、その先のウィズコロナにおける社会でのジョブストーリーに適したイノベーションも同時に取り組まないといけない。