天ぷら不眠　#毎週ショートショートnote

「おそらく天ぷら不眠でしょう」

「は？」

「最近天ぷらを食べたのはいつ頃ですか？」

少し前から謎の音が頭に響いて眠れなくなった。
それでクリニックに来たのだが。確かに「天ぷらを揚げるような音」と言ったのは自分だが、この病名は予想していなかった。

「しばらく食べてませんが...何ですかその天ぷら不眠っていうのは」

「天ぷらから遠ざかると発症する、まぁ禁断症状みたいなもんですね。まずは今日から毎日天ぷらを食べて下さい」

「えっ...」

「症状がおさまるまでのほんの数日です」

それで治るならと、その日から半信半疑で毎日天ぷらを食べた。

翌週

「どうですか？」

「音は相変わらずで、胃もたれで体調も悪くて...」

「そうですか…もしやその音、唐揚げを揚げる音ですかね？」

「...は？」

「この症状は見極めが難しくてね。紹介状を書きましょう、知り合いに唐揚げ不眠専門の者がいます。別のクリニックなので初診料はかかりますが、そちらを受診してみてください」

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