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統計検定1級を受験しました。

このnoteでは、私が統計検定1級の受験をしようと決意したところから、2022/11/20(日)の統計検定1級の受験、合否発表までを冗長に記述します。統計検定1級に興味のある方、受験予定の方で、時間のある方はぜひお読みください。

統計検定1級の概要は次の通りです。


1.受験の動機

高等学校の学習指導要領が2022年度から改訂されスタートしました(10年ごとに改訂)。数学では、(色々あるのですが、大雑把に言えば)統計が強化されます。具体的には、数学Iで仮説検定が登場したり(しかも、何故か確率の学習前に!)、数学Bの「統計的推測」(確率分布、正規分布、区間推定、仮説検定)が事実上の必修になったり、などです。2025年実施の大学入試では東大や早大が統計分野を出題範囲に含めることを表明している、という事情を考慮すると、現課程よりも数学の授業の中で統計分野をきちんと扱う必要性が高まるわけです。そういう状況の中、近年のデータサイエンス・機械学習ブームも相まって(あと、統計関連のお仕事を受注したいので(笑))、私の中で「統計を(改めて)きちんと勉強しよう」という気持ちが高まってきました。実は私は、大学院生時代にアクチュアリー試験のために数理統計学を独学しました。試験には数学だけ受かった(2002年12月)のですが、20年も前の話ですし、色々忘れています。ということで、この機会に統計をきちんと勉強しよう、と思い、その取っ掛かりとして数検1級、統計検定1級を受けることにしたのです。数検1級では、簡単な数理統計学が出題されるので、統計検定1級の準備として数検1級を受験したのでした。数検1級の受験については、以下をご参照ください。

さて、統計検定1級は毎年1回のみ、11月に試験が実施されます。申込者数、受験者数、合格者数、合格率については次の通りです(統計検定のページに掲載されているデータをまとめ直しました)。

数検1級の2017~2021年の合格率は5.7~13.2%なので(数検のページより)、これに比べれば統計検定1級は(合格率だけで言えば)合格しやすい、と言えます。しかし、私について言えば、統計についての色々なことを忘れていたり未習部分があったりするので、それをきちんと習得できるのか(しかも2022/11/20(日)までに)、不安な気持ちを持ちながら受験に向けた準備を進めていくのでした。

2.8月から受験勉強を開始したかったのですが…。

2022/7/24(日)に数検1級を受験しました(2022/8/17(水)に合格)。数検関連が一通り終わったので、8月から統計検定の勉強を開始しよう、と計画しました。

[2022年8月時点での私の数学の状況のまとめ]
(1) 高校生・高卒生に高校数学・大学受験数学を教えることを仕事としているので、高校数学・大学受験数学(+α)については問題なく出来る(と思う)。
(2) 統計については専門外だったが、先述の通り、大学院時代にアクチュアリー試験のために数理統計学を独習(主に「入門数理統計学」(P.G.ホーエル)をやりました)して、数学だけ合格(2002年12月)。ただ、約20年も前のことなので、色々忘れている。
(3) 数理統計学の復習などのために、数検1級(2022/07/24(日))の受験を決意。2022年5月~7月で数検1級対策の中で数理統計学の初歩を復習。


2022年の統計検定の開催日は11/20(日)です。年に1回しかないので、この1回で統計数理(午前)、統計応用(午後)の両方に何とか合格したい、と思い、学習計画の案を構想しました。数検1級の受験のときは仲間を募ってコミュニケーションを取りながら学習していったので、モチベーションを下げることなく終始学習ができました(これは、私にとって非常に有効な学習法でした)。ところが、今回の統計検定1級については、1人で勉強することになったので、モチベーションを保つのが大変でした。そもそも、8~11月はいろいろ多忙(8月は夏期講習、9~11月は授業に加え高3クラスの添削(3クラス)、それ以外に色々な原稿の執筆などもある)であり、統計の勉強の時間の確保が大変な状況でした。8月の時点で、統計検定1級の教科書として標準的な「現代数理統計学の基礎」(久保川達也先生の本、以下「久保川本」と略記)の2章~9章を9月末までに読み終え、10月から過去問に取り組む、という(今にして思えば実現可能性のかなり低い)計画を立てたのでした。


