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時には海をも越える、私と彼女のお誕生便


私には毎年誕生日のプレゼントを贈り合う友人がいる。
もちろん、他にも誕生日プレゼントをもらったり、贈ったりする友人もいるのだが、彼女とのこのやりとりはなんとなく特別なものになっている気がしている。

これを私たちがいつからやり始めたかは正直覚えていない。
彼女とは大学時代に知り合い、もうだいぶ長い付き合いになる。
もともと気の合う仲間だったが、大学を卒業して、物理的距離が遠くなってからの方が私たちの親交はより深まったように思う。


音楽、言語、服のテイスト、雑貨、なんとなく好きなものが似ていて、プレゼントを贈るのはおそらくそれも1つの理由であると思う。
たまたま街を歩いているときに「あ、これ彼女が好きそうだな」なんて思うものが目に入ると、じゃあ誕生日に贈ろうと自然に思い、それがお互い続いていた。


彼女の今住んでいるところは長野県で、大学を卒業してからは海外に留学していることもあった。なので、基本的に私たちのプレゼントは誕生日の日になると宅配便でお互いの家に届く。

ある年、彼女はどこにでもある普通の段ボール箱に、マスキングテープで可愛らしくデコレーションを施し、それにプレゼントを入れ送ってきてくれた。
ちょうど色々な小物が入るくらいの大きさの、可愛くて丈夫なその箱が私はとても気に入り、次の彼女の誕生日までその箱を取っておいて、今度はそれに私が彼女に贈りたいものと手紙を入れ、送り返した。
これが「お誕生便」の始まりだ。

以前から思い立ったらというような頻度で贈り物を送っていたが、このお誕生便BOXの誕生を機に、私たちのやりとりは毎年恒例のものとなった。
地球にも人にも優しい彼女も、その箱とこのやりとりを気に入ってくれた。

私の誕生日は4月、彼女の誕生日は9月だ。
約半年のスパンで私と彼女の間を行き来するその箱は、東京から長野、時には海を越え海外まで旅することもあった。
今いる場所のおすすめしたい素敵なものが入っていることもあれば、どこから見つけてきたのかと思うくらい私の好みにドンピシャな雑貨などが入っていることもあった。

こんなにも自分の好みに合うものを自然と贈ってくれる人は、なかなかいない。彼女は私の好きなものを本当によく知っていたし、彼女もまた私の贈るものにとても喜んでくれた。
私たちはお互いのことをよくわかっていた。

一年を通して、私は彼女が喜びそうなものを見つけてはその箱に詰めていく。それが、いつも一緒にいるような気持ちになりなんとも楽しかった。
なんだか自分の誕生日が1年に2回あるような気分だ。


おばあちゃんになっても続けたいね。
どこに住むことになってもずっと一緒に旅行に行ったり、こうしてプレゼントのやりとりをしたいね。
そんなありきたりで女の子が好きそうな会話を笑いながら交わす。
私たちは趣味や性格も、どちらかというとあまり女の子らしい方ではなかったが、なんだかこんな時だけ女の子って楽しいななんて思ったりして、自分の中の女子っぽいところに浸ってみたり。

これから先の人生、私たちがどんな道を歩むのか、まだわからない。
もしかしたらケンカをするかもしれないし、お互いの居場所がわからなくなるかもしれない。
それでも私はこれからも、彼女の好きそうなものを見つけたらきっと手に取ってしまうだろうし、それを毎年集めてしまう気がしている。


今までは、年に2回以上は必ず一緒に旅行に行ったり、お互いの家を訪ねたりしていたのだが、最近はそれも叶わない。
それでも今は、このお誕生便が私の代わりに、彼女の代わりにお互いの元へと足を運んでくれる。
また会えるその日まで。これからも、きっとずっと。



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