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「ディーラーは劇団四季を見習うべき~光る乳白色の車に乗っている私は甘酸っぱくてやさしいカルピス味の店舗が好き~」

★この記事が東芝テックCVC様の公式noteにて紹介されました。

 2023年8月24日、定期的に足を運んでいる神社の敷地内の砂利の上で、急ブレーキを踏む羽目になった。そこは入口と出口が分かれていて、本来は一方通行なのだが、それに気づかない車がたまに出口から入ってくることがある。出口から出ようとした矢先、対向車が来てしまったものだから、私は慌ててブレーキを踏んだ。踏んだ瞬間、「ギュイン」と妙な音が聞こえた気がした。「大丈夫かな」と思いつつも、一応ブレーキはかかるし、まぁいっかと思い、5分ほど車を走らせて帰宅した。
 
 翌25日、そこそこの距離を運転すると、ブレーキに違和感を覚えた。ブレーキが甘いというか、ペダルを踏む度に微かに異音も聞こえるし…。乗っている車は走行距離15万キロ超え、2008年10月に新車で購入した15年前の古い車のため、不安を感じ、念のためディーラーで見てもらうことにした。
 いつもは実家の近くの車を購入した行きつけのディーラーで見てもらっているものの、その時は仙台にいた。ダメ元で最寄りの泉中央店に電話してみると、その日(金曜日)と翌土曜日は予約でいっぱいですと案の定、断られた。たまたま大和町に用事があったので、「カローラ大和 宮城トヨタ自動車」にも電話で相談してみた。すると空きがあったらしく、その日のうちに見てくれるということになった。
 
 いつも田舎のディーラーにしか行ったことないし、仙台近郊のディーラーなんて、敷居が高いな…下回りはサビもひどくなってきたし、こんな古くてボロい車で恥ずかしいなと思いつつ、予約時間に訪ねると拍子抜けした。初対面のせいか、妙に丁重で親身になってもらえたから。
 入店するとまずは営業マンの方が、改めてブレーキの症状を真剣に尋ねてくれて、どんな時に音が鳴るのかとか、音の種類とか、細かく聞いてくれた。いつものディーラーなら、「異音ですか、じゃあまずは整備士に見せますね」程度で、そもそも営業マンの方がそんなに話してくれることはないから、少し驚いた。5分ほどで車の状態を説明すると、「じゃあ私、車を走らせてみて、音を確かめて来ますね。お飲み物はいかがですか?」とその方は席を立った。私は「飲み物は大丈夫です。よろしくお願いします。」と遠慮した。すると間髪入れずに別の営業マンの方が来て、「暑いので、一息いれませんか。うち喫茶店なので、何でも出せますよ。」とまた飲み物を勧めてくれた。そう言われると逆に断るのも申し訳ない気がして、メニュー表を見ながら「じゃあ…カルピスください。」とカルピスをお願いした。その方はすぐに飲み物を持ってきてくれて「今日はカルピスが大人気なんですよ。」と最後まで丁寧な接客をしてくれたおかげか、ひさしぶりのカルピスはいつも以上に美味に感じた。氷の入った冷たくておいしいカルピスをいただいているうちに、今度は整備士の方がやって来た。
 
 「ブレーキは特に異常はなかったのですが、異音を確かめたいので、少し運転してもらえませんか?私は助手席に乗って音を確認しますので…。」と運転をお願いされたから、また驚いた。古くなったせいか異音トラブルは多くて、地元のディーラーでも、走行中にずっと重低音でうなってるような音がするため見てもらったことがあった。けれどそこでは当然、運転を求められることはなく、音の確認も求められず、「リアアクスルハブの交換が必要ですね」とそこそこ高い部品を交換して、終了した。たしかにそれも劣化はしていたのだろうけど、気になっていた走行中の重低音のうなり声は直っていないので、原因違いだったのだろうと思っている。そして古くなったから音は仕方ないとその音は諦めることにした。というようなこともあったので、丁寧な仕事ぶりには余計に驚いた。
 
 運転し始めるとすぐに「この音です」と私が音を伝えると、「あーこの音ですね。分かりました。」とすぐに理解してもらえて、「じゃあもう一度、見てみますので、お待ちください。」とまた店内で待つことになった。
 その時、カルピスが下げられていないことにほっとした。中身はもうないけれど、地元のディーラーだと客が席を立って帰ったらすぐにテーブルをアルコール消毒することが多く、とっくに片づけられているかもしれないと思っていたから。元の席で溶けた氷のカップと一緒にまた少し待っていると、さっきの整備士の方が来て、「やっぱりブレーキ自体には問題ないんですが、少し油をさしたりしてみたので、また運転して確認してもらえますか」と再度、運転を求められた。
 
 運転し始めてすぐにさっきまでとはペダルの感覚が違うことに気づいた。ふわふわしてなくて重いし、ちゃんとブレーキがきいてる感じがしたし、妙な音もなくなっていた。「全然違いますね。もう大丈夫そうです。ありがとうございます。」と確認を終えた後、会計をお願いしようとすると、「今回は油をさした程度なので、料金は要りません。お忘れ物がなければ、店内に戻らなくて大丈夫ですよ。また何かありましたら、いつでもお越しください。」と整備士の方に丁寧に頭を下げられ、見送られた。
 時間にすれば1時間はかかったし、すごくきめ細かいサービスだったから、いくらかでも支払いたい気持ちだった。いつものディーラーはお互いに慣れもあるのかもしれないけど、頭を下げて見送ってもらうことなんてないし、事務的というか淡々としていて短時間でおしまいというパターンが多いので、いつもと違いすぎて感動してしまった。10月に車検が迫っているので、大和店にお願いしたいくらい。そうすれば今度はちゃんと料金も支払えるし…。でもそうするといつもの店舗に行きづらくなるかなと少しまだ迷っている。
 
 都市部のディーラーは地方より競争率が激しいだろうし、だから丁寧なのかもしれない。というかディーラーって普通はこれくらい丁寧なイメージもある。新車を購入しなくても、頭を下げて見送るとか、当たり前なのかもしれない。待遇があまり良くない店舗に慣れてしまっていただけなのだろうか。
 後からグーグルマップでそれぞれの店舗の評価を比べてみたけれど、私が感動した店舗の評価が抜群に良いわけでもなかった。むしろいつもの店舗の評価の方がやや高かった。ということはあの素晴らしいサービス態度は他のお客さんからすれば、やっぱり当たり前なのかもしれない…。でも大和にはトヨタ自動車の工場もあるし、すぐ近くの大衡にはトヨタ自動車東日本本社・大衡工場もあるから、他よりディーラーのスタッフも優秀なのかな…。



《甘酸っぱい でもしょっぱい でもなんか悪くは…ない!
全力で走れ 全力で走れ 36度5分の体温》

(運転中、最近のお気に入りBGM・フジファブリック「Sugar!!」)

 劇団四季の舞台はどこの公演を見ても安定的に同じレベルで、何度訪れても感動できるらしい。役者は台本に忠実で一文字でも変えてはいけないルールがあるらしいから。もちろん動きや角度も変えてはいけないと。役者に限らず、照明など裏方にも台本があって、つまり誰がやっても同じクオリティになるように計算されているそうだ。役者にしろ裏方にしろ、急に代役を立てても、台本に従って、同じレベルで少しも勝手に変えることなくできるように訓練されているから、地方であってもどの公演であっても、お客さんは安心できるし、満足できるらしい。
 
 トヨタ自動車に限らず、ディーラーは劇団四季を見習ってほしい。地方だからって手を抜いてほしくないし、都市部の店舗ばかり優秀でも困る。劇団四季で例えるなら、営業マンが役者で、整備士は裏方。別に一字一句変えずに、台本通りにしてほしいわけではないけれど、私みたいに明らかにお金持ってなさそうで、ボロい車に乗っていて、新車なんて買いそうにない客にも、富裕層の客と同じような扱いをできるディーラーこそ、一流と言えるのではないだろうか。どの店舗にどんな客が行っても、同じレベルのサービスを受けられるのが理想
 私は「カローラ大和 宮城トヨタ自動車」にたまたま足を運んだおかげで、あの時のカルピスのおいしさが忘れられなくて、またしょっちゅう飲むようになったし、古いけどこの車をもっと大事にしようと、洗車にも行った。甘酸っぱいカルピスを飲む度に、あの日の感動を思い出す…。まるでそのディーラーに恋してる気分だ。カルピスの主成分は果糖ぶとう糖や乳酸菌…。カルピスが身体に良いように、カルピス味の店舗は心に染み入った。
 
 自分の車をボロい車とディスっているわけではなく、元々私はこの車に愛着があって、旧型(初代)パッソの丸いフォルムや車高がとても気に入っている。車内も使い勝手が良いし。そして色がただの白色ではなく、パールホワイト(乳白色のカルピス色にラメが入ってる感じの色)のおかげで光沢感があって、ちょっと上品に見えるのも気に入っている。お金がなくて新しい車に手が届かないという理由だけでなく、この車が好きだから、長く愛用しているし、できれば今年も車検を取りたい。新型パッソはデザインがあまり好きじゃなかったし、そもそもパッソの生産が今年で終了。いずれ次に購入するなら、旧型パッソの中古になるかもしれない。それくらい旧型パッソが気に入っている。そのお気に入りのくたびれた愛車を真剣に丁寧に見てもらえたから、「カローラ大和 宮城トヨタ自動車」が私の最近行ってよかった店です。
 
 ディーラーで感動したのは初めての体験かもしれない。あまり馴染みのない土地で車に異変が起きるのもたまになら良いかもしれない。いつもと違う店舗で新たな発見や驚き、感動ができるから…。支払いがなかった分、営業マンの方も整備士の方も名前さえ聞かず仕舞いだったけれど、またその人たちにこの車を見てもらいたいと思った。
 劇団四季のように、トヨタ自動車はカローラ大和のスタッフの真摯な言葉、親切な接客態度や丁寧な働きぶりをマニュアル化して、全国のトヨタ店舗へ台本として配ったらどうだろうか。お手本になる接客プロ集団のディーラーだと思う。

2023年7月、洗車したての愛車。

★後日談はこちら ↓

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