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【風呂酒日和22-2】 のどか

【風呂酒日和(フロサケびより)】
どこかで銭湯を見つけると、つい寄り道したくなる。
銭湯から出ると、つい一杯飲みたくなる。
そんな私がふらりと立ち寄った、心と体とお腹を満たす、銭湯と居酒屋をまとめたマガジン。


気持ちよく東宝湯を出た私。

今日もGoogle Mapで適当に目星を付けて歩き出す。
怠け者の私は、普段は率先して階段など登らないのだが東宝湯を出てすぐ右にある階段になんだかすごく惹かれる。

一段一段はそこまで高くないもののなかなか狭くて急な階段だ。
不思議な魅力を感じて、その階段を登ってみる。
登りきったところには「梯子坂」という標識が立っていた。調べてみると江戸時代からある坂とのこと。
その歴史が私に階段を登らせたのかはわからないが、なんとなく「さすが」なんて思う。


坂を登りきって、しばらく道なりにてくてくと歩いていく。
新宿とは思えないくらい静かで穏やかな住宅街。
昔ながらの家や、なんだか高級そうなちょっと小洒落た一軒家を見ながら何かの施設の脇を歩いていくと、大きな通りに出た。
そしてほどなくして見えてきたのが「のどか」である。

マップや袖看板にはひらがなで書いてあったが、入口上の木の看板には「乃どか」とある。
何軒か店が並ぶうちの、ひときわ趣のあるたてがまえの引き戸をカラカラと開けると「いらっしゃいませ〜」と優しそうな声がした。

おばちゃん、と呼ぶにはちょっと失礼かなというくらいの奥さん。
私が入った時にちょうど奥の小上がりの方から「ママ〜瓶もう一本。」と聞こえてきた。
なるほど、私もママと呼ぼう。


ママは愛想よく「はーい」と返事をしながらも、私に「好きなところ、座ってね。向こうの奥が風通しもいいし、1人でも落ち着けていいかな?」と入口側の奥の座敷を案内してくれた。

真ん中のテーブル席には、三本線のジャージにピンク色のTシャツをインした活気のあるおばちゃんが何やらテレビを見ながら「あら〜」など大きめの独り言を呟いている。

席に腰を下ろすと、ちょうどよい風と一緒に蚊取り線香の懐かしい匂いがする。なんだかタイムトリップしたような気分。

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