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認知言語学の基礎まとめ 01

言葉についていろいろと考えている中で、言語学に興味を持ちました。
しかし言語学と一口に言っても、そのジャンルは多種多様すぎて何から手をつけたらいいのか分からない。

そもそもコピーや文章の書き方をもっと学んだ方が、いまの自分にとってはいいのでは? という思いもありましたが何となく気になったので、その衝動に任せてみることに。

まず、上述したように数ある言語学の中で何を学ぼうかと思い調べてみたところ、自分の興味をひいたのは「認知言語学」というものでした。
(あくまでも感覚的におもしろそう、くらい)

そういうわけで、いったん学ぶ言語学は「認知言語学」に決めて本を読んでみたので、雑記と備忘録がてらまとめてみます。
一気に書くと膨大な量になりそうなので、少しずつ。

今回この記事を書くにあたり私が読んだのは、籾山洋介さん著の「認知言語学入門」という本
素人 of 素人の私でも理解できるくらい、分かりやすく説明してくださっている。ありがたや。

さて、そろそろ本題のまとめへといきたいところですが、どうせなら読みやすくしたいとの思いから、最近、認知言語学に興味を持ち出した元気なAくんと、認知言語学の知識がそれなりにある冷静なBさんという謎の2人による会話形式でまとめることにします(ご都合主義で)。


「認知言語学」って何?

A「最近「認知言語学」ってやつに興味があるんだけど、Bさん知ってる?」

B「知ってるよ。言語は人間が持つ一般的な「認知能力」、人間の「認知」の営みを反映したもの、っていう考え方だよね?」

A「ごめん、どういうこと? ぜんぜん分からん……」

B「認知機能ってみんな持ってるでしょ? 例えば、何かと何かを比較して共通点や相違点を見つけ出す、とか。これって、別に言語には関係ないっちゃ関係ないけど、なんていうか……認知言語学は、言語専用の能力があるって考えるよりも、そういう一般的な認知能力が言語の習得や使用の基盤になってるっていう考え方のこと、かな」

A「うーん、分かったような分からないような。もう少しちょうだい!」

B「いま比較って言葉を出したけど、認知能力にもいくつかあって、基本的なものとして「比較」「一般化」「関連付け」っていう3つが有名かな。まずは比較からいこうか」

A「おなしゃす!!」

比較

B「じゃあ、「ゾウは大きい」って言われたらどう思う?」

A「えっ、そんなの当たり前じゃん。そりゃゾウはデカいっしょ」

B「なんで当たり前だと思ったの?」

A「ん? 前に動物園で見たらめちゃデカかったから」

B「それって何かと比較したから、ゾウが大きいって思ったわけだよね?」

A「ああ、そういうことか。たしかに周りの動物とか自分とかと比べたから、デカいって思ったのかもしれん」

B「そういう意味では、比較なんてみんな当たり前にやってることなんだよね」

A「なるほど……」

B「それなら、「このゾウは大きい」ならどうなると思う?」

A「うーん……あっ、ほかのゾウと比べてるのか!」

B「そうなるよね。最初の「ゾウは大きい」の場合は、人間だったりほかの動物だったりが判断基準になるけど、「このゾウは大きい」だと、ゾウっていうくくりの中で見たときに、ほかのゾウと比較して大きいと判断することになる。何かしらの基準を設定して、比較するっていう感じ」

A「ちょっと分かってきたかも」

B「そうだなあ、「今日は8時間も勉強した」と「今日は8時間しか勉強しなかった」だと印象が違ってこない?」

A「ぜんぜん違うね。グラスの水が半分の状態でどう思うか、みたいなのに似てる」

B「たしかにね。実際に勉強した時間は8時間だけど、その8時間をどう捉えるかで変わってくるっていう例だけど、グラスの水も同じかもね。勉強の場合は、始める前に今日は5時間がんばろう、と思っていて結果的に8時間勉強したなら「8時間も勉強した」になるけど、10時間やるって決めていたのに8時間で終わってしまったなら「8時間しか勉強しなかった」になる。これはもともとの予定や予想と現実を比較して評価した結果ってことなんだけど、なんとなく分かった?」

A「うん、けっこうしっくりきた」

一般化

B「それならよかった。じゃあ次は「一般化」にしようかな。一般化も比較っていう認知能力が前提になってるのね。例えば、そうだな……ちょっと書くね」

① 山手線の8時新宿発の電車はとても混んでいる。
② 山手線の通勤時の電車はとても混んでいる。
③ 東京の通勤時の電車はとても混んでいる。
④ 日本の通勤時の電車はとても混んでいる。

B「よしできた。誰かがこの①から④までを考えたとするね」

A「うん」

B「一般化っていうのは、「個々の物事の共通点を抽出すること」として認知言語学では考えられているのね。①の場合、何度も山手線の8時新宿発の電車に乗って、さらに他の時間の山手線にも何度も乗ったことがあるから自分の経験の比較として言ってる。これが②、③、④に進むにつれて、範囲が広がるし、数多くの経験を一般化したものになってくるでしょ?」

