大澤裕一

千葉県市川市出身/つくし幼稚園→平田小→市川中・高→東大(理1・理学部数学科)・東大大…

大澤裕一

千葉県市川市出身/つくし幼稚園→平田小→市川中・高→東大(理1・理学部数学科)・東大大学院(数理)→SEG・エデュカ/「大学への数学」ほかに連載/数学の魅力・学びの楽しさを伝える/数検1級・統計検定1級合格/趣味はマラソン/19,21東京完走ほか/いつか市川に戻りたい/

最近の記事

ケンブリッヂの入試 口頭試問問題サンプルの1問

数学セミナー 2017年4月号「試験のゆめ・数理のうつつ」(時枝 正 先生)の第1回「ケンブリッヂの入試」より抜粋しました。理系の大学受験生の皆さんは、ぜひ考えてみてください。 (定積分の数値評価に関する問題は、大学入試でもしばしば出題されます) 解答は以下のツイートの下にあります。 実は、はじめは以下のツイートのような解答を用意したのですが、数学するひよこさん(@mathmathpiyopi1)に$${B}$$の下からの評価の良いアイデアを教えていただきました(上の解答は

    • 2024名大理系前期大問4(2)を一発で解く

      数理統計学における、比較的有名な事実(二項分布とベータ分布の関係)に関する証明問題です。ぜひ考えてみてください。解答は、この下の原題の画像の下に載せます。 普通の証明は、 「右辺の定積分を部分積分の反復で計算し、$${f(k)}$$に一致することを示す」 だと思います(あるいは、この方法と実質的に同等だが、部分積分+数学的帰納法で示す)。 さて、この等式を「一発」で示すこともできます。一様分布と順序統計量を用います。 キレイに示せましたね! 数理統計学を学ぶと、大学受

      • 期待値の問題(2024共通テスト)

        上記は、2024年の大学入学共通テストの数学2・数学B本試験の第3問(統計的な推測)の中で扱われていた問題の表現を変更したものです。ただし、この問題そのものが直接問われたわけではありません(詳細は問題文をご確認ください)。面白い問題だと思うので、ぜひ取り組んでみてください。特に、2022年度から施行された学習指導要領(期待値の必修度合いが前課程よりも高まった)で高校数学を学ぶ高校生には、ぜひ考えてもらいたい1問です。略解は以下です。 「和の期待値=期待値の和」を用いています

        • ウォリス積分をベータ関数とガンマ関数を利用して求める。

          ウォリス積分    $${\displaystyle I_n=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin ^n x~dx~\Big(= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos ^n \theta~d\theta \Big)~(n=0,1,2,\cdots)}$$ の一般項は普通、$${I_n}$$の漸化式を立式して再帰的に計算して求めますね。ここでは、$${I_n}$$の一般項をベータ関数とガンマ関数を利用して求めてみます。(式変形の説明は

        ケンブリッヂの入試 口頭試問問題サンプルの1問

          統計検定1級を受験しました。(2回目)

          このnoteでは、私が受験した統計検定1級(2023/11/19(日))について、受験勉強、試験の出来、合否発表などを冗長に記述します。統計検定1級に興味のある方、受験予定の方で、時間のある方はぜひお読みください。 統計検定1級の概要は次の通りです。 1.2023年11月の試験まで 2022年11月に統計検定1級を初めて受験しました。このときの詳細については、以下をお読みください。 2022年11月の統計検定1級で統計数理・統計応用の両方で合格(統計数理はS合格)を頂

          統計検定1級を受験しました。(2回目)

          数理統計学のゼミ(第2弾)を行います(2024/01/12-2024/05/24)【日程を延長します】

          「むぐむぐ勉強会」(むぐれしあさん(@Mgreshia4)が主催されるDiscordサーバー上でのオンライン勉強会)にて数理統計学のゼミ(第2弾)を行います。概要は次の通りです。 (1) 教科書: 「データ解析のための数理統計入門」(久保川達也、共立出版)  ※参考書として以下を挙げておきます。なお、2023/03/03-2023/11/17にこちらの書籍の第2~9章(+α)をゼミで扱いました。 (2) 主な対象:  (a) 数理統計学の基本を学びたい方  (b) 数理

          数理統計学のゼミ(第2弾)を行います(2024/01/12-2024/05/24)【日程を延長します】

          exp(x)/x^α→∞(x→∞) のとても簡潔な証明

          基本極限である$${\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{e^x}{x^\alpha}=\infty}$$($${\alpha}$$は正の定数)の証明については、様々な方法が知られています。今回は、とても簡潔な方法を紹介します。私が知る方法の中で最も簡単な方法です。「増加で下に凸な関数は$${x \to \infty}$$で正の無限大に発散する」(直観的には当たり前で証明も容易)を用います。 $${\displaystyle \fr

          exp(x)/x^α→∞(x→∞) のとても簡潔な証明

          「極小値の個数が1個」とは!?

