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"勿体ない離職"を減らすために今日から出来ること

私は従業員数数万人(連結)の住友商事から、従業員100人台のセルソースに移り、「働き方」や「カルチャー」など多くの点での「違い」を目にしてきました。

一方、「退職に至るプロセス」はあまり変わらないと感じており、そして周囲の退職者にヒアリングしても、ほぼ似たような回答を得てきました。

それらを踏まえ、私の中で「退職」というものに対する一つの「解」のようなものに辿り着いたので、今回はそんなお話が出来ればと思っています。


そもそも「退職」「離職」をどう捉えるか

プロセスの話に入る前に、「退職」や「離職」についての考え方を整理しておきたいと思います。

①新陳代謝は必須=離職率は低ければいいわけじゃない

プロノバの社長で、ユーグレナやマルイの社外取締役を務める岡島悦子氏は、著書「40歳が社長になる日」で「離職率が3%とかの会社はやばい」と述べておられますが、私もそう思います。

これは簡単な算数の話で、たとえば3%, 5%, 10%, 20%の離職率の会社における「5年後・10年後の残存率」は以下の通りになります。

離職率3%:86%, 74%、離職率5%:77%, 60%
離職率10%:59%, 35%、離職率20%:33%, 11%

離職率3%だと、10年後にも4人に3人が残っています。

仮に『100人からスタートし、毎年10人ずつ雇っていった』としても、10年後の社員151人のうち「5年選手」は114人。75%に及びます。

こんなに古株社員が残る会社は変革も起きず、寧ろ「正当化バイアス」が加速し、会社は確実に衰退します

ただ20%まで行くと、10年後には10人に1人しか残っていません。これはこれで、余りに無駄が多すぎて逆に生産性が下がってしまいます(そもそも採用Feeに会社が耐えられないかも)

なので、私は「離職率10%」が健全ラインだと思っています。5年で1/3が入れ替わり、10年で2/3が入れ替わるくらい。

ここの考え方は人それぞれだとは思いますが、少なくとも「離職率が低ければ低いほど良い、ということは全くない」という考えだけは示せればと思います。

②「退職」「離職」は全く一括り出来ない

(当たり前の話ですが)「退職」にもいくつものパターンがあり、一括りにして考えると、その分析が逆効果に陥ることすらあります。

例えば、「本人が会社に対してポジティブかネガティブか」「会社が本人に対してポジかネガか」という単純4象限で考えてみます。

上の表で見てみると、「ポジ×ポジ」「ネガ×ネガ」の退職はどうしようもありません。

「ポジ×ポジ」でやめるという事は、「絶対にやりたいことが他にできた」とか「家庭の事情」などが原因でしょう。また、「ネガ×ネガ」の場合は転職した方が、社会/会社/本人全員が幸せになるはずです。

勿論、前者で言えば「そのやりたいことを会社で叶えられなかった」、後者は「そもそもの採用ミス」といったことが遠因ではあるので、PDCAを回すポイントもあるでしょうが、それをやっていたらキリがありません。

HR担当者が悩むのはそこではなく、上記の「ミスマッチ退職①・②」のケースでしょう。

これは「情報の非対称性」や「期待役割と能力のミスマッチ」、「一時の感情」といった「ズレ」によるものである可能性も高く、それらが修正されれば「ポジ×ポジ」に行けた/行ける可能性があるからです。

この「ズレ」の修正確率をどうやったら高められるか、が今回の本題です。

社員は"一球"しか投げてくれないと思え

社員は「この環境には耐えられない」と思ったり、とある事態に対して「強めにイラっと」した時、それを伝えてくれることがあります。

ですが、伝えてくれたとしても、今の人達は年齢関係なく「一回言っておしまい」になるケースが増えています。それはなぜでしょうか。

①転職経験も多く、"Place"に対する執着がない

私はHR責任者ですので、多くの履歴書を見る機会がありますが、今の勤務先が「1社目」「2社目」であるケースは本当に少ない

また20代で「1社目」だとしても、学生の時にも起業していたり、通年インターンをやっていたりしているので、「ここに長く勤めたい。勤めなければ」のようなPlaceに対する執着がありません。

