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アイドル史から見る消費社会、メディア史

 NHKの面白い番組に「世界サブカルチャー史」があります。
映画や音楽を社会情勢を交えつつ解説して、皮肉や比喩の裏にある本質を探る番組です。

欧米の歴史だけでなく、日本編もありました。
多くの海外の映画評論家や学者が解説しているのも興味深いです。宮台真司も出演していました。

その番組の新シーズンが始まりました。アイドル編です。それを踏まえてアイドル史、メディア史を振り返りつつ、付け足します。


若者の誕生、アイドルの誕生

 アイドルという言葉は、元々信仰のための偶像という意味を持っていました。

 しかし、段々と信仰に匹敵するくらいの人気を持ったスターのことをアイドルと呼ぶようになりました。その最初の例がフランク・シナトラです。

シナトラは当時出てきた新たなメディアであるラジオに歌を乗せて人気になりました。
大恐慌という苦しい時代の中で、歌によってアメリカ社会を勇気づけたのです。

これにより、シナトラはアイドル的な人気を得ます。典型的なアイドル像が生まれた時代です。

その後、エルヴィスプレスリーやマリリンモンローなどのアイドルが登場します。アイドルに熱狂したのはベビーブームの世代です。

 アメリカが豊かになったことで大学進学率も上がり、モラトリアムの時期を過ごす【若者】としての時間が生まれました。

その時間を楽しむために、アイドルに熱狂していたわけです。その延長線上にあるのが、初期のビートルズであり、ビーチボーイズです。

 
日本でも六十年代末以降には、若者の間での音楽やアイドルの消費が拡大します。
学生運動などの政治活動の挫折感から離れるために、消費に走ったというのもあります。70年代フォークソングに表れているような個人主義的になっていったのです。

シルヴィバルタンの登場、日本アイドルの誕生

 アメリカで定着してきたアイドル文化は、フランスにも送られました。そこで生まれた映画が「アイドルを探せ」です。

 映画でアイドルを演じるシルヴィバルタンの美しさや魅了に多くの人々が熱狂し、彼女は一躍本当にアイドルになりました。

 日本でも大きな支持を受けて人気になります。日本でアイドルという言葉が使われるようになったのはこのころからでしょう。

その後、南沙織など多くの女性ソロアイドルや、ピンク・レディーやキャンディーズなどのアイドルグループが日本で大人気になります。

80年代は、女性ソロアイドル戦国時代となります。
憧れの存在、唯一無二の存在という、まさに一神教的なアイドルの捉え方をする時代の頂点です。

親衛隊という熱狂的な浸かり方をするファンも現れます。

その後、おニャン子クラブの登場や小泉今日子の
"アイドルをメタフィクションとして捉える" ことが始まり、昭和の典型的なアイドル像は解体されていったように思います。 


消費社会はどこに向かうのか

 消費社会の行き先とはつまり、人々の需要はどこへ行くのかということです。

 アイドルは、恋愛感情とか時代性とか共感性とかに訴えかけてきて需要を広げようとしてきたわけです。

時には2次元にすることで、リアルから離れて偶像性を強めて人気を得る。
時には3次元のリアルに近づいて、身近な存在だと思わせたりして人気を得る、とか色々です。

 消費社会としては経済を回すために沢山消費した方がいいのでしょうが、健全な心のためには、消費マシーンになるのではなく、楽しむ時は盲目的に享楽し、飲み込まれて過ぎずに冷静に自我を持つのが大切です。

シナトラのこの曲は映画ジョーカーのエンディングでしたね。

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