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素描

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今だけ

今だけ
ちょっとだけ

みを捨て
なを捨て
よを捨て

解かれ放たれ

倒れた壺の
だらりと疲れたシロップで

つるりと綺麗なテーブルの上を
じわりぶかりと浸蝕しながら
堕ち滴れる

その申し訳なさに

死のう

音楽

音楽

この世界のどこかに
音楽が鳴っていることで

とてつもない幸せを感じる時と
とてつもない不幸せを感じる時がある

そのままで

そのままで

動かなくていいよ
そんなに苦しいなら
歩かなくていいよ
ただ自分を抱き締めて

泣けばいいよ
川が流れて
楽になるまで
休むがいいよ

いつか必ず楽になる
その時までは苦しくて
胸掻きむしってもそれでいい
雨が降ったら明日は晴れる

鈍(にび)が来た

鈍(にび)が来た

にびが来た

フランスの革命記念日で
私が「鈍色の」を書いた日に
見つけてもらったそうだ

まだ6週間ぐらい
人間で言えば乳飲み子である
こんなちいちゃな子を捨てる神経が
皆目わからん

小さいけど元気で甘えた
最初にママ認定してくれたので
私がいなくなると1秒で
沸騰しっぱなしのピーピーケトルと化す
二階建ての家のどこででも聞こえるレベルだ

だけどママさえいればいいらしい
ママがダメならパパで

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絶望

絶望

絶望の底を見てる
昨日からずっと

日が変われば楽になるとか
思ったけど戯言だった

吐き出せもせず
浮き上がれもせず
昨日からずっと
同じ風景を見てる

いつか上見れるのかな

こんな時はとことん
底を見るのがいいと
教えてくれた人がいるけど
底を見続けるってそれなりに辛い

今度も耐えれるのかな

絶望って全部奪うよね
楽しいことも
楽しいと感じる心も
楽しもうとする気も
楽しかった過去も

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鈍色の

鈍色の

鈍色(にびいろ)の空という
言葉に出会ってから
ずっと探していた
鈍色の空

あれは重すぎ
それは軽すぎ
鈍くないし
鈍重では馬鹿みたい

そんな風に吟味して
毎回曇り空を眺めていた

失礼なことだ
曇り空にだってそれぞれ味があり
言い分だってあることだろうに

そもそも雲の上であれば
いつでも気持ちの晴れ渡るような晴天だ
そもそも曇り空を
吟味することもできない

50を過ぎてふと想う
鈍色とは

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足掻く

足掻く

何気なく水にさしておいたミントが
今日花をつけた

葉が落ちて
ぼろぼろで
もうそのまま枯れてしまう
そういうことを選択したみたいな
細い枝のミントが
花をつけた

水しか入ってない大地に
それでも足を伸ばして
何かを取ろうと踠くように
枝の縁から小さな根をたくさん出して
とうとう花までこさえた

足もない癖に
足掻く根性は私より数十倍強かった

あんた、すごいな

もう少し頑張ってくれたら
直に

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