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マガジン一覧 ■140字小説 ■sora ■MoonSick https://note.com/hirolab3/m/m80f1077f2263

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  • 140字小説

    Twitterに投稿した140字小説まとめ

  • Moon Sick

    月の不思議に取り憑かれている…。

  • sora

    空の雲を眺めがち…

最近の記事

まじない

なんか言った? えっ?今さ、なんか言ったよね?あぁ!こんな時、地元では、厄除けの呪いを呟くんですよ。呪い?はい。因みに今なんて言ったの?古い方言なんで正確な言葉の意味とかは解らないんですよ。解らなくても効くんだ?ええ…とてもよく効くんですよ。後輩は、そう言って俺に向かって微笑んだ。

    • 最後のふたりは…

      最後の審判に2人で望んだ この星が完全に 滅んでしまう前に選ばれる アダムとイブ候補の中で 最後まで生き残ったのは 意外にも僕たち2人だった いまだ荒野に光は全く見えない これからどうする? 不安そうに尋ねる僕を見て 繋いでくれた手から 温もりが伝わってきた

      • まぼろし

        宇宙旅行が大流行していた 何万光年も離れた星から 高性能天体望遠鏡で見ると はるか昔の地球の映像を 覗けるという触れ込みに 何万光年という距離と時間 永遠の命を手に入れて 光の反射を覗くことでしか 見ることの叶わなくなった 母星の記憶を手繰り寄せ そこでしか会えない人に 会いに行くのだ

        • ピグマリオン

          その像は、父が、若かった時の母をモデルにして作った作品だった。まだ幼かった頃、僕が母を恋しがるたびに、父は、この彫刻を見せて、「これが母さんだよ」と慰めてくれた。「心を持たないものに、そんな風に話しかけちゃいけないよ」今更、そんな風に言われても、僕には違いがよくわからなかった。

        まじない

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        • 140字小説
          53本
        • Moon Sick
          24本
        • sora
          8本

        記事

          一房の果実

          オレンジの匂いが辺りに漂った。裏山に実る果実は、冬籠りの野鳥の為に残しておくようにとあれ程言っていたのに…。街へと続く道は寸断され物資ももう届かない。起き上がることさえ叶わなくなった僕の命を、この世に繋ぎ止めようとする妻は、固く結ばれていた口に傷だらけの指先で一房の果実を含ませた。

          一房の果実

          ひと休み

          あの頃 キツイなと思うことが 重なるたびに 物語に浸るクセがあった 映画でも ドラマでも 小説でも 演劇でも そうして 自分ではない 登場人物たちの 気持ちに浸ることで 自分のリアルで味わう キツイ気持ちを 一時だけ休憩できた 物語は私にとって 人生の一休みだったのだ

          ひと休み

          Moon sick Ep. 24

          あの日のことは今でも鮮明に思い出せる。 僕が、この長いMoon sick に関わることになった始まりは、あの日からと言ってもいいくらいだからだ。   それは、まるで例えるなら、すぐそこにあったのに、ずっと閉まっていたせいで、壁だと思っていた場所が、実は扉だったことに気付いたような衝撃だった。 僕が知らなかっただけで、実は、壁一つ隔てられた向こう側で、ずっと繰り広げられていた世界があったことを知ったのだった。たぶん、この扉の向こう側の存在を知らないまま生涯を終える人も少なくな

          Moon sick Ep. 24

          Moon sick Ep.23

          次に気がついた時、姉の部屋のドアは開け放たれていて、姉の姿はどこにも無かった。 あわてて飛び起きて、家中を探し回ったが、姉はいなかった。まさかと思い、玄関に走っていくと、玄関先は開け放たれてあった。 庭に咲く白い花が、明るい暗闇の中で、不自然に開いていているのを目にした瞬間、ゾクリとした。「満月ね」と言っていた母の言葉を思い出したのだ。 全然気が付かなかった。 いつのまに、姉は外に出ていったんだ。 自分にしてもそうだ。ドアにもたれかかっていたはずなのに、いつのまにか床に転

