小説【幻影と原形】

目から覚める前から、
白くて透明で艶やかな冷たい肌、尖った顎、優れて運動神経、勝ち気で情に熱く、幸薄い感じの原形が、頭の中をチラチラする。いわゆる好みだ。

朝一届いた慶應の女の子は、名前がカリン、考古学を学んでいる。原形タイプだ。最近韓国で顎を整形して、ハレが引いたから、会おうという話になった。出版の初日、向こうから連絡してきたのだから、少し気があるのだろう。頭の良い子だから、話していて楽である。



子供の頃から、そうした印象の何人かの女性が、通過していき、名前さえも覚えていない女性も多いが、相思相愛なのに、僕が飽きてしまう。酷い話だ。

おそらくそれは、前世の記憶なんだと思う。あるいは大祖父くらいの。

歩いて湖にくると、黒鳥が目の前で毛繕いしている。その上を白鳥が飛んでいく。つまり、涙を湛えた目、そして眼球、こうしたことを啓示として見るか否か、それが信仰の原点であり、それは母親との関係によって育まれるらしい。僕には、世界を見渡す目、そして原形が泣いている
、そのダブルイメージ。

話を戻そう。つまり、言語以前の、愛されている感覚による立ち上がる自分、意識というやつであり、意識の立ち上がりが、他者との関係によって成り立っている以上、神を想定するのは、仕方のないことなのだ。それが、空でも、アニメの主人公でも、ショパンでもいい。信仰のスタートはそんなところにある。何を伝えたいのか?原形と母親、信仰、マリア、まあそんなところだ。5時40分。ベンチの後ろを通るランナーの息がうるさい。(つづく)


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