②多様な経験を積んでいるので、恐怖心もない

①と被る部分もありますが、転職のみならず、色んなチャレンジをしてきた人が増えているので、昔の20代・30代が持っていたような「新しい世界に行くことに対する恐怖心」のようなものもかなり薄れています。

③新しいチャレンジが「カッコイイ」という価値観

私の前職で「ベンチャーに転職を決めたが、娘の結婚式までは部長でいたいので、転職日を後ろにズラしている」という人がいました。

この価値観を理解できる20代・30代は本当に少ないと思います。逆に「50代で住商からベンチャーに転職した親父かっけー!」の方が多いのではないでしょうか。「価値観」そのものが全く変わってきていると感じます。

こういった背景から、「理解してくれるまで何度も言おう」とはならず、「一回言ってダメだったらもういいや、次いこ」となるのは自然なことだと思います。

これは決して「無責任」なのではなく、「自立した生き方をしている」ことの表れであり、僕は全く悪いことだと思いません(役職・役割によっては無責任になるけど)。

どんなボールでも打ち返す。でも、それは「提案」の時だけ

分かりやすいボールが来るとは限らない

私は前職で「尖りサロン」を作って有志100人と活動したり、90頁の論文を書いて社長に送ったりと、めちゃ目立つことをやっていたので、私のボールには誰でも気付いたと思います笑

ですが、人によっては球種がストレートではなくスライダーだったり、スローカーブだったり、「凄い分かりづらい」こともあると思います。例えば、

①Slackで問題提起する
②1 on 1で言い辛そうに意見を言う
③自分の凄い近い人間に対して、提言する

これだと気づかなかったり、「また今度ちゃんと言ってくるだろう」と思って忙しさを理由に対応しなかったりすることがあると思います。

でも、相手にとってはそれが「精一杯の一球」かもしれません。そうだった場合、もう次はありません。

ここで「そんな分かりづらいボールを投げるような奴はいらん」と思ったかもしれません。ですが、そうさせているのは貴方かもしれません。心理的安全性が失われているかもしれません。

「一球しか飛んでこないかもしれない」という緊張感を常に持ち、ワンバンのフォークボールだろうが、敬遠用のウエストだろうが、「まずは全部打つ」気持ちを持つことが重要だと考えます。

「不満に気づけ」ではない

ここで絶対に間違ってはいけないのが「モチベーションDOWNの予兆に気付け」とか「不満に気付け」ではない、ということです。

ただ不満を持ち、ただやる気をなくしてる所を全て拾っていたら会社は成り立ちませんし、そういう人が大化けすることもありません。

「形を問わず"提案"という名のボールを投げてきたら、絶対に一球目で対応する」

これが、本日お伝えしたかった「互いに不幸な離職を減らすために出来ること」でした。

「ボールを打つ」時に必ず気を付けること

部下のファーストストライクに気付けた!

その時にやりがちなマネージャーの行動は「盲目的な肯定」。大事にしているメンバーや、普段意見を言ってこないメンバーの提案は、受け入れてあげたくなってしまうのが普通です。

ですが、ここでやるべきは「傾聴と承認」だけ。肯定は本当に納得した時だけで大丈夫です。

「承認」についてはこちらの記事に譲りますが、承認が何より重要で、それをすっ飛ばして肯定しても、何も生まれません。

まずはしっかり聞く。そして、言ってくれたことに対する感謝を伝える。そして、議論をする。

この3STEPが出来れば何の問題もありません。是非、ホームランにしてください。

終わりに

こう書いていて、自分は出来ているかなと自問自答してみると、やはり「正当化バイアス」を働かせていたのか、打ちこぼしているボールがあるなと感じました。

それはまさにメンバーに対する甘えであり、自分に対する甘えです。

役割が役職が上がれば上がるほど、緊張感を持って過ごす必要が出てきますが、それを当たり前に出来る自分になりたいと思いました。

では、また来週お会いしましょう!

細田 薫


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