          Moon sick Ep.23

          手をつなぐ

          「今日はずっと手を繋ごうと思ってたんだ」って言って、私の指にそっと触れてくるから、思わず手を引っ込めた。「ねぇそういう風に言っちゃうのずるくない?」「ずるいの?じゃあなんて言えばいい?」そんな初デートから数十年。今では2人、どちらからともなく手を結び、並んで散歩するのが日課である。

          手をつなぐ

          Moon sick Ep.22

          結論から言えば、姉に薬を飲ませることは叶わなかった。 その日、僕が部活から帰宅した時、もう姉は自室いた。台所には姉が用意したであろう夕食が置いてあった。 姉の部屋のドアを叩いて声を掛けてみたが返事がない。そっとドアを開けると、姉はもうベットに横になっていた。 「姉さん?」 返事はない。 「具合悪いの?」 これも返事はなかった。 眠っているのだろうか? それにしても、眠るにしては早すぎないか? やはり体調が悪いのだろうか? 「入るよ」 姉の眠るベットに近付くと、スース

          Moon sick Ep.22

          ランドセル

          実家の机の奥から キーホルダーが出てきた 卒業式の思い出に このランドセルを キーホルダーにして 残しておこう これは君が6年間 頑張った証だからね 母がそう言い出して 作ったのだった 優しい思い出は 1人になってしまった こんな時にこそ 生きてくる……

          ランドセル

          Moon sick Ep.21

          一緒に暮らすようになってわかったことだか、僕らの母親は、会社で管理職についているらしく、出張で家を開けることや、深夜に帰宅することが多い人だった。 その日も、急な休日出勤をしなければならなくなったとかで、バタバタと出掛けるのを、玄関先で見送ろうとしていた時、ドアを開け放ったところで、急に振り返ってきた母親が、その場に、そぐわない言葉を口にした。 「そういえば、今日は満月だったわね」 「そうなの?」  あまり、月の満ち欠けには興味はなかった僕は、それがどうかした?というニュ

          Moon sick Ep.21

          クリーニング屋 その2

          今や、体が不自由になると、機械の身体のパーツをスペアで代用できる時代になった。 心も同様に、辛い記憶は、クリーニング屋に行けばきれいに消し去ることができるようになった。 人々は、死ぬほど悩むこともなく過ごせることで自殺者は減り、この国の人口は右肩上がりに増加しつつあった。 今日も行きつけのクリーニング屋出たところで気がついた。 自分には知り合いが1人もいないのだ。 今の今までどうして気づかなかったのかと、スマホの履歴を開くと、1件だけ通話履歴が残っていた。だがこの人と話

          クリーニング屋 その2

          祭りのあと

          「祭りが終わって、もし誰かに呼び止められても、決して振り返ってはいけないよ」祖母に、そう言って送り出された。やがて花火も終わり、友人とも別れ、もう帰ろうとした時に名前を呼ばれた。懐かしい父と母の声だった。祖母の言葉の意味をこの時ようやく理解した。たぶん振り返ったらもう戻れなくなる

          祭りのあと

          クリーニング屋 その1

          名前を呼ばれて目を覚ますと、 頰が濡れているのに気がついた。どうやら泣きながら眠っていたようだった。「今回は、いつもより随分と時間が掛かってしまいましたが、きれいに消えているはずですよ」そう言われて、今いる場所が、不必要な記憶を消してくれると評判のクリーニング屋なのだと気付いた。

          クリーニング屋 その1

          「田舎料理なんで、都会の人のお口に合うかどうかはわからんけど!」そう言って勧められたお椀の縁からは、何やら昆虫の足のようなものが飛び出している。料理人は笑顔で「ちょうど今が旬で美味しいんですよ」と勧めてくる。念願だったテレビの食レポレポーター第1回目で、もう退職を考え始めていた