高木啓成(弁護士・作曲家)

弁護士、作曲家。動画・音楽関連会社、芸能事務所、デザイン事務所、同人関連企業などをクラ…

高木啓成(弁護士・作曲家)

弁護士、作曲家。動画・音楽関連会社、芸能事務所、デザイン事務所、同人関連企業などをクライアントとして、著作権法を中心とするエンターテイメント法務を取り扱っています。Twitter→ @hirock_n 渋谷カケル法律事務所(https://shibuyakakeru.com/)

最近の記事

【後編】エンタメ業界でのフリーランス保護新法の対応

前編では取引の適正化の観点からの規定について解説しました。 後編(この記事)では、就業環境の整備の観点からの規定について解説します。 エンタメ業界では、特に「中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)」が重要です。 募集情報の的確表示義務(第12条)義務の対象者 義務の対象者は、すべての「特定業務委託事業者」です。 義務の内容 広告等によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つ必

    • 【前編】エンタメ業界でのフリーランス保護新法の対応

      2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス保護新法)が施行されます。「フリーランス新法」や「フリーランス保護法」と呼ばれることもあります。 この法律は、フリーランスが取引先からの報酬の不払いやハラスメントなどを受けないよう、フリーランスを保護するために制定されました。 そのため、この法律の内容を一言でいえば、フリーランスへ仕事を発注する事業者に、取引の適正化と就業環境の整備を求めるものです。 エンターテインメント業界でい

      • 【ダウンロード無料】音楽制作を依頼するときの契約書の雛形。スプリット条項つき。

        近年、個人のVTuberさんやボカロPさんが、外部のクリエイターやミュージシャンに音楽制作や演奏を依頼するケースが増えています。 たとえば、以下のようなケースです。 【事例1】:VTuberが、音楽クリエイターに対し、歌唱以外の音楽制作全体を依頼する 【事例2】:ボカロPが、ギタリストに対し、自身で行っている音楽制作のうちギター演奏だけを依頼する このように、近年は、TuneCoreなどアグリゲーターのSplit(スプリット)機能を利用して収益を分配することが多いので

        • 【法律の抜け穴?】歌詞の一部を変える替え歌は違法だけど、歌詞の全部を変えて歌うなら合法になるという話

          今回は、法律の抜け穴…というと大げさかもしれませんが、感覚的には違法なのに実は合法なことを書きます。 先日、ラジオ番組で替え歌を流してしまい、ラジオ局がリスナーや作詞者・作曲者に謝罪したというニュースがありました。 このラジオ番組でどのような替え歌が放送されたのかは知りませんが、歌詞の一部を勝手に改変する替え歌は、作詞者の同一性保持権を侵害するので、違法です。 しかし、一部の改変にとどまらず、もとの歌詞を跡形もなく完全に改変する替え歌であれば、著作者人格権の侵害にはならず

        【後編】エンタメ業界でのフリーランス保護新法の対応

          JASRACがYouTubeでcontent ID申立を開始する影響について

          昨年秋ころからあちこちでウワサされていましたが、JASRACとYouTubeとの包括契約の内容が変更され、2023年2月下旬からJASRACがYouTubeでのcontent ID(コンテンツID)申立を開始したとのことです。公式のリリースはこちらです。 この件けっこう重要なことなので、ここで整理しておこうと思います。 この話をするには、包括契約やcontent IDの知識が前提になるので、それぞれ簡単に説明しながら進めます。 「そんなこと知ってるよ」という方は、「3.J

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          【個人YouTuber向け】ステマの法律上の問題点と対策【企業案件】

          YouTubeで人気が出てくると、企業から「うちの商品を紹介してくれませんか?」という依頼が来ることがあります。いわゆる企業案件ですね。 企業案件はまとまった収入になるのでありがたい反面、対応によってはステルスマーケティング(ステマ)だとして炎上してしまうリスクも抱えています。 そこで、今回、ステマの問題点や、ステマで炎上しないための対策について整理したいと思います。 ステルスマーケティングとはステルスマーケティング(ステマ)について法律上の定義はありませんが、たとえば

