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統計検定1級を受験しました。(2回目)

このnoteでは、私が受験した統計検定1級(2023/11/19(日))について、受験勉強、試験の出来、合否発表などを冗長に記述します。統計検定1級に興味のある方、受験予定の方で、時間のある方はぜひお読みください。

統計検定1級の概要は次の通りです。



1.2023年11月の試験まで

2022年11月に統計検定1級を初めて受験しました。このときの詳細については、以下をお読みください。

2022年11月の統計検定1級で統計数理・統計応用の両方で合格(統計数理はS合格)を頂きました。ただ、このときの私の状況を客観的に分析すると、「運良く受かったしまった。まだまだ勉強不足」でした。そこで、「数理統計学を改めてきちんと勉強しよう」と思い、2023年3月~11月で「現代数理統計学の基礎」(久保川達也、共立出版)を教科書としてオンラインの勉強会を開きました。詳細は次の通りです。

この本の2章~9章(+α)の本文および演習問題(追加問題も含む)を扱いました。このゼミのおかげで、私は数理統計学の理解をかなり深めることが出来ました。2022年11月時点で知らないこと・理解していなかったこともしっかり学べました(むしろ、「なぜこんな勉強不足な状態で2022年の統計検定1級に受かったのか」と思うくらいでした)。内容としては、「現代数理統計学の基礎」の2章~9章のほか、統計検定の過去問、「データ解析のための数理統計入門」(後述)の一部なども扱いました。毎回の準備はとても大変でしたが、多くの方が参加して下さって、アドバイスをいただいたり有意義なやり取りが出来たりして、とても有意義なゼミでした。

学習を進めているうちに、「これだけ数理統計学を勉強したのだから、2023年11月の統計検定1級を再び受けてみようか?」と言う気持ちが徐々に高まり、統計検定1級の2回目の受験を決意しました。少なくとも、前回よりは学習を積んだ状態で試験を迎えることになります。

しかし、10月の段階で、回帰分析と分散分析の理解が不十分でした。「現代数理統計学の基礎」の第9章(回帰分析や分散分析など)の説明が難解(概説的な感じ)、具体例が少ない、演習問題がない、と言う状況で、理解に時間がかかっていたからです。そのような中、「データ解析のための数理統計入門」(久保川達也、共立出版)が2023/10/12(木)に発売されました(詳細は後述)。この本では、「現代数理統計学の基礎」で詳しく扱われていない箇所を丁寧に扱っているので、急遽ゼミを延長して、この本の回帰分析や分散分析の章を扱いました。

また、試験の1ヶ月前に以下の参考書を購入しました。

「準1級対応」と書いてありますが、1級の対策にも十分使えます(特に統計応用対策)。「現代数理統計学の基礎」は第9章以降の演習は、この本で補えます。もっと早くからこの本を演習していれば良かったです…。

2.試験当日

と言うことで、2023/11/19(日)実施の統計検定1級(統計数理・統計応用)を受験しました。会場は学習院大学 中央教育研究棟でした。この日(とその前日)に山手線の一部区間の運休(JR渋谷駅の工事のため)があった関係で、東京メトロ副都心線の雑司が谷駅から会場に向かいました。

自己採点の結果は、次の通りです。

[統計数理]
問1[1]〇 [2]〇 [3]〇 [4]〇 [5]〇か△ [6]×
問2[1]〇 [2]△か× [3]〇 [4]〇
問3[1]〇 [2]〇 [3]〇 [4]〇 [5]〇

問1[5]は「平均が一定である確率変数列が、その平均に確率収束することを示す問題」でした。分散が0に収束することを示せば良いのですが、確率収束の定義に基づき、チェビシェフの不等式を用いてきちんと示したほうが良かったかもしれません。また、問1[6]では2つの統計量の漸近相対効率を問われました。私が漸近相対効率を知らなかったので、解けませんでした(悔しい!)。ちなみに、相対効率は「平均2乗誤差の逆数の比」です(2つの統計量が不偏推定量であれば「分散の逆数の比」)。漸近相対効率は、相対効率の極限です。例えば、2つの不偏推定量$${X_n,Y_n}$$に対し、$${X_n}$$の$${Y_n}$$に対する漸近相対効率は、$${\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{V(Y_n)}{V(X_n)}}$$です。この値が1より大きいと$${X_n}$$の方が優れている、この値が1より小さいと$${Y_n}$$の方が優れている、と考えられます。

問2[2]は「$${Z,Y}$$が独立でそれぞれ標準正規分布、自由度1のカイ2乗分布に従うとき、$${X=Z/\sqrt{Y}}$$が自由度1の$${t}$$分布に従うことを示せ」でした。以下のツイートの方針1で解くのが普通かつ楽ですが、私は方針2(方針1より面倒)で解いてしまい、最後がうまく行かなかったです。悔しい…。

90分で3問を解くわけですが、普段から「早解き」の訓練をしていなかったこともあり、私にとっては「時間に追われながら解く90分(しかも見直しが完璧には出来なかった)」でした…。

[統計応用]
問2[1]〇 [2]〇 [3]〇 [4]〇と×
問3[1]〇 [2]〇 [3]〇 [4]×
問5[1]〇 [2]〇 [3]〇と〇 [4]〇と〇

2022年11月の統計応用よりは良く出来たように思います(時間はギリギリでしたが)。なお、問5[1]は全分野共通の問題で、有名なモンティ・ホール問題(+α)でした。