3.結局、本格的な勉強は10月から

2節の最後に書いた学習計画は見事に頓挫しました。1週で1章を読み進める、という決して無理のない計画だったのですが、その時間を確保するのが困難なくらい、仕事が多忙だったのです。
9/7(水)(申込受付期間初日)に統計検定1級(統計数理(6,000円)、統計応用(理工学、6,000円)の合計10,000円(数理・応用の同時受験だとこの価格になる))を申し込みました。統計応用は人文科学、社会科学、理工学、医薬生物学の4分野から申込時点で1つを選択することになっていて、私は理工学を選びました。理由は「消去法的に(理工学以外は、私にとって勉強しづらそう)」「統計応用の理工学は、統計数理の延長戦上の学習で対処できる(らしい)」などです。「10,000円も払ったのだから、頑張って確実に受かろう」と強く思いました。また、この時に知ったのですが、統計数理、統計応用のそれぞれにおいて、最優秀成績賞(評価S)と優秀成績賞(評価A)の評価が与えられる、とのことです。「これは頑張って氏名を載せるぞ!」と決意しました。
しかし、強い思いも決意もむなしく、多忙な日々により学習時間がなかなか確保できず(あと、若い時に比べると体力も落ちている)、当初の計画がなかなか進められない、という毎日を過ごしていました。

はじめは、統計検定1級の学習を通じて、久保川本の隅から隅まで学習し、試験範囲外のことも含めて数理統計学をじっくり学習しようと思っていたのですが、10月になるともうそんな余裕はありません(時間的にも能力的にも)。やばい…。ということで、「統計検定1級に即応した教科書で効率よく学習しよう」と考えて、「日本統計学会公式認定 統計検定1級対応「統計学」」(以下「公式本」と略記)に手を出しました。

私には公式本は、久保川本よりも読みやすい部分が多かったです(久保川本は腰を据えてじっくり読むには良い本ですが、統計検定1級に向けての短時間での学習には不向きかもしれません)。ということで、「公式本をじっくり読む」という学習に切り替えました。本を読み進めることはある程度スムーズにできました。しかし、これで学習が万全になったわけではなく、以下の点が問題でした。

(1) 「読んで理解する」ことはできるが、それが「問題が解ける」ことにつながる実感が持てなかった。
(2) 各章に章末問題があるが、量が決して多いわけでなく、またその章の内容を網羅しているわけではないので、「書物の内容を演習を通じて定着させる」ことが完璧には出来なかった。
(3) 自分で手を動かす時間をあまり取らず(というか取れず)、公式本を読むだけで「よし理解した!」としてしまっていた。

日頃、受験生に対して「『分かる』と『出来る』は違う。自分で手を動かさないとできるようにならない」と話しているだけに、「これは絶対に失敗する」という気持ちが日に日に強くなってきました。もちろん、時間が潤沢にあればきちんと手を動かすわけですが、時間が無いことと、「早く未習事項・忘却事項に進まねば」という思いが日に日に強くなっていった関係で、「サッと読んで終了」という勉強を続けていました。

10月下旬の段階で試験範囲が全部終了しているわけではなかったのですが、この時点で過去問演習に移行することにしました。上述の通り、公式本を読んでも「問題を解くイメージ」がなかなか湧かず、また時間的な制約もあるので、解けないものがあったとしても、それは公式本や久保川本に戻って確認すればいいや、そういう気分で過去問演習に入りました。統計数理の方は解けるものが結構多く、問題を解くことで初めて理解が深まったものも多かったです(十分統計量、ネイマン・ピアソンの定理など)。また、統計応用(理工学)に生存関数・ハザード関数関連がよく出題される、ということを過去問演習を通じて知りました。公式本にしても久保川本にしても、章末に演習問題があるのですが、本文中に例題・練習問題がある方が、「書物の内容を問題を解くときにどう活用すればよいか」がよく理解できて良い、と思いました。そういう本、ありますかね…?