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          ネット中心に活動している音楽クリエイターがきちんと著作権使用料を得る方法

          今に始まったことではありませんが、YouTubeなどネットを中心に自主制作で活動している音楽クリエイターがどんどん増えていて、人気のクリエイターから「JASRACと契約したほうがいいですか?」などのいろんなご相談を受けることも多くなっています。 また、YouTubeチャンネルの人気が出てくると、新興の音楽出版社などから「著作権使用料を得るために、うちに著作権を預けませんか?」というスカウトが来るという話も耳にします。 そこで、今回、YouTube中心に活動している音楽クリ

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          音楽クリエイターがギター演奏などを外注するときに合意しておくべきこと

          少し前、「地下アイドルに楽曲提供するときに最低限合意しておくべきこと」を書いたところ、たくさんの方に読んでいただけたので、音楽クリエイターに役に立つ記事の第2弾を書こうと思います。 近年、音楽クリエイターとして活動していると「音源について必要十分な権利を保有していること」のような表明保証を求められる場面がとても増えたと感じます。 地下アイドルのプロダクションなどに楽曲提供する際だけでなく、spotifyやApple Musicなど音楽配信のアグリゲーターや、音楽ストックサ

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          地下アイドルに楽曲提供するときに最低限合意しておくべきこと

          はじめに先日、シンガーソングライターのしほりさんのTwitter投稿やその関連記事をきっかけに、地下アイドルを運営するプロダクションの不適切な行為が話題になりました。 しほりさんの件は契約書があれば防げたというわけではありませんが、「自分も、けっこう契約書を作成せずに楽曲提供してるけど大丈夫かな?」と心配になっている音楽クリエイターもいらっしゃるのではないでしょうか? 契約書の必要性が再認識されつつも、とはいえ、毎回の楽曲提供で契約書を作成することには抵抗もあるかもしれま

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          音楽ビジネスと短期消滅時効

          短期消滅時効の規定は、民法改正により既に削除されており、今後消滅していく論点です。 とはいえ、プロダクションとアーティスト(実演家)との紛争などで短期消滅時効が主張されることがあるので、この機会にまとめておきます。 1.短期消滅時効とは?民法上、債権の消滅時効は10年(商法では5年)とされつつ、短期消滅時効という特殊な規定がありました(民法170条から174条 ※現在は削除済み)。 たとえば、医師の診療報酬債権は3年、弁護士報酬は2年などです。僕も、弁護士報酬を支払って

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          任天堂の著作物利用ガイドラインのポイント、更新内容、更新により明確になったこと

          2018年11月に任天堂が発表した「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」は、YouTubeなどでのゲーム実況を正面から認めるもので、当時、とても話題になりました。 2020年6月1日、このガイドラインに更新があったので、ガイドラインをおさらいしつつ、更新内容、更新により明確になったことについて考えていきましょう。 1.ガイドラインのおさらいガイドラインのポイントは、何より、 ①個人による、営利を目的としない場合であれば、任天堂のゲームの

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          Zoomなどオンライン会議中にBGMで音楽をかけることは著作権的にOKなのか

          新型コロナウイルスの影響でテレワークが推奨され、Zoomやwhereby、Microsoft Teamsなどのサービスがこれまで以上に利用されています。 当初はビジネス中心に利用されていましたが、最近は仕事中ずっとつなぎっぱなしにしたり、オンライン飲み会をやったりする等、友人とくつろぐためにも利用されるようになり、Zoom中にスマートフォンなどで音楽を流すことも多いようです。 今回は、Zoomやwhereby、Microsoft Teams、Google Meetなどでの

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          「エンタメ×法律」note はじめます。

          「エンタメ×法律」noteは、動画・音楽などに関わる企業やクリエイターに向けて、法律や契約のイロハ、自分の考えなどについてお伝えしていきます。「わかりやすく、楽しく読める」をコンセプトに、たまにはイラストも交えながら書いていく予定です。 また、弁護士兼作曲家として、作曲家としての活動報告や、今後ますます増えてきそうな「兼業作曲家」を目指す方々へのヒントになることも発信していきたいです。

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