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摂食・嚥下チーム アシスタントレポートVol.1「呼吸と嚥下」〜腹圧の評価と治療①〜

ごあいさつ


 本日は摂食嚥下チームアシスタントレポートをご覧いただき誠にありがとうございます。
 摂食嚥下チームでは摂食嚥下障害で困っている患者様の治療を目的にした実技練習を継続的に行っております。

はじめに

 今回は「呼吸と嚥下」を腹圧の観点から評価・治療をどのような流れでしているのかをお伝えしていきたいと思います。


実際の腹圧評価・治療を学びたい方はこちら↓

note セミナー見出し-3


 人は呼吸を行い、体内に酸素を取り込み全身かつ臓器等に血液を送る必要があります。酸素は体内で生成する事ができないため、空気中から呼吸によって体内に取り込まなければなりません。


 嚥下において呼吸は重要な要素であり、嚥下時に呼吸は一時停止し、嚥下後は呼気を行うというリズムがあります。また、人は誤嚥しますが、誤嚥物を咳嗽にて予防できれば誤嚥性肺炎には至りません。そのため摂食嚥下を考える際、咳嗽力を高めることが重要です。そこで必要な誤嚥防止機構について説明していきます。

誤嚥防止機構1


次に誤嚥防止機構が働くために必要な胸椎や肋骨の運動学について考えていきましょう。

吸息・呼息時の胸椎と肋骨の運動学について
 吸息時:胸椎は伸展・肋骨は後方回旋します。
 呼息時:胸椎は屈曲・肋骨は前方回旋します。

吸息・呼息の胸椎と肋骨の運動学

 誤嚥防止機構や胸椎や肋骨の運動学が理解頂けたでしょうか?
 では今回のテーマである『腹圧』について考えていきましょう。


腹圧(腹腔内圧)とは?

 人間のお腹の中にある腹腔と呼ばれる内臓が収まる空間内の圧力のことを指します。
圧力が高まる状態では横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群らが働きます。風船をイメージして頂けると分かりやすいと思います。これらの筋はインナーマッスルとも呼ばれます。

腹圧


腹圧に大きく関与する筋を下記に載せているので参考にしてみて下さい。また実際に起始〜停止がどのあたりに付着してるかを把握し、それぞれの筋の張り(筋緊張)を視診・触診することで「腹圧が高まったか?」「どこから抜けているのか?」を評価しやすくなります。

咳嗽力が高まらない一要因としてベースとなる腹圧が低い方が多いため、ぜひ健常者や患者様でそれぞれの腹圧を評価をしてみてください。


下部肋骨と体幹筋の解剖について

下部胸椎と体幹筋の解剖


内腹斜筋・外腹斜筋はインナーマッスルではありませんが、胸郭の動きを誘導したり、インナーマッスルを働かせるために大切な筋になります。

 ここからは実技の流れについてです。座位で腹圧を高めにくい方、座位が安定しない方は側臥位(寝返り動作)を用いる事が多いです。


実技・方法


座位での腹圧評価

座位での腹圧評価

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【触診〜誘導方法】

 骨盤を前傾に誘導し脊柱伸展が保持できるか評価(前傾へ持っていきすぎると、腰椎が伸展や頸部伸展してしまうので、全体を診ることや手から反応を感じとることが大切です)


内腹斜筋へのアプローチ:保持が可能な場所で更に上前腸骨棘から2横指内側、2横指下方から下腹部を上方へ母指で誘導しましょう(このとき母指のみでは誘導できない為、手掌全体で触れることが大切です)
腹圧が抜けるところに介入して筋の感度を上げることで筋が活動しやすくする。

風船を用いた腹圧説明

 体幹前面筋のみでは重心位置が変化しない、腹圧が高まらない方は背面(多裂筋)の評価が必要です。

多裂筋の評価

多裂筋の触診

ヤコビー線

多裂筋説明

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上記の咳嗽機能向上の為の『腹圧』評価・治療アプローチを一緒に学びたい方↓

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寝返りを使用した腹圧の高め方も今後投稿していきます!

おわりに

 今回は「呼吸と嚥下」を腹圧の観点から評価をどういう流れでしているのかをお伝えしていきました。臨床では「呼吸と嚥下」も大切ですが「姿勢と嚥下」についても必須です。一人でも多くの患者様に安全で美味しく食事摂取ができるようになることを目標にこのnoteを活かして頂けると幸いです。

次回もお楽しみに‼︎

今後も摂食嚥下障害で苦しむ方をサポートする為に! 皆さんの臨床で役立つ摂食嚥下の情報を発信していきますので、宜しくお願いします!