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ハ行

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記事一覧

数と個体

バッタ、ミツバチ、アリ、ハエの数、大量生産方式のような数、彼らの闘いや本能的な行動は、主…

不幸の姿

彼女は彼に同情した。彼女は彼を信じない。彼が分からない。それでいながら彼の心を満たし補う…

人間の掟

驚き、感心しながらファルテンはエーギルを見た。 「おまえはトゥータインに弟子入りしたね」…

摂理の計算間違い

彼はわたしたちが滞在した数年間で、あるとき次のように言った。その言葉ゆえにわたしは彼を忘…

私には耐えられない

この男は言った。「もしも冬の闇が谷を満たし、霧のように垂れ込めた雲からも、荒んでいく思い…

原初の世界

その後数年間わたしたちと生活を共にすることになる土地の仲間たちは、徐々に姿を現していった…

死神

わたしはだれにも助けを求めなかったし、だれも助けを申し出なかった。一切が重要でなくなっていた。肉体はのろのろと動き出して、ただひとつの非倫理的・下等動物的な課題、すなわち痛みの壁に突破口を開き、逃げ口を探し、手足がいうことをきかない苦痛を緩和するという課題に献身するだけだった。なんとしてでもこの苦痛を緩和することだった。徐々にわたしは習慣を取り戻していった。それはもはや以前の習慣ではなかった。崩壊後の無意味な行為、死神の手に委ねられたあとの無意味な行為だった。――そしていま、

何枚かの紙片に目を通してみたが

最近の何日間かに埋めた何枚かの紙片に目を通してみたが、いつも同じ懸念を覚える。わたしの描…

たしかにわれわれは生まれながらにして

たしかにわれわれは生まれながらにして物事を正しく見る目をもっておる。しかし他方、われわれ…

もうここへ来るのはよそうとわたしは思った

もうここへ来るのはよそうとわたしは思った。だがこう決意したところで、翌日、なにも得るとこ…

故郷を失ったわたしにとって

わたしは格別これといった原因もなしにホームシックにかかった。しょっちゅう母のことを思い出…

わたしは絶えず滴り落ちる時間を

わたしは絶えず滴り落ちる時間を、時の流れをひとつにまとめて織物にしたい。時の流れはわたし…

一般大衆の従順さや諦め

一般大衆の従順さや諦めはどこに由来するのだろうか。わたしはその説明を自然を超えた領域に探…

可能性はいくらでもあるさ

「可能性はいくらでもあるさ。なにしろ神の摂理には限りがないからね」と彼は言った。「でも現実と完全に一致する可能性をひとつだけでも見つけ出すのは、ぼくらの力の及ぶことじゃない。ぼくらの外部のことはどうしようもない。その外観すら知らないんだから。遠い将来に遭遇することは推測できない。その舞台はどんなに鮮やかな夢とは違うんだ。ぼくらの時間は他の人たちとは違う。ぼくらには思い出すことや忘れることすら意のままにならない。精神の表面にどんなイメージが届くのかを決して知ることはないんだ。必