毎度書いていることですが、普段はApple Pencilばかり使っていて、シャープペンシル(シャーペン)をほぼ使わなくなってしまったので、シャーペンで答案を書くのにとても苦労しました(すぐ芯が折れてしまう、など)。昔は毎日使っていたのですが…「試験前にシャーペンで答案を書く練習をきちんとすべき」と改めて思いました。

この日の翌日(2023/11/20(月))に統計検定のページにて解答が公開されました。ほぼ自己採点の通りでした。

3.合格発表

合格発表日は具体的には公開されておらず、統計検定のページには「12月中旬に掲載します」とだけ書かれています。昨年は試験日が2022/11/20(日)、合格発表日が2022/12/19(月)でした(発表日当日に、統計検定のツイッターで知りました。唐突に発表されたのでビックリしました)。今回は試験日が2022/11/19(日)でしたから、昨年と同様であれば、合格発表日は2023/12/18(月)です。で、案の定、この日に合格発表がありました。肝心の結果は、と言うと…?

一応合格しました。統計数理はA合格、統計応用はS合格です。昨年も両方合格し、統計数理のみがS合格だったことを考えると、統計数理は一歩後退、統計応用は何歩か前進した、と言う感じでしょうか?「両方ともS合格」を狙っていただけに、とても悔しいです!来年も受けるかな…!?

[追記(2023/12/21(木))]
今回(2023年実施分)の申込者数、受験者数、合格者数、合格率、評価S、評価Aの該当者の人数については、次の通りです。

[2023/11/19(日)の統計検定1級の評価S、評価Aの該当者の人数]
・統計数理は合格者223名中、評価Sが22名、評価Aが47名
・統計応用は合格者214名中、評価Sが19名、評価Aが49名
 (統計検定のページより。いずれもWeb合格発表希望者のみ)



参考までに、2022年実施分までのデータも掲載します。

なお、統計検定のページによると、

・2024年1月上~中旬に「試験結果通知書」、合格者には「合格証」を発送する。
・2024年2月中旬に、統計検定1級「統計応用」と統計検定1級「統計数理」の合格者に「統計検定1級合格証」を送付する。

とのことでした。2022年実施分については、前者が2023/1/1(日)、後者が2023/2/13(月)に送られてきました。ちなみに、2023/2/27(月)に最優秀成績賞(評価S)、優秀成績賞(評価A)の方の氏名が公開されました(公開を許諾した人のみ)。

[追記(2023/12/31(日))]
2023/12/30(土)に試験結果通知書、合格証、表彰状が送られてきました。

[追記(2024/3/12(火))]
2024/3/11(月)に統計検定1級の合格証が送られてきました。統計検定側での合否の処理に誤りがあり(詳しくはここを参照)、その関係で合格証の送付が予め告知されていた日程(2月中旬)よりも少し遅れた、とのことです。

[追記(2024/4/03(水))]
4/03(水)に最優秀成績賞(評価S)、優秀成績賞(評価A)の方の氏名が公開されました(公開を許諾した人のみ)。例年より遅いです(例年は2月下旬)。合否処理の誤り(詳しくはここを参照)の関係で遅くなったものと思われます。


4.「データ解析のための数理統計入門」(久保川達也、共立出版)について

統計検定1級に向けた学習の参考書として、「現代数理統計学の基礎」(久保川達也、共立出版)を用いる方は多いと思います。私も、この本で学習しました。しかし、1.でも書きましたが、この本の第9章(線形回帰モデル)は、統計検定1級でよく出題されるにも関わらず、説明が難解(概説的な雰囲気)、具体例が少ない、演習問題がない、など、私にとっては学習しにくい章でした。
そのような状況の中で、2023/10/12(木)に「データ解析のための数理統計入門」(久保川達也、共立出版)が発売されました。

この本を大ざっぱに説明すると、次の通りです。
(a)「現代数理統計学の基礎」と雰囲気が似ているが、説明がより詳しい(特に「現代数理統計学の基礎」の第9章以降)。
(b)「現代数理統計学の基礎」で扱われていない内容が色々登場する(ノンパラメトリック検定など)。
(c)「現代数理統計学の基礎」よりも数学的なレベル・演習問題のレベルは易しい。また、具体的な例が多い。
(d)「現代数理統計学の基礎」に比べ、証明が洗練された部分が色々ある。
(e) 全ての章に演習問題がついている。
(f)
サポートページにて、この本に掲載されている図表や数値計算のR言語でのコードが公開されている。演習問題にもR言語関連のものがある。

書籍の説明には「統計検定準1級・1級レベル」とあります。統計検定準1級・1級に向けた学習用としても、また数理統計学の初歩の学習用としても、とても読みやすい1冊です。

「現代数理統計学の基礎」の第9章の学習で苦労していた私は、「データ解析のための数理統計入門」の対応する部分(回帰分析、分散分析など)を急遽、ゼミで扱うこととしました。その結果、これらについての理解がだいぶ進んだように思います。

恐らくですが、今後の(統計検定準1級・1級対策を含めた)数理統計学の標準的な学習ルートの1つとして、「初学者はまず『データ解析のための数理統計入門』で学習する」が確立するのではないか、と思います。

5.数理統計学のゼミ(第2弾)の告知

「データ解析のための数理統計入門」が気に入ってしまった私は、この本でゼミを行うことにしました。詳細は次の通りです。

数理統計学に興味のある学生・社会人・教育者の皆さん、ぜひ一緒に数理統計学を学習しませんか?そして、2024年11月の統計検定1級をぜひ受けてみませんか?(私は統計検定協会の回し者ではありません笑)

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