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小説『引越物語』㉜夢でいいから会いたい

トップ画は、モノ カキコ様のイラストです。素敵なイラストをありがとうございます。

イラスト右下のお名前のところをクリックしていただくと、モノ カキコ様のとても丁寧な記事を読むことができます。イラストを通じて素晴らしいクリエイター様に出会えるのもnoteならではです。


ここからはお詫びになるのですが、前回のお話から三週間も経ってしまいました。登場人物も、ストーリーもお忘れになった方が大半だと思います。

また、初めてご覧になる方もいらっしゃるかと思います。マガジンのほうで、登場人物をおさえていただきますと、読みやすくなるかと思います。

こちらは、登場人物の紹介があり、一話から読めるマガジンです。


こちらが前回のお話です。


前置きが長くなりました。お待たせして本当にごめんなさい。

では、この線を乗り越えて『引越物語』第32話をお読みください(*´ー`*)




あぁぁ
あの日の雨だ

ママったら、そんなに泣かなくても帰ってくるよ

時々どこかへ行っちゃうけど、パパはちょっとしたら家に帰ってくるんだから


「風邪をひくわ。せめて、この傘を持って行ってちょうだい。元気でね。」

バサッ!

跳ね除けられた傘が逆さを向いて、降りしきる雨を受け止める

「ごめん…。いらない。」


パパは、一度もママと私を振り返らなかった

「パパーーーー!雨だよー!傘いるよー!」

あーちゃんの傘、貸してあげるのになぁ



「麻美ちゃん、大丈夫?」

目を開けると、懐かしい未希の顔が心配そうに覗き込んでいた。

「随分うなされてたけど。」

「あぁ…。すみません。」
「私、ガス欠で高速にのれなかったんだ…。迎えに来てもらって、ごめんなさい。」

電話の時とは打って変わって、バイトをしていた頃の大人しい麻美の話し方に戻っていた。

「夢を見てたんです。夢なんだけど、本当にあったことで。いらないって、言われちゃう夢…。」

今にも泣きそうな麻美に、未希は肩を抱いてやることしか出来なかった。


マリオが、深呼吸した。

「麻美ちゃん、ママはいつもキミの側にいるよ。ずっとここにいるから。」

マリオが自分の心臓のあたりに手を当てて、そう告げると、麻美は目を見開き、空(くう)を見た。

「私、また置いてけぼりにされたんです。これで2度目。パパもママも身勝手で自己中で最悪!!」

「麻美ちゃん…。マリオが言いたいのはね、お母様がお亡くなりになったってことなの。」


「ママが死んだ…って…そ…そんなのウソ!」
麻美が肩で息をする。呼吸がどんどん激しくなっていった。

「未希さんもマリオもひどい!そんなの聞きたくない!!」

麻美は、自分の太ももを殴り始めた。ふたりが止めようとしても無駄だった。

未希もマリオも何発か殴られたが、誰も痛みを感じなかった。

哀しみが、ただ其処にあった。



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