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子どものつぶやき「雪って楽しいだけじゃないんだ…」

 もう10年くらい前の話です。
 ひのりす君が通う、ひの社会教育センターの子ども会では、冬に雪遊びのプログラムを楽しむため、1泊2日で長野県の山に入っています。
 ここは、標高約1,700m。スキー場のリフトを使い、さらに山へ分け入ってベースとなる山小屋を目指します。
 この年は期間中結構な積雪にあたり、パフパフのパウダースノーを楽しむことができました。リフトから山小屋まで子どもの足で徒歩20~30分ですが、踏み跡を外れると腰くらいまで雪に埋まる深さでした。

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 山小屋の周辺で、ソリをしたり、かまくらを作ったり、雪灯籠を作る、アイスクリームを作る、雪合戦…思い思いに時間を気にせず雪と向き合える、子どもたちにとっても心が解放される贅沢な時間です。
 聞こえてくるのは「楽しい~」「楽しい~~」「楽しい~~~」。体験屋冥利につきます。

 次の日の早朝、山小屋から1時間弱で山頂へ行くことができるので、当時中学生だったサブリーダーを2名連れてご来光ツアーへいきました。
 誰にも踏まれていない「キュッキュ」と音のする新雪、日の出前のキンと張りつめた心地よい冷え、静寂の中に自分たちの歩く音と呼吸音しか聞こえない空間を、ヘッドランプを着けて山頂までハイキングしました。
 そして待っていたご来光とブルースカイ。贅沢の極みです。ここでもやっぱり「楽しい~~~~!!!」の連呼。

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 帰り道、よりフカフカのルートを通ってみました。あまりに楽しいのでフカフカの雪に埋もれてみよう…と相談して進んでみたのですが…。。歩み始めて少ししてからすぐに後悔することになったのです。

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 斜度がある山肌を下っているときはそれでも重力の力でコロコロ進むので、ご期待の「パフパフダイブ」で気持ちい!と楽しかったのですが、しばらくすすんで斜度がなくなった地形に差し掛かったところで、体が腰まで埋まりハマってしまったのです。
 それもそのはず、スノーシューも履いていない「ツボ足」で何十センチも一晩に降った新雪へ突っ込めばこうなる…と理解したのは少し後。勢いで突っ込んだ結果、非常に体力と精神力を使うラッセル地獄になりました。

 ついさっきまで、雪は楽しく快適な遊び道具でした。丸めても楽しい!滑っても楽しい!!登っても楽しいし、全部楽しい!!!はずでした。
 しかし、今は踏ん張って1歩進んではハァハァ呼吸が荒くなる始末。結局抜け出すのに30分以上かかって登山道に復帰し、バテバテになって山小屋に帰り着いたのでした。
 この時、雪に半身埋もれ、曇ったゴーグルを拭きながらふとメンバーから漏れた一言。

「雪って楽しいだけじゃないんだ・・・・」

 これが印象的で、いまだに当時の景色と共に頭に残っています。

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 話は変わりますが、教育の世界では誰もが必ず習うフランスの哲学者「ジャン=ジャック・ルソー」が書いた、有名な著書「エミール」の中に次のような一節があります。

 「経験は授業に先立つ」

 自然体験活動の現場で子どもたちを見つめていると、ルソーが提言するこの考え方にAgreeしたくなるシーンによく出くわします。
 方程式の解き方は忘れてしまっても、経験で得たインスピレーションは体に染みついてずっと覚えているものです。
 彼女も今はもう社会人。しかしたまに当時の話を出せばこの時にあった出来事を覚えています。

 楽しいことも、いい事も、うまくいかない事も、ひっくるめて体験活動。
だから、いつの時代にも「子育てに欠かせないもの」としてその必要性が説かれるのでしょう。
 ひの自然学校も、その機会を可能な限り創出していきたいと思います。

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