骨格筋の機能と分類

筋の機能と分類
筋肉系は、運動指導者やセラピストにとって解剖学の中心的な存在です。筋肉の生理学的特性を知れば知るほど、正しい筋コンディショニングは、加速します。

筋肉は体重の35~50%を占め、含水分率は75%です。
総数は約400種650個、そのうち骨格筋は約500個(錐体筋などは欠損することが多い)あります。
因みに、ゾウは鼻だけで10万個もの筋肉があるため、スパゲッティーも掴むことができます。


筋肉の遺伝子の数は、全身のDNA2万個中6,347個です。
ヒトの筋タンパク質の半減期は、約180日とされています。


分類
筋肉には、様々な分類方法があります。

筋肉は、解剖学的には骨格筋心筋内臓(平滑)筋および血管(平滑)筋の3つに分類することが可能です。

また、組織学的に分類すると、骨格筋と心筋は多核の横紋筋で、内臓筋は単核の平滑筋になります。

機能的には、意思により収縮が自在の随意筋と自らの意志で収