フクシマの穴

歪んだ福島の暗渠
フクシマの穴
自らに課した
贖罪を果たす
地獄を残さぬよう
朽ちていく記憶を
捏ねて
重ねて
削って
刻んで
貼って
剥がし
剥がして
貼るを
延々と繰り返す
魂の要素を
冷凍保存する呪文を
書いていく
それは葬送の儀礼でもあった
暗渠の外では
巨大な権力によって
計画された派手なイベントが続く
オリンピックやら
パンデミックやら
情報のウイルスによって
興奮と恐怖による
思考剥奪の中で
記憶は風化していった
巡礼者は
傷あとが消えないように
傷口に刃物を
刺し続ける
傷跡は敷島の形になり
ついには汚染水の中の
ボウフラの形に
なった
10年が過ぎ
巡礼者は
魔法陣に
祭壇を設け
最後の儀式を行う
復活のために
自らの血で
秘数の上書きを続ける
それは現代の「死者の書」
巡礼者は岬探しの旅に出かける
適切な岬を探し
そこから身を投げ
憑依された体ごと
冥府の王に差し出す


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