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「ごめんね」を心から言えるまでの育ち

トラブルの場面は子どもに関わるお仕事をしていると必ず出会います。
よく、「どう反省の気持ちを導くか?」や、「相手の気持ちを理解させるためには?」という相談があります。

大人が謝罪や反省を感じさせることに熱心になってしまうと子どもは心から反省せずに、その場を終えようとして「ごめんね」と言うようになってしまいます。
この形式的な「ごめんね」を作らないためにはどうしたらよいのでしょうか?

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まずは発達段階をとらえながら考えましょう。

年齢別の心の育ちと大人の関わりへのアドバイス


<0歳児>

・まだ感情の育ちが「快」「不快」というような細分化されていない状態です。罪悪感などはまだ育っていません。
・相手の意図もまだ行動や言動から掴みにくく、自己中心性のある情緒発達段階です。相手の気持ちを代弁して伝えても、理解しにくいです。

大人の関わり 

◎まずは本人の気持ちを代弁して共感してあげましょう。たくさん共感されてもらう経験から、後に相手の気持ちを受け止められる情緒発達を獲得します。引っ掻き等の危険が予想される場合は物理的に距離をとりましょう。
◎大人が代わりに謝る場面を見せましょう。模倣が発達した時に、自ら謝ることが出来るようになります。

<1歳児>

・言語の発達は著しいですが、意味を理解して使っていることとは少し違います。表面的な目に見えるものの意味は理解しても、見えないものや相手の気持ち・暗黙の了解などはまだ理解しにくい年齢です。表情は読めても理由がわからないことがあるため、なぜ、相手が怒ったり泣いたりしているのか教えることで少し理解できるでしょう。
・何がいけなかったか、言葉で伝えると大まか(全部ではありません)にわかる年齢です。

大人の関わり
◎大人は感情的にならずに、子どもの気持ちに共感しながらもどう行動するべきだったかを教えると良いでしょう。
◎素直に謝れない時期でもあります。突き放した関わりをせずに、「一緒にごめんねしようか」と大人と一緒に謝る場面に参加させてみましょう。もちろん無理強いは良くなりません。やりたくないと言ったら、0歳児への関わりと同様に謝る場面を見せてあげましょう。
◎「あやまってやったのに!」等の捨て台詞も大人はガマンです…反省している子ほど素直に謝れずに泣いてしまうものです。

<2歳児>

・相手が泣いたら「ごめんね」と言えばいいんだ!という理解はついてきてます。しかし、自我が強くなり素直に謝れない年齢です。感情が細分化し「恥」も感じますし、承認欲求も高い子がほとんどです。
・思い通りにいかないと癇癪を起しやすい年齢です。自制できず興奮、ヒートアップしやすいのでご注意を!
・まだ直接的な言葉で伝えないと相手の気持ちを察しにくい年齢です。

大人の関わり
◎相手と意思の疎通が取れず、更にトドメの一撃が出る可能性があるので 物理的に話しながら仲介しましょう。
◎泣いて「ごめん」の一言が言えない子もいます。その気持ちは「なかなか言えないね、一緒に言う?」等と受け止めてあげましょう。
◎相手の気持ちは代弁して伝え、どちらの話も聞いて双方への理解を促しましょう。

<3歳児>年少さん

・このころから簡単に「ごめんね」という子も出てくるでしょう。
・何が悪かったか自分なりに行動を振り返って理由を話せる年齢です。
・衝動性がまだ高いので、自分でも自分を止められません。わかってても手や口が出てしまいます。しかし、3歳児後半になると自分のしたことを振り返って罪悪感を感じられる年齢です。

大人の関わり
◎振り返りや代弁をすべてしなくとも、自分で考えられる子もいます。発達に合わせながら反省度を見て叱らなくとも良い場面もあることを理解しましょう。悪いことをしてしまった本人を突き放したりせず、逆にスキンシップをとって「ちゃんと反省できたね」と認めてあげることも良いでしょう。
◎「許さない!」と言われてしまう場面も出てきます。その時には「すぐには嫌な気持ちは消えないんだ」と相手の気持ちを代弁しつつも、”「ごめんね」を言ったから言わない時よりも仲直りが早くなるかもね”と言って謝ったその行動を認めてあげましょう。
◎「えらいね」と褒めるのは大人が上の立場に立った言い方です。日頃から評価するような言葉は避けましょう。評価を気にした行動を取らせることを誘発します。

<4歳児>年中さん

・言葉が巧みになって、言い訳も上手になります。本心と裏腹なことも言えたりします。
・協調性が高まり、仲間意識が高くなります。そのため、友だちに対し指摘することも増えます。
・少しずつ暗黙の了解や、見えないルールの理解が増します。相手の気持ちもなんとなく察することが出来ます。
・心理的な自己防衛力が高まり、嘘をつく子も出てきます。

大人の関わり
◎本心と違うことを言って気を引いたりすることも見られます。指導場面では言葉の意味だけをとらず、その子がその場面でどんな欲求があったか察してあげるのが大人の役割です。
◎自分の気持ちを自分で言える子とそうでない子の差が出てきます。言える子が優位に立ちやすいので大人がキチンと仲介役になって中立の立場になるようにしましょう。
◎相手の気持ちを察することが出来るようになってきていますが、勘違いも多い年齢です。勘違いは優しく訂正し、その場で理解できなくとも伝えてあげることが指導場面になります。
◎喧嘩が1対1でなく、2対1になったりする場面が多くなります。友だちとかかわるのが苦手な子が負にならないようにしましょう。また、何もわかっていないのに優性側同意する子には、その行動がよくないことをきちんと伝えましょう。(←これ大事です)
◎嘘は叱らず、嘘をつかなくても済むような環境を与えましょう。嘘をつくということは関わる側の人間との信頼が薄い証拠です。間違っている場面でもその子の気持ちを受け止めながら関わりましょう。好きで嘘をついているわけではないのです。嘘をつく方も傷ついているのです。

<5歳児>年長

・自制心が高まり、子ども同士でのやり取りが成立します。
・自己形成視(自分を客観的に見ること)が生まれます。

大人の関わり
◎仲介役というよりも見守りをして、子ども同士で自分の言葉でやり取りできる場面を提供しましょう。
◎「Aくんは△△っていったから■■と思ったんじゃないかな?」と問いかけるように話すことで自分で考えたり、想像し振り返ることが出来ます。
◎うまく話せない子にはきちんとサポートしてあげましょう。言葉巧みな子が優位に立たないようにします。

学齢期

学齢期になるとだいたい年長と同じような関わりを発展させてあげると、自分たちで思いを話せるようになるはずです。見守りをしながらも、相手の気持ちに気付ける手助けをすると良いでしょう。しかし、手を出てしまうこともまだみられるので物理的な距離は必要です。また、周囲の目を気にするようになる気持ちが高まる中で「かっこ悪いから」「みんなにどう思われるか」など気持ちの複雑化が顕著にあらわれます。決して集団の前で指導するようなことが無いようにお願いしたいです。

何度か出てきた感情の育ちについてはこちらの本で勉強させていただきました。

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史上最強図解よくわかる発達心理学 [ 林洋一 ]


心理の勉強をしたことのない私でもとってもわかりやすくて何度も読み返していますよ。
とってもおすすめなので、施設に1つ!と言いたいほど(笑)


また、児童精神科医の佐々木正美先生のブログにも少し似たようなテーマのページがあります。是非そちらもお読みください。

子どものトラブルを落ち着いて対応した後は、大人が心に蓄積するものを抱えています。子どもがいないところで上手に愚痴を吐いたり、発散させるためには良好な人間関係・コミュニティがなければなりません。子どもを怒らないためにも大人にとっての安らげる人間関係が必要なのです。

お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。