高木啓成(弁護士・作曲家)

弁護士、作曲家。動画・音楽関連会社、芸能事務所、デザイン事務所、同人関連企業などをクラ…

高木啓成(弁護士・作曲家)

弁護士、作曲家。動画・音楽関連会社、芸能事務所、デザイン事務所、同人関連企業などをクライアントとして、著作権法を中心とするエンターテイメント法務を取り扱っています。Twitter→ @hirock_n 渋谷カケル法律事務所(https://shibuyakakeru.com/)

最近の記事

JASRACがYouTubeでcontent ID申立を開始する影響について

はじめに昨年秋ころからあちこちでウワサされていましたが、JASRACとYouTubeとの包括契約の内容が変更され、2023年2月下旬からJASRACがYouTubeでのcontent ID(コンテンツID)申立を開始したとのことです。公式のリリースはこちらです。 この件けっこう重要なことなので、ここで整理しておこうと思います。 この話をするには、包括契約やcontent IDの知識が前提になるので、それぞれ簡単に説明しながら進めます。 「そんなこと知ってるよ」という方は、

    • 【個人YouTuber向け】ステマの法律上の問題点と対策【企業案件】

      はじめにYouTubeで人気が出てくると、企業から「うちの商品を紹介してくれませんか?」という依頼が来ることがあります。いわゆる企業案件ですね。 企業案件はまとまった収入になるのでありがたい反面、対応によってはステルスマーケティング(ステマ)だとして炎上してしまうリスクも抱えています。 そこで、今回、ステマの問題点や、ステマで炎上しないための対策について整理したいと思います。 ステルスマーケティングとはステルスマーケティング(ステマ)について法律上の定義はありませんが、

      • ネット中心に活動している音楽クリエイターがきちんと著作権使用料を得る方法

        はじめに今に始まったことではありませんが、YouTubeなどネットを中心に自主制作で活動している音楽クリエイターがどんどん増えていて、人気のクリエイターから「JASRACと契約したほうがいいですか?」などのいろんなご相談を受けることも多くなっています。 また、YouTubeチャンネルの人気が出てくると、新興の音楽出版社などから「著作権使用料を得るために、うちに著作権を預けませんか?」というスカウトが来るという話も耳にします。 そこで、今回、YouTube中心に活動している

        • 【小規模法人・フリーランス向け】PDFで受け取った請求書や領収書を「紙」で保存できなくなります【電子取引データの保存】

          1.はじめに 取引相手から「紙」ではなく、PDFなどの「電子データ」で発注書・請求書・領収書などを受け取ることも多いと思います。 これまでは、取引相手から「電子データ」で受け取ったこれらの書類をプリントアウトして「紙」で保存することが認められていましたが、電子帳簿保存法の改正で、電子データで受け取った請求書や領収書(電子取引データ)を紙で保存することが認められなくなります。 当初、2022年1月から、電子データで受け取った発注書・請求書・領収書などは「電子取引データの保存」

        JASRACがYouTubeでcontent ID申立を開始する影響について

          【小規模法人・フリーランス向け】紙で受け取った請求書や領収書をPDFで保存するためには【スキャナ保存】

          1.はじめに電子帳簿保存法では、取引相手から「紙」で受け取った発注書・請求書・領収書などの取引関係書類を、「紙」で保存するのではなく、スキャンして「電子データ」で保存することが認められています(スキャナ保存)。 この記事では、これらの税務書類を電子データで保存するための要件(スキャナ保存の要件)について、小規模の法人やフリーランス向けに、できるだけ分かりやすくお話します。 ただし、先にお伝えすると、2021年の法改正により要件が緩和されたとはいえ、帳簿や決算関係書類に比べ

          【小規模法人・フリーランス向け】紙で受け取った請求書や領収書をPDFで保存するためには【スキャナ保存】

          【小規模法人・フリーランス向け】帳簿や決算書を紙ではなくPDFで保存するためには?【電子帳簿等保存】

          1.はじめに電子帳簿保存法では、帳簿や決算書など、以下の国税関係書類を、「紙」ではなくPDFなどの「電子データ」で保存することが認められています(電子帳簿等保存)。 ・国税関係帳簿・・・仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛金元帳など ・決算関係書類・・・貸借対照表、損益計算書、棚卸表など ・取引関係書類(発注書、請求書、領収書など)のうち、自分が紙で発行したものの控え この記事では、これらの税務書類を電子データで保存するための要件(電子帳簿等保存の要件)について、小規模の