過去問演習には、主に以下のサイトを利用しました。有り難うございます。
(全部解いたわけではなく、また「読んで終了」のものも多かったですが、それでも問題を解くイメージはだいぶ湧きました)

過去問集も購入したのですが、上記のサイトの方が問題数が多かったこともあり、過去問集はあまりやりませんでした。

ということで、統計検定1級の学習では、教科書学習のみではなかなか問題を解くイメージが得られないと思われるので、ある程度基礎を固めたら早めに過去問演習に入ることを強くお勧めします。統計検定1級の問題は、基礎を固めれば解けるものが多い(大学の定期試験のようなイメージ?)ので、「教科書を何周も読んでからでないと過去問演習に入れないのでは?」と思う必要はありません。

これまでの文脈から外れることを2点、書いておきます。

・気合を入れての学習は、あまり疲労していない午前中や昼過ぎに行うこととし、仕事の疲れた状態の時はYouTubeの数理統計学の解説をダラダラと視聴していました(何もしないよりはマシ、という感覚で)。

・他の分野の学習でも同じことが言えるかもしれませんが、一つの本で学習してイメージが掴めないときは、他の本やサイト・動画を参照すると良いです。今回の勉強で言えば、公式本を読んで「?」と思うところを久保川本や統計関連のサイト・動画で学習する、という感じです。昔と違って今は統計関連のサイトや動画が充実しているので、とても学習しやすかったです。いい時代になりましたね。

4.試験前日・当日

試験前日(11/19(土))は朝から晩まで業務(添削+授業+授業)だったため、統計検定1級の勉強はほぼできませんでした。試験当日(11/20(日))は朝早く起き、総点検(と言っても、分散分析や回帰分析などの学習は不十分であり「総点検」の段階に至っていなかった)を行って、いざ試験会場に向かいました。

試験会場は日本橋のビジョンセンター日本橋本館5階でした。統計数理が10:30-12:00(90分)、統計応用が13:30-15:00(90分)であり、どちらも5問から3問選択で解きます。3問で90分というのは、決して無理のある設定ではないと思うのですが、問題演習や試験に十分に慣れていなかった私にとっては、余裕が無かったです。問題を解くにも時間がかかるし、普通に詰まってすぐ解けないものもある。「これ、解けるのか?」と思い時間がどんどん流れていく。やばい。どうしよう。そうこうしているうちに、そろそろ解答用紙に清書しないと時間切れになる、急がねば。ということをやりながら、何とか解答用紙を埋めました(普段iPadのApple Pencilばかり使っているので、「シャープペンシルで紙に答案を清書する」のも一苦労でした。昔は出来たはずなんですけどね…)。統計数理は小問1問以外は解答を書きました(その小問は、大学受験でも登場しそうな確率の問題であり、時間内に解けなかったことが悔やまれます)。「ああ、満点を逃した…。この時点で評価Sを逃したな。残念…」と思ったものでした。午後の統計応用に至っては、選択した3題中、1題は完答したのですが、残りの2題中1題は最後まで埋めたものの出来ているのは半分程度だろう、もう1題ははじめの小問を少し解いた程度でした。「あ、これ、落ちたな」。試験中の段階で統計応用の不合格を確信しました。悔しいですが、学習が不十分であったことは間違いありません。「来年、統計応用だけ再受験するか。あー、1年は長いなぁ」。こう思いながら、とぼとぼ帰宅したのでした。

5.試験後から合格発表まで

試験の翌日(2022/11/21(月))に解答が発表されました。出来は、統計数理では白紙にした問題に加え、解いた問題でもミスが見つかり計2問ミスでした。「ああ、評価Aも無理だなー」。とても悔しい思いをしたものです。統計応用についてはほぼ自己採点の通り(1問は完答、1問は5~6割程度、1問はほぼ全滅)でした。統計応用の不合格を改めて確信し、合格発表までを辛い気持ち(→大げさ)で送る日々が続いたのでした。

合格発表日については具体的な日付は公開されず、統計検定のページには「12月中旬」とだけ書かれていました。「え、これ、統計検定のツイッターで突然、合格発表日が告知されるの?」。そう思いながら合格発表を待っていました。

そして、ついに2022/12/19(月)に合格発表がありました。仕事の合間にツイッターで合格発表があったことを知ったのでした。心の準備が全然できていない状態で、統計数理、統計応用それぞれにおいて自分の受験番号を探しました。で、結果は…。

信じられないことに、統計数理、統計応用(理工学)の両方に合格しました。しかも、統計数理は何故か評価S(最優秀成績賞)でした。統計数理は2問ミスしても評価Sになる、ということなのですね。また統計応用(理工学)は、出来が5~6割くらいだとしても合格する、ということなんでしょうか(合格基準が毎回同じとは限らないわけですが)。

[参考](2022/11/20(日)の統計検定1級の評価S、評価Aの該当者の人数)
・統計数理は合格者224名中、評価Sが22名、評価Aが53名
・統計応用は合格者188名中、評価Sが20名、評価Aが44名
 (統計検定のページより。いずれもWeb合格発表希望者のみ)

なお、統計検定のページによると、

・2023年1月中旬に「試験結果通知書」+合格者には「合格証」を発送する
・2023年2月中旬に統計検定1級「統計応用」と統計検定1級「統計数理」の合格者に「統計検定1級合格証」を送付する

とのことです(1回でまとめて送ることは出来ないのか?)。
実際には、試験結果通知書、合格証、表彰状については2023/1/1(日)に送られてきました。早い!

[追記(2023/2/13(月))]
2/13(月)に統計検定1級の合格証が送られてきました。予め告知されていた日程(2月中旬)に送付された形ですね。

[追記(2023/2/27(月))]
2/27(月)に最優秀成績賞(評価S)、優秀成績賞(評価A)の方の氏名が公開されました(公開を許諾した人のみ)。

6.最後に&数理統計学のゼミの告知

私は、統計検定1級には合格したものの、統計学習はまだ道半ばです。また、統計検定1級は数理統計学が中心の試験ですが、もっと実学に応用するような統計についても興味があります(統計検定準1級では、こういう話題も出題されるようです)。今後も統計学習を続けていきたいのですが、やはり1人でやるのはモチベーションを保つのが結構大変です。ということで、「むぐむぐ勉強会」(むぐれしあさん(@Mgreshia4)が主催されるDiscordサーバー上でのオンライン勉強会)にて数理統計学のゼミを開催することにしました。自分以外の人を巻き込むことで、安易にサボることを防止するようにした、ということです(複数人で学習することのシナジーも期待)。以下がその概要です。

(1) 教科書:
 現代数理統計学の基礎(久保川達也、共立出版)の2章~9章(発展的事項は除く)
 (+問題集)
(2) 対象:
 (a) 数理統計学の基本を学びたい方
 (b) 数理統計学の演習問題を解きたい方
 (c) 統計検定1級(2023年11月)を受験予定の方
 (d) 大学院入試対策で数理統計学が必要な方
(3) 予備知識:
 線形代数、微分積分(大学1年程度)の基本、確率(高校程度)の基本
(4) スケジュール:
 2023年3月~10月、毎週〇曜日の夜の1時間
  3~8月→教科書を読む、演習問題を解く。
  9,10月→統計検定1級の過去問を解く。
(5) ゼミ担当者:
 最初の数回は私、その後は希望者がいらっしゃればその方にお願いする。
(6) その他:
 (1)~(5)については、参加される方のご意見により一部が変更される可能性があります。

現在、このゼミの準備を進めています。参加ご希望の方は「むぐむぐ勉強会」にご参加の上(むぐれしあさん(@Mgreshia4)にお願いしてください)、Discordのサーバー上で参加意思を表明してください(参加者の募集は2023年2月以降、詳細の決定も2023年2月の予定です)。

[追記(2023/1/20(金))]
1/19(金)にゼミのチャンネルを開設し、参加者の募集を開始しました。

[追記(2023/2/10(金))]
数理統計学のゼミの告知ページを作りました。開催曜日・時間帯は、2023年3月~10月の毎週金曜日23:00-24:00です。

[追記(2023/11/24(金))]
このゼミは2023/11/17(金)に終了しました。有り難うございました。


数理統計学に興味のある学生・社会人・教育者の皆さん、ぜひ一緒に数理統計学を学習しませんか?そして、2023年11月の統計検定1級をぜひ受けてみませんか?(私は統計検定協会の回し者ではありません笑)


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