A「まあ、そうなるよな」

B「④になるともう自分の経験だけじゃなくて、人から聞いたとかテレビで見たとかも含めてよくて、東京だろうが大阪、名古屋、福岡とかどこでもいいけど、共通するのは「日本の都市」だし、時間帯も8時前後なら「通勤時」になる。これが一般化ってことなんだけど」

A「なんか分かってきた気がする」

B「でね、もう少し続けると、この一般化っていう認知がけっこう言語にも重要な役割を持ってたりするの。これも書いた方がいいかな」

⑤ 私が住んでいるところはまだ緑がかなり残っている。
⑥ このところ、いい天気が続いている。
⑦ 思うところを率直に述べてください。

B「こんな感じかな。全部「ところ」っていう言葉が入ってるでしょ? これは多義語って言って、異なる複数の意味を持っていて、その複数の意味の間に何らかの関係性があるものなんだけど、ちょっと説明するね」

A「おう、ちょっと分からなくなってきた……」

B「⑤で言っている「ところ」は「空間的な範囲」として使われているよね?」

A「だな」

B「じゃあ、⑥はどう?」

A「えっ、ちょっと待って……あっ、「時間的な範囲」……かな」

B「正解! ⑦はけっこう抽象的な話だけど、思考の対象というか思考というか、まあ、「抽象的な範囲」にしとこうか。で、この3つに共通するのは「(ある)範囲」ってことなんだよね」

A「おお! 分かった」

B「いまみたいに多義語の複数の意味から共通する意味を取り出すことは、一般化っていう認知がベースにあるからできる。これはちょっと蛇足かもしれないけどワードとして大事だから一緒に伝えておくと、こういう複数の事例から一般化して取り出した共通点のことを、認知言語学では「スキーマ」っていうから覚えておいて損はないよ」

A「OK! スキーマスキーマスキーマスキーマ……」

関連付け

B「あと、なんだっけ……ああ、「関連付け」か。これはそのままの意味といえばそのままなんだけど、けっこう無意識でやってる部分もあるんだよね。例えば、筆箱と鉛筆だったら「容器と中身」の関係で、先生と生徒なら「教えると教わる」の関係とか。なんていうんだろう、物事をばらばらに理解するよりも何らかの観点から関連づけて把握することってけっこうあるでしょ?」

A「財布とお金、とか?」

B「そうそう。それも「容器と中身」っていう関係になるね。いまみたいなのを関連付けっていうんだけど、この関連付けの基本的なものは「音(の連続)」と「意味」との関係って言われてるの」

A「音と意味の関係?」

B「うん。そうだな、「のぼる」って言葉があるよね。この言葉を知っている人は「のぼる」っていう音の連続と「下から上に移動する」っていう意味を関連付けて理解しているってこと」

A「ああ、なるほど。そういうことね」

B「あとは、関連付けの中で因果関係とか推論、推測みたいな話もあるんだけど、どうする?」

A「えっ、聞きたい」

B「じゃあ、さらっと。例えば友達と遊びに行くために電車に乗ってたとするね。それでその電車が故障したり何かトラブルが発生して、待ち合わせの時間に遅れるっていうケースの場合、乗っている電車の故障なりトラブルと、待ち合わせに遅れるのって、連続しているけど原因と結果っていう明確が因果関係があるでしょ?」

A「そうなるね」

B「で、この因果関係の流れで推論と推測について話すと、さっきの電車に乗っていたのがAくんの友達だとする。運悪くでもおっちょこちょいでもいいけど、たまたまスマホを家に忘れてきちゃって、Aくんに連絡をしたくてもできなくて、Aくんはすでに30分間ずっと待っているって状況だと、どう思う?」

A「おっせーな。って思うけど、何か事故にでもあったのかな? とか少し心配にもなるかも」

B「だよね。それが推測とか推論で、認知能力のひとつなんだよ」

A「これも認知ってやつなのか。知らんかった」

B「せっかくだから、もう少しだけ。実際はあまり出くわす場面はないけど、道を歩いていて財布が置いてあったら何て言う?」

A「ん? 財布が落ちている

B「そう言っちゃうよね。じゃあ、実際にAくんはその財布が落ちた瞬間を見た?」

A「見てないよ」

B「見てないのに、「落ちている」って言えるのは、誰かのポケットやカバンから財布が落ちた結果その状態が続いているんだろう、ってAくんが財布が落ちた原因も含めて推論したからだよね」

A「たしかに!」

B「この推論も認知能力のひとつで、言語表現でけっこう重要な役割を果たしてるんだよ」

A「なんかけっこう分かったわ」

B「ならよかった。それじゃ、今回はこのへんで終わりにしようか」

A「あざました!」


というわけで、認知言語学における言語の基盤としての認知能力。その中でも基本的な認知能力である「比較」「一般化」「関連付け」について、上述の本をベースにまとめてみました。そうはいってもまだ序章も序章です。
少しずつまとめていければと思いますが、対話形式はけっこう大変だと分かった、封印かもしれません。。

軽くまとめるつもりが、予想よりも長くなってしまいました。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
そしてお疲れさまでした。
またのお越しをお待ちしております。

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