Zoomなどオンライン会議中にBGMで音楽をかけることは著作権的にOKなのか

新型コロナウイルスの影響でテレワークが推奨され、Zoomやwhereby、Microsoft Teamsなどのサービスがこれまで以上に利用されています。

当初はビジネス中心に利用されていましたが、最近は仕事中ずっとつなぎっぱなしにしたり、オンライン飲み会をやったりする等、友人とくつろぐためにも利用されるようになり、Zoom中にスマートフォンなどで音楽を流すことも多いようです。

今回は、Zoomやwhereby、Microsoft Teams、Google Meetなどでの会議中にBGMを流すことの著作権法上の問題を考え、そのあと、YouTubeやApple Musicを利用してBGMを流す際の問題点についても触れてみたいと思います。

2〜3人の会議でのBGM利用は法律上問題ない

●著作権のうち「公衆送信権」が問題になる

「著作権」と一言で言っても、著作権は、「複製権」「演奏権」などの権利の集合体です。それぞれの権利を「支分権」と呼んでいます。

参考→著作権法の1番わかりやすい解説 第5回 著作権の内容(支分権)

代表的な支分権は「複製権」(著作権者の許諾なく音楽や映画などの著作物をコピーしてはならないという権利)ですが、今回問題になるのは「公衆送信権」という支分権です。著作権者の許諾なく、著作物をインターネット上で不特定多数の人が閲覧(視聴)できる状態にすると「公衆送信権」侵害になります。

Zoomなどのオンライン会議中に音楽をBGMで流す場合、「公衆送信権」を侵害しないかどうか、条文をよく見てみましょう。

「公衆送信」とは、「公衆によって直接受信されることを目的として」有線・無線で送信することです(著作権法2条1項7号の2)。そして、「公衆」とは、不特定の人だけではなく、「特定かつ多数の者を含む」とされています(2条5項)。逆にいうと、「特定かつ少数」であれば「公衆」には当たりません。

まとめると、特定かつ少数によって直接受信されることを目的に著作物を送信することは「公衆送信」にはならないということです。

●オンライン会議と公衆送信権

オンライン会議でいえば、特定かつ少数(2〜3人)のクローズドな会議のBGMで音楽を利用する分には著作権(公衆送信権)侵害にはならないと考えられます。他方、数十人規模の会議や、数人規模だとしても誰でも参加・視聴できるような会議での音楽利用は著作権侵害になってしまいます。これは、ビジネスでの会議か、プライベートでの会議(飲み会など)かは無関係です。

「特定かつ少数」であればOK、「特定かつ多数」は「公衆」なのでNGです。「少数」と「多数」の区別がポイントになってきますが、明確な基準はありません。2〜3人であれば「少数」と考えられます。4人、5人と増えていくと微妙ですが、10世帯以上を対象とする送信が公衆送信権侵害と判断された判例があります(選撮見録事件)。

感覚的には「友人らと数人で部屋でお酒を飲むときにBGMをかける」程度であればOKというイメージです。

ちなみに、ご存知の方も多いと思いますが、ZoomやMicrosoft Teamsと異なり、YouTube、SHOWROOM、17 Liveなどのエンターテインメント系の動画投稿・配信サービスは、JASRACやNexToneと包括的に契約をしていますので、不特定多数への配信でも、一定の範囲で音楽利用が可能です。しかし、原盤権との関係で、やはりCD音源や配信音源をBGMにすることはできません。参考→ネット動画で「BGM」を使うときの注意点

利用規約との関係ではリスクあり

CDプレイヤーなどでCDを再生させながら会議を行うのなら、これまでお話した著作権のことでおしまいです。しかし、今どきCDをそのまま再生することは少なく、たいていスマートフォンやタブレットでYouTubeやApple Musicの音楽をかけています。

ですので、オンライン会議のBGMのためにYouTubeやApple Musicを利用することができるのか、利用規約との関係でも検討しておきましょう。

●YouTubeの利用規約

YouTubeの利用規約には、禁止事項に「本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても・・・配信送信・・・またはその他の方法での使用を行うこと」(抜粋)があげられています。

ここでいう「配信・送信」は、主に公衆に対する配信・送信が想定されていると考えられますが、特定かつ少数に対するものまで含む趣旨の可能性も否定できません。この点は明確ではありません。

また、利用規約の別の箇所では「本サービスを個人的非営利的な用途以外でコンテンツを視聴するために利用すること(たとえば、不特定または多数の人のために、本サービスの動画を上映したり、音楽をストリーミングしたりすることはできません)」とされています。

不特定または多数人に対する視聴が禁止されていることは明確です。しかし、「個人的」というのは2〜3人での会議でのBGM利用も禁止する趣旨なのか、「非営利」というのはビジネス会議でのBGM利用も禁止する趣旨なのかは、明確にされていません。

●Apple Musicの利用規約

Apple Musicの利用規約は、YouTubeと同様に「お客様は、個人的非商用目的での使用に限って本サービスとコンテンツを利用することができます」と記載されています。ですので、YouTubeの利用規約と同じ疑問が生じてしまいます。

●利用規約に違反する可能性あり

以上のように、利用規約上必ずしも明確ではありませんが、やはり、特定の2〜3人でのオンライン会議でのBGM利用であっても、YouTubeやApple Musicの利用規約違反とされる可能性はあると考えた方がよさそうです。

結論は?

・特定かつ少数(2〜3人)のクローズドな会議(または飲み会など)のBGMで音楽を利用する分には著作権(公衆送信権)侵害にはならない

・YouTubeやApple Musicの利用規約違反の疑いがないよう、CDプレイヤーなどで音楽をかけるのが望ましい。

不特定または多数での会議の場合、ロイヤリティフリーの音楽を利用するのも手です。ただし、ロイヤリティフリーの音楽も、そのサービス運営主体によって利用条件は様々なので、不特定多数でのオンライン会議で利用することができるのか、しっかり確認してから購入していただければと思います。


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