          【小規模法人・フリーランス向け】帳簿や決算書を紙ではなくPDFで保存するためには?【電子帳簿等保存】

          【2022年1月から】小規模法人・フリーランスのための電子帳簿保存法改正【はじめに】

          1.電子帳簿保存法とは?総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳などの帳簿、貸借対照表・損益計算書・棚卸表などの決算関係書類、発注書・請求書・領収書などの取引関係書類は、一定期間(青色申告なら原則7年間)の保存義務があります。 これらの税務書類を「紙」ではなく、電磁的記録(電子データ)で保存することができると定めたのが電子帳簿保存法です。 ただ、電子帳簿保存法は、要件が厳しく、小規模の法人やフリーランスの間ではほとんど利用されていませんでした。 ですので、多くの人は、これらの税務書

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          音楽クリエイターがギター演奏などを外注するときに合意しておくべきこと

          はじめに 少し前、「地下アイドルに楽曲提供するときに最低限合意しておくべきこと」を書いたところ、たくさんの方に読んでいただけたので、音楽クリエイターに役に立つ記事の第2弾を書こうと思います。 近年、音楽クリエイターとして活動していると「音源について必要十分な権利を保有していること」のような表明保証を求められる場面がとても増えたと感じます。 地下アイドルのプロダクションなどに楽曲提供する際だけでなく、spotifyやApple Musicなど音楽配信のアグリゲーターや、音楽

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          地下アイドルに楽曲提供するときに最低限合意しておくべきこと

          はじめに先日、シンガーソングライターのしほりさんのTwitter投稿やその関連記事をきっかけに、地下アイドルを運営するプロダクションの不適切な行為が話題になりました。 しほりさんの件は契約書があれば防げたというわけではありませんが、「自分も、けっこう契約書を作成せずに楽曲提供してるけど大丈夫かな?」と心配になっている音楽クリエイターもいらっしゃるのではないでしょうか? 契約書の必要性が再認識されつつも、とはいえ、毎回の楽曲提供で契約書を作成することには抵抗もあるかもしれま

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          音楽ビジネスと短期消滅時効

          短期消滅時効の規定は、民法改正により既に削除されており、今後消滅していく論点です。 とはいえ、プロダクションとアーティスト(実演家)との紛争などで短期消滅時効が主張されることがあるので、この機会にまとめておきます。 1.短期消滅時効とは?民法上、債権の消滅時効は10年(商法では5年)とされつつ、短期消滅時効という特殊な規定がありました(民法170条から174条 ※現在は削除済み)。 たとえば、医師の診療報酬債権は3年、弁護士報酬は2年などです。僕も、弁護士報酬を支払って

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          任天堂の著作物利用ガイドラインのポイント、更新内容、更新により明確になったこと

          2018年11月に任天堂が発表した「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」は、YouTubeなどでのゲーム実況を正面から認めるもので、当時、とても話題になりました。 2020年6月1日、このガイドラインに更新があったので、ガイドラインをおさらいしつつ、更新内容、更新により明確になったことについて考えていきましょう。 1.ガイドラインのおさらいガイドラインのポイントは、何より、 ①個人による、営利を目的としない場合であれば、任天堂のゲームの

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          Zoomなどオンライン会議中にBGMで音楽をかけることは著作権的にOKなのか

          新型コロナウイルスの影響でテレワークが推奨され、Zoomやwhereby、Microsoft Teamsなどのサービスがこれまで以上に利用されています。 当初はビジネス中心に利用されていましたが、最近は仕事中ずっとつなぎっぱなしにしたり、オンライン飲み会をやったりする等、友人とくつろぐためにも利用されるようになり、Zoom中にスマートフォンなどで音楽を流すことも多いようです。 今回は、Zoomやwhereby、Microsoft Teams、Google Meetなどでの

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          「エンタメ×法律」note はじめます。

          「エンタメ×法律」noteは、動画・音楽などに関わる企業やクリエイターに向けて、法律や契約のイロハ、自分の考えなどについてお伝えしていきます。「わかりやすく、楽しく読める」をコンセプトに、たまにはイラストも交えながら書いていく予定です。 また、弁護士兼作曲家として、作曲家としての活動報告や、今後ますます増えてきそうな「兼業作曲家」を目指す方々へのヒントになることも発信していきたいです。

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