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樹
2021年10月20日 00:45
姉と僕は、幼い頃に両親が離婚してから、ずっと離れ離れで暮らしていた。僕は父に、姉は母に引き取られていた。父の葬儀の日に、ひさしぶりに顔を合わせた時には、別々に暮らすようになって、もう10年近く経っていたせいか、幼い頃のおもかげなんて、微塵も感じなかったし、血のつなががあるとはいえ、急に顔を合わせたばかりのこの成長した姉が、自分の姉なのだということに違和感しか感じなかった。誰かに口にしたこ
2021年10月17日 10:29
その後、しばらくすると講義と合わせて指導係となった先輩について、対象者の動向を監視する研修が始まった。この対象者とは、月の記憶を持つとされる月人と言われる人々のことを指している。指導係の先輩は、現役で対象者の監視を行っている職員があたり、監視役としての実習を行うのだと説明された。まるで探偵のような仕事だなと思った……。そんな仕事を満月が近づくたびに繰り返していた日々の中、対象者たちが
2021年10月11日 11:29
研修期間は、3年ほどだった。最初は、大学のような研修機関に通って講義を受けた。講義と言っても、普通の常識では理解しがたい内容ばかりで、それが3年にも及ぶのだから、研修期間で辞めていく同僚も1人や2人では無かった。「これ、ちょっとヤバくない? 」「あれマジで言ってんの?」「イカれてるよ!」「やってられない!」それなりの倍率で入った機関のはずなのに、優秀な彼らは、そう言い残して、次々と