          数II微分(多項式関数の微分)が既習の方向けの問題です。考えてみてください!少しイジワルな問題ですが…。以下のtwitterの投稿の下に略解を載せます。 [略解] あり得る場合は、以下のいずれか。  (ア) $${f(x)}$$の極小値を与える$${x}$$が$${1}$$つ($${a=0,1}$$)  (イ) $${f(x)}$$の極小値を与える$${x}$$が$${2}$$つで、これらが同じ極小値を与える($${\displaystyle a=-1,\frac{1}{2

          「極小値の個数が1個」とは!?

          「難しい」定積分の問題

          原題は東工大の編入試験あるいは院試の問題のようです(原題には$${|a| \neq 1}$$という仮定はありませんでした)。ツワモノはぜひ考えてみてください。高校数学の範囲で解けます。略解は次の通りです。 区分求積法と複素数(1の累乗根)を利用するところが面白いですね。 ■$${|a|=1}$$のときは、この積分は広義積分になります。この場合を除外するために、仮定に$${|a| \neq 1}$$を追加したのでした。

          「難しい」定積分の問題

          tan(89.99…9°)の値

          大学生のときの基礎実験の時間中、実験をさぼって電卓で遊んでいたら、以下の事実を発見しました(「実験、さぼるなよ!」というツッコミが来そうです。すみません…)。 何と、$${89.99\cdots9^{\circ}}$$の末尾に$${9}$$を1つ追加すると、$${\tan}$$の値が約10倍になるのです!しかも、はじめの$${\tan 89^{\circ}}$$の値は$${\displaystyle \frac{180}{\pi}}$$の値とほぼ一致しています。ちょっと感動

          tan(89.99…9°)の値

          スコア関数を用いた期待値の計算

          幾何分布の期待値を「スコア関数(logP(X=x)をパラメータで微分したもの)の期待値=0」を利用して求めました。無限和を計算することなく、簡単に求まります。 他の指数型分布族(二項分布、ポアソン分布、正規分布、ガンマ分布など)でも同様の計算ができます。ぜひやってみてください! 参考までに、コメントを下さった黒木玄先生(@genkuroki)の引用ツイートも掲載します。

          スコア関数を用いた期待値の計算

          a,bが互いに素⇒a+b,abが互いに素 の証明

             「互いに素な整数$${a,b}$$に対し、$${a+b,ab}$$も互いに素」 の一風変わった証明を紹介します。これについては、素数の性質(整数$${a,b}$$と素数$${p}$$に対し、$${ab}$$が$${p}$$で割り切れるならば、$${a,b}$$の少なくとも一方は$${p}$$の倍数)を用いる方法が有名ですが、今回はこの性質を用いません。 整数論における基本定理「整数$${A,B}$$に対し、$${A,B}$$が互いに素$${\Leftrightarro

          a,bが互いに素⇒a+b,abが互いに素 の証明

          大澤の「朝日新聞 明日へのLesson」の寄稿について

          大澤がこれまで「朝日新聞 明日へのLesson」に寄稿したものについて列挙します(新しいものから順に載せています)。宜しければ、ぜひお読みください。(有料記事ばかりですが…)

          大澤の「朝日新聞 明日へのLesson」の寄稿について

          大澤の「大学への数学(東京出版)」の寄稿について

          大澤がこれまで「大学への数学(東京出版)」に寄稿したもの(ツイッターへの投稿)を列挙します(新しいものから順に載せています)。宜しければ、ぜひお読みください。なお、2023年度は6,8,10,12,2月号に図形に関する連載をします。 2021年10月号では、「区分求積の和と定積分の誤差」に関して書きました(「大学への数学」の執筆デビュー)。近年の大学入試において、この話題がよく出題されています。後半では、この話が成り立たない例(高木関数)について書きました。 ■あと、執筆

          大澤の「大学への数学(東京出版)」の寄稿について

          有名な積分公式の「確率を用いた」証明、および「ある和」の求め方への応用

          有名な積分公式の「確率(順序統計量)を用いた」証明です。((1)) 上の考え方を「数列の和」に持ち込むことで、 $${\displaystyle S(p,q)=\sum_{k=1}^{n} k(k+1)(k+2)\cdots(k+p-1)\cdot(n+1-1)(n+2-k)\cdots(n+q-k)}$$ を「場合の数による意味付け」で求めることが出来ます。 (3行目から4行目に変形できる理由が分かりますか? ) また、この積分公式を「部分積分の繰り返し」で求める方法を

          有名な積分公式の「確率を用いた」証明、および「ある和」の求め方への応用

          代数学の基本定理のシンプル(?)な証明

          代数学の基本定理の証明は色々知られていますが、最近、ある本でシンプル(?)な証明を知りました。ただし、この本に書かれている通りに忠実に読むと誤っている部分がある(ように思う)ので、この本の証明を修正したものを紹介したいと思います。高校数学+αで証明できます。高校数学範囲外で登場するものは「$${xy}$$平面上の有界閉集合$${D}$$上の連続関数$${w=f(x,y)}$$は、最大値と最小値を持つ」くらいです(「閉区間$${I}$$上の連続関数$${y=f(x)}$$は、最

          代数学の基本定理のシンプル(?)な証明