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ネコヤナギ
写真と俳句 その三十四
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二月はや 天に影して ねこやなぎ 百合山羽公
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猫のシッポのような花穂が名前の由来ですが、まだ芽鱗(ガリン)がしっかりついています。
寒い日が続いていたので、
あのふわふわの花穂は、もう少し先になるかもしれませんね。
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ねこやなぎ まるい日に入り 同化する 広在
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白羽衣
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おきなぐさ 宮沢賢治
うずのしゅげを知っていますか。
うずのしゅげは、植物学ではおきなぐさと呼ばれますが、おきなぐさという名はなんだかあのやさしい若い花をあらわさないようにおもいます。
そんならうずのしゅげとはなんのことかと言われても私にはわかったようなまたわからないような気がします。
それはたとえば私どもの方で、ねこやなぎの花芽をべんべろと言いますが、そのべんべろがなんのことかわかったようなわからないような気がするのと全くおなじです。とにかくべんべろという語のひびきの中に、あの柳の花芽の銀びろうどのこころもち、なめらかな春のはじめの光のぐあいが実にはっきり出ているように、うずのしゅげというときは、あの毛こん科のおきなぐさの黒朱子(くろじゅす)の花びら、青じろいやはり銀びろうどの刻みのある葉、それから六月のつやつや光る冠毛がみなはっきりと眼にうかびます。
――――――
春の二つのうずのしゅげの花はすっかりふさふさした銀毛の房にかわっていました。野原のポプラの錫いろの葉をちらちらひるがえし、ふもとの草が青い黄金(きん)のかがやきをあげますと、その二つのうずのしゅげの銀毛の房はぷるぷるふるえて今にも飛び立ちそうでした。
そしてひばりがひくく丘の上を飛んでやって来たのでした。
「今日は。いいお天気です。どうです。もう飛ぶばかりでしょう」
「ええ、もう僕たち遠いとこへ行きますよ。どの風が僕たちを連れて行くかさっきから見ているんです」
「どうです。飛んで行くのはいやですか」
「なんともありません。僕たちの仕事はもう済んだんです」
「こわかありませんか」
「いいえ、飛んだってどこへ行ったって野はらはお日さんのひかりでいっぱいですよ。僕たちばらばらになろうたって、どこかのたまり水の上に落ちようたって、お日さんちゃんと見ていらっしゃるんですよ」
「そうです、そうです。なんにもこわいことはありません。僕だってもういつまでこの野原にいるかわかりません。もし来年もいるようだったら来年は僕はここへ巣をつくりますよ」
「ええ、ありがとう。ああ、僕まるで息がせいせいする。きっと今度の風だ。ひばりさん、さよなら」
「僕も、ひばりさん、さよなら」
「じゃ、さよなら、お大事においでなさい」
奇麗なすきとおった風がやって参りました。まず向こうのポプラをひるがえし、青の燕麦(オート)に波をたてそれから丘にのぼって来ました。
うずのしゅげは光ってまるで踊るようにふらふらして叫びました。
「さよなら、ひばりさん、さよなら、みなさん。お日さん、ありがとうございました」
そしてちょうど星が砕けて散るときのように、からだがばらばらになって一本ずつの銀毛はまっしろに光り、羽虫のように北の方へ飛んで行きました。そしてひばりは鉄砲玉のように空へとびあがって鋭いみじかい歌をほんのちょっと歌ったのでした。
――――――
底本:「銀河鉄道の夜」角川文庫、角川書店
1969(昭和44)年7月20日改版初版発行
1993(平成5)年6月20日改版71版発行
入力:薦田佳子さん
校正:平野彩子さん
2000年8月25日公開
2012年2月16日修正
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万葉集巻第十九 より
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https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
奈良時代 760年前後
出版年:室町末期
写
コレクション:近衛文庫
宇良々々尓 照流春日尓 比婆理安我里 情悲毛 比等里志於母倍婆
春日遅々鶬鶊正啼、悽之惆之意非歌難撥耳 仍作
此歌、式展締緒。但此巻中不偁作者名字、徒録
者 年月所處縁起。皆大伴宿祢家持裁作歌詞也
万葉集巻第十九
うらうらに 照れる春日に 雲雀上がり 情悲しも 独りし思へば
大伴家持 二月二五日
うらうらに てれるはるひに ひばりあがり こころかなしも ひとりしおもへば
*
うららかに光り輝く春の日に ひばりが空へ飛んでいく
しかし私の心は悲しいのです 一人でよくよく考えてみると
春の日は長くのどかで、ひばりがちょうど今鳴いている。
歌でなければ、耳に入り思う悲しみを払うことは難しい。
そこでこの歌を作り、
取り決めによって結ばれてしまった糸のような心をほどく。
但し、この巻の中に作者の名を記さず、
ただ、年月・場所・縁起を記録するものは、
どちらも大伴宿祢家持によって作られた歌である。
万葉集巻第十九
*
筆者訳
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