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種をまき、そして花が咲く。



種から育てたスイートピーの、花が咲いた。



昨年の10月私は疲れていた。

4月に新入社員として入った会社を半年でやめ、実家に戻ってきたばかりだった。
友達に連絡をするこ都はおろか、誰かと話すのも、外出するのも億劫になるくらい精神的に参っていた。

そんな私がなんとなく、「やってみてもいいかな」と思ったのがガーデニングだった。

いつも母の手によってきれいにされている家の庭に、何かを植えて世話をしようと思った。

通常なら土や肥料、そして花の苗を買って植えるだけだが、植物の種売り場を見て、ふと、種から育ててみようと思ったのだ。

選んだ花はスイートピー。
切り花を買うときに、あったら絶対に買うくらいの私の好きな花だ。
複数本あれば一気に華やかになるし、香りも甘くて好きだ。


そんなわけでスイートピーを種から育てることにした。

種を育てる用の容器に3つ筒種を植え、来る日も来る日も双葉が生えるのを待った。
種の袋には2週間ほどで芽が生えると記載されていたが、実際には3週間ほどかかった。

やっと生えてきた芽は驚くほど頼りなく、風が吹けば飛ばされてしまいそうだと思った。

その芽が成長するように、来る日も来る日も水を遣り、日光に当てた。

夜中に大雨と強風の音に起こされ、意識が覚醒するより先に芽が生えているプランターを家の中に入れたりもした。

冬の寒さに枯れてしまったものもあったし、せっかく生えてきたのにナメクジに食べられてしまったものもあった。


それでもすくすくと育ったスイートピーたちを、ある程度伸びてきたので玄関のフェンス近くに配置した。

まっすぐに伸びてうまくフェンスに絡んでくれると期待したが、12個ある株のうち、どれもフェンスは嫌だとでもいうようにフェンスの向こう側に延びたり、はたまた地面すれすれに伸びて行った。
中には隣に置いていたチューリップに絡みつくのもいた。


好き勝手に伸び、育ったスイートピーだが、3月になり暖かくなっても4月に入って20度を超える日が続いても花が咲かなかった。

花がないと、ただのマメ科の植物なのでお向かいさんに「その豆よく育ってるね」なんて言われてしまった。

父の仕事場近くに植えられているスイートピーはもう満開を迎えているらしいのに、うちのスイートピーは蕾すらないように見えた。


今年は、うちのスイートピーの花は咲かないのかもしれない。と半分諦めていた。

というのも実は、双葉が生えてきたとき、本当は個々の成長をよりよくするために間引きを行わなければいけなかったのだ。
しかし、当時の私は精神的にやや参っていたため「命の選別なんて手出来ないししたくない」と言って間引きを行わなかったのだ。

だから感覚をあまり開けずに植えられたスイートピーたちは所狭しとぎちぎちに植わっている。
そうすると栄養が行き届かず、花をつけるのが難しくなったため未だに咲いていないのでは、と思った。



しかし今日、ひっそりと一つ、花が咲いていた。

濃い紫色の花がぽつんとそこに色付いていた。

一般的なスイートピーの花のイメージはしろとかピンクだ。(少なくとも私の中では)

だから気が付かなかった。
でも、花が咲いた。


種から育てて、花が咲いたというだけだがここ最近でうれしかったことランキングTOP3に入るくらいは嬉しかった。

これがその花である。

咲いたスイートピーの花


小さいし、まだ一輪しか咲いていないから地味だが、確かに花が咲いたのだ。




仕事を辞めて半年。

体調も精神もかなり回復した今、咲いた花を見つめて思う。

そろそろ、何か新しい種をまこう、と。

そして今度は花が咲くまで楽しんで続けてみよう、と。


種をまいたものに花が咲いて実っていく。

人生もきっとそのサイクルの一つだ。



さあ、新しい種をまこう。

そしてまた、花が咲いたらうれしいな。








とりあえずスイートピーが満開になってくれたらうれしい。

お読みいただき、ありがとうございます。 これからも私の感じたことをより表現していこうと思います。