ライスワーク(rice work)とライフワーク(life work)
「あたしは仕事が楽しくて仕方がないんだけど、そう言うと女友達に叱られるの。趣味を持てって言われちゃうのよ」
とは、知人の年上女性の弁。
「仕事が楽しくて何がいけないの~。仕事の充足感って趣味なんかじゃ、絶対に味わえないじゃないですか」
とぷんすか勝手に憤慨していたのは、数年前のこと。
別の日には
「仕事にはトコトン打ち込めるんだけど、趣味には夢中になれないのよね」
という女性と遭遇し、同じ同じ!と思わず共感。
仕事以外のことにあまり興味がない私には、趣味なんてない。
今の仕事を始めてからずっとそうだ。
たとえ趣味として始めたことでも、これ!と思えば、のめり込んで仕事になってしまう。イラストもかつての帽子もそうだった。
逆に、合わないと感じればさっさと辞めてしまう。
そこそこ楽しみながら「趣味として続ける」ってことが出来ないのだ。
ライスワークとライフワークのバランス
共感しあった相手とは
「ライスワーク(お金のための仕事)とライフワーク(心のよりどころになる仕事)のバランスって大事よね」
という話になった。
私にも、ライスワークと割り切ってやってる仕事と、これはライフワークと思える仕事が明確にある。
だからといって「ライスワークだから楽しくなくてもいい」というわけじゃない。
理想形は、ライスワークの比重をできるだけ減らして、ライフワークを充実させること。けれど、ライスワークを楽しめるなら、いつかライスワークとライフワークが逆転したっていいと思う。
いかにしてライスワークを楽しみ、かつ将来的に自分が行きたい方向へ近づける仕事を積み上げるか。最終的にどこへ向かっていきたいのか。それを決めるのは自分だから。
まぁとにかく、私の周りには仕事の好きな人が集まるってことですね。
ライスとライフのあいまいな境界線
以上のことをFBに書いたら、コメントがいくつかついて、考えさせられた。
私と同じように趣味がなく、活動はすべて仕事になっているという方から「本来、趣味とはそういうもの。職業にしても良いくらい打ち込めるものなのよ」とのこと。
その方は出版社の社長さんで、合唱団に所属し有料でライブ活動を行っている。
趣味と仕事を明確に決める必要はない。あえて分けるなら、本づくりがライスワークで歌がライフワーク。でもどちらも好きなこと。理想形ではありませんか。いいなぁ。
別の方は、仕事の中に趣味(ライフワーク)の部分と道楽(ライスワーク)の部分があり、どちらも対価を受け取っているとのこと。
仕事ごとに完全なライフワークとライスワークに分かれるのではなく、ひとつの仕事の中に、人のための部分(ライスワーク)と自分のためにやる部分(ライフワーク)が混在してるのだそう。
「人のための部分(ライスワーク)が100%」の仕事はやれないというの、とてもよくわかるし興味深い。
趣味と仕事、ライフワークとライスワークの考え方には決まりはない。人それぞれの解釈でいいのだと思う。
さて、私にとってのライフワークとライスワークとは?
最初、私にとってのライフワークはイラストに関わるもので、ライスワークはそれ以外、と単純に分けたけど、それもちょっと違う気がしてきた。
数年経って、さらに仕事の幅も広がったので、ますます単純には分けられなくなってきたように思う。
規準は、利益を無視できるかどうか
その後、ジャンルではなく、あくまでも「自分の気持ちの持ちよう」であることがわかってきた。
私にとっては、儲からなくても気にならない仕事が「ライフワーク」であり、それ以外は「ライスワーク」なのだということ。
だからと言って無償では仕事はしない。プロである以上は、何か特別な際のギフトは別にして、対価は受け取るべきであると考えている。
私にとっての「ライフワーク」は、対価は受け取るけど、儲けは度外視で打ち込めるもの、なのだ。
「自分が楽しめるかどうか」はすごく大事な要素、というか「すべて」と言ってもいいかもしれない。
この世で一番好きなこと
15年前と6年前と昨年、本を出版した。
3冊の本を出してしみじみ感じた。この世で一番好きなのは、本を書くことだということ。
だって、イラストのようにクライアントの意向なんか気にせず、全部を自分の想いや感性で作り出すことが出来るのだ。こんな楽しいことがあるだろうか。
イラストの仕事はクライアントありきで、クライアントのために描くもの。
利益を度外視して自分が楽しめることもあるが「ライフワーク的要素を含んだライスワーク」なのだと思う。
しかし「本を書く」という事は全く違う。自分自身の利益なんて全く考えないからだ。
本を書くのはとんでもなく大変だし、時間もかかる。それなのに、本を書くことは儲からない。
本の大半は初版どまりの昨今、初版の印税だけでは働きに見合わないのだ。それでも、どんなに大変でも本を書くのは楽しい。これぞ「ライフワーク」。
だからこそ、本を書き続けて行ける環境を作り出せるよう、頑張らなくては。それが私が「ライスワーク」をする原動力、なのだと思う。
ライフワークに出会うまで
イラストの仕事を始める前は、自分は仕事に打ち込む様な人間ではない、と思ってきた。
会社員だった頃は、就業時間内はみっちり働くけど、時間外には一切仕事はしなかった。当時の私にとって、仕事とは、プライベートを楽しむために仕方なくやるもの、だったのだ。
それは、本当に打ち込める仕事に出会ってなかっただけとも言えるし、そんなに必死に仕事をしなくても、生活してこられたとも言える。
どちらが幸せかと言えば、やっぱり仕事に打ち込む楽しさを知った今だ、と私は思う。
だけど、感覚は人それぞれ。
「仕事が一番楽しい人生が正しい」なんて、もちろん言わない。
仕事は就業時間内のライスワークとしてスパッと割り切る。プライベートはトコトン充実させるという生き方も、アリだと思う。
ライスワークだのライフワークだのややこしいし、そんなメンドクサイことは何にも考えずに、ひたすら楽しく生きるのも幸せだよね。
今の世の中では、もしかしたら、それこそが究極の贅沢な生き方なのかもしれない。