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新しい食生活のルール

インターネット、テレビ、書籍を問わず健康的な食生活に関する情報が溢れかえっている今、ルールを決めるのは大変だ! と思っていました。腸内フローラやらオメガ3やら取り上げたいものはたくさんあるし、どうまとめたらいいのかずいぶん長く考えていましたが……。

たどり着いた、食に関するルールはたった一つだけ! 早速ご紹介します。

エビデンスの国スウェーデンで一番売れた健康と食の本

2018年、スウェーデンで一番売れた健康と食に関する本は『Hälsorevolution(仮訳・健康革命)』。

30年以上にわたりテレビなどで科学ジャーナリストとして活躍してきたマリア・ボレリウスが自らの健康危機に陥った経験から、よりよく生きる方法を探す旅を読者も一緒に巡るという構成のこの本は、今年に入り続編『BLISS』も出版されるほどの大ベストセラーとなりました。

この夏、英語版がイギリスで販売開始された直後には、アマゾンUKのベストセラーリストにも早速ランクイン。アメリカ、イタリア、ノルウェーでの出版も既に決定しています。

この本は健康的な暮らしを作る食だけではなく、運動や「毎日、感動すること」など生活全体を通した変革を取り扱っていますが、その中心を貫くのが「慢性炎症」という体の現象の捉え方です。そして、慢性炎症を抑える、また引き起こさないための抗炎症食のとり方について詳しく書かれています。

(マリア・ボレリウス、58歳。昔より全然若い! Photo/Robin Gautier)

よい方法はわかった。実行する困難を乗り越えるには?

『健康革命(仮訳)』と『BLISS』の二冊の本では、マリア・ボレリウスが世界最先端の研究で注目を集める医者や科学者を訪れ、エビデンスのある研究結果や現在はまだ大規模実験が行われていないため仮説でしかないものも含め、重要なポイントをまとめていく流れになっています。

表面には現れない慢性炎症であっても、炎症の程度は炎症マーカー検査で調べることができるので、その数値を改善する食べ物を積極的に取りいれ、悪化させる食べ物を避ける。食に関しての基本はシンプルです。

スウェーデンでは、去年出たこのマリア・ボレリウスの本だけではなく、2016年には『Food Pharmacy』というタイトルの、同じく慢性炎症とそれを抑える食事を扱ったとってもおしゃれな本が今もベストセラーになっており、この両方の本で薦められている食事は(共に最新の学説をベースにしているので)基本的に同じです。

(右からマリア・ボレリウスの今年の新刊『BLISS』、『FOOD PHARMACYのレシピ本』『FOOD PHARMACY』。左端も昨年出版された腸内フローラとその脳への影響を解説した『KIMCHI OCH KOMBUCHA(キムチとコンブチャ)』)

『Food Pharmacy』が、おしゃれで軽快な語り口で、いかに魅力的で作りやすくおいしいレシピを子育て世代に紹介することにフォーカスが当てられているとすれば、マリア・ボレリウスの本では、いかにその食事を実現していくかの方法に焦点があてられているように思います。

マリアいわく、「出張で、朝食用のタンパク質パウダーを機内持ち込みする場合は麻薬との疑いを掛けられることもあるので、パッケージから成分表示部分を切り取って持ち歩きましょう。またハンドミキサーは金属探知機で引っかかるので、凶器と疑われることも覚悟しておきましょう」。この記述、思わず笑ってしまいますよね。

しかし、健康的な食生活を始めようと思った人の事態は深刻で、この他にも買い物はどうするか? 家族の食事と自分の食事を別々に準備するのか? 休暇中やパーティーにお呼ばれの時はどうするか? などなど、つまづきそうなポイントは多い。それをどう乗り越えるかが、彼女や同好の士の経験からこれまでの失敗談も含め詳しく書かれています。

たった一つのルール「時間エンゲル係数を高くする」

抗炎症のための食事は、基本的に新鮮な野菜や魚などの食材を自分で調達して食べることになります。朝食はアーモンドミルクにチアシードをいれたチアプディングなど簡単なものも多いですが、問題は家を離れて食事をする時にどうするか?

この記事を読んでくれているみなさんも普段は会社で働いている人がほとんどではないかと思いますが、例えば毎日のランチをどうするか?

安くて便利なコンビニ弁当は、慢性炎症の原因となる糖質や添加物も多く、また肉が入っていればそこで使われている抗生物質など、体の中で炎症を起こさないために避けたいものがたくさん入っているかもしれません。レストランも信頼できるところで食べないと、食材としてなにが使われているかわからない。スーパーやコンビニと違って表記もないので安心できません。

となると、ランチに何を食べるかも計画して準備することが必要で、手軽だからという理由で決めることができなくなります。朝食はまだ自分でコントロールできることが多いとしても、疲れていたら夕食もお惣菜やレンジで温めてすぐ食べるものを買ってしまうことにもなりかねません。ファーストフードやお手軽で便利なものは、とりあえず避けたい。

結局、自分で食べるものを自分で準備するには、その計画と実行に時間がかかることを覚悟しないと抗炎症食は実現できません。

私も本の内容を取り入れ始めた当初は、なんだかずっと食材の調達と食事の準備にばかり時間がかかるなぁ、という印象しかありませんでしたが、逆にいうと「食事の計画と準備にしっかり時間をかける」こと、いわば「食事にかける時間のエンゲル係数を上げる」ことができれば、おそらく大概のことはクリアできそうに思えてきました。

ということで、新しい食のルールは「時間エンゲル係数を高くする」です

幸い前回決めたデジタル生活のルールで、スマホやSNSに費やす時間がぐーんと減っているので、時間エンゲル係数はもっと上げて大丈夫そうです!

別の機会に、上で取り上げた本の「慢性炎症を抑える食事」についてまとめる予定です。お楽しみに!


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