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もう一人の斜槓人

前回、台湾の斜槓人"簡詩敏"を紹介しましたが、僕の知り合いの日本人にも斜槓人/Slashがいます。今度は彼のことを紹介します。

「台湾に根を下ろした日本人」

ニッポンドットコムというHPに、「台湾に根を下ろした日本人」というシリーズがあります。さまざまな職種で、台湾に暮らしここに生活の拠点をおいている日本人を取材している記事です。この文章の作者が馬場克樹さんでした。初めはこの記事で彼の名前を知りました。

例えば下の記事では、台湾で宇宙物理学者として活躍している松下先生を紹介しています。えっ?台湾でこんな仕事をしている人がいるんだと、新たな発見をする記事がたくさんありました。

八得利樂團

それで、馬場さんの名前を知ったのですが、今度は全く別のところで彼の名前を見かけました。
"圓酒"という居酒屋さんを友人がやっているのですが、そこに"八得力樂團"というバンドが出演してライブをしますという案内が出ました。このバンドは毎月のようにここでライブをしているようなのですが、よく見るとこのバンドは日本人ギタリスト/ヴォーカリストと台湾人キーボードのデュオで、この日本人が馬場さんでした。文筆家とミュージシャンで同一人物だろうかと調べたところ、どうも同じ人らしいと分かりました。
ニッポンドットコムの文章も気になっていたので、このライブを聴いて、どんな人か話をしてみたいと圓酒に行ってみました。

この八得力樂團というのは、Akaさんという"ながし"のキーボードと一緒に演奏して歌を歌うもので、エンターテインメント性の高いバンドです。馬場さんのオリジナル曲も少なからずあって、最初から最後までお客さんを飽きさせない、楽しいステージでした。

シンガーソングライターとしての馬場さん



この日の八得利樂團はトリオの演奏でした。


馬場さんはとても気さくな方で、僕が日本人客というのもあって色々な話を聞きました。そうしたところ、この音楽活動と文筆家としての仕事のほかにも、演劇もやっているというので驚きました。なんでも台湾の映画にも出演したことがあるそうです。

「約定之地」

しばらくして、ニッポンドットコムの記事をまとめて、中国語の書籍として出版社するというニュースが流れました。この記事は元々日本語と中国語翻訳版があったのですが、その中国語の方を改めて翻訳者を一人にして文体を統一しまとめた本になります。
元の記事は23人分のインタヴューがあったのですが、それに馬場さん自身のストーリーも加えて、「約定之地:24位在台灣扎根的日本人」というタイトルで出版されました。

この本は台湾で評判が高く、書店のノンフィクション部門では長い間Top 10入りしていました。このような視点で台湾にいる日本人を描いた本は珍しく、高い評価を得ています。

この本には馬場さんによるテーマ曲もあります。「約定之地」、このタイトルは台湾のことを約束の地であると歌っているわけですね。

斜槓人,馬場克樹

馬場さんも自分のことを中国語で斜槓人と言っています。一つの仕事に縛られず、自分のやりたいさまざまなことにチャレンジしている。彼の場合、それはミュージシャン/文筆家/俳優です。本の中で彼自身の経歴についても詳しく書いていますが、そもそも日本の外務省の外郭団体である、国際交流基金から交流協会に派遣されて日中の文化交流を担当していた公務員だったそうです。しかし、その職を投げ打ってでも自分の夢を実現したいと、このような多方面の活動をしているそうです。

彼と僕は全くの同じ世代。僕も日本の普通のサラリーマンから比べると、だいぶレールを外れた仕事をしていますが、馬場さんのこのチャレンジングな活動と比べると、全然大人しいものです。同じ台湾に、同い年でこんな活動をしている日本人がいると知っているだけで、自分もまだ頑張る余地があるのではないかと元気をもらえます。

僕は幸いにも建築士という仕事にとてもやりがいを感じていて、そこで充実した仕事をしています。しかしそれに加えて、台湾のジャズや建物を紹介する活動をしています。そのきっかけは、こういった台湾で活躍している斜槓人と知り合ったからです。仕事以外にもやりたい事をやっていいんだよと、背中を押してもらっています。

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