命乞いする蜘蛛　＃毎週ショートショートnote

「うわぁ助けてー！」

「逃がすものか！」

「お願いです、どうか命だけは…」

「命乞いなど通用しない！」

「あ、あの…でも、僕を殺さない方がいいですよ」

「はっはっは命乞いの次は説得か？」

「実は僕、呪いにかかって蜘蛛になった者でして…僕を殺すと呪いが移ってあなたも蜘蛛になってしまいます」

「なんだと？」

「だからどうかここは穏便に…ね？」

「蜘蛛の戯言など信じるか！死ねい！」

「そうですか...残念だなぁ」

蜘蛛はそう呟くと飛びかかってきた相手に素早く咬みついた。
猛毒によって倒れる敵の横で、器用に紙とペンを取り出す。

「えーと、"自分が蜘蛛になってしまうとおどかす"は×、いや△ってとこかなぁ。相手によってはこれで許してくれるかも...。今ので74回目の命の危機、そのうち命乞いが成功したのはたった2回か。うーん、確実に見逃がしてくれるいいセリフはないものかなぁ。僕は平和主義の毒蜘蛛なのに…」

蜘蛛はため息をつきながら歩き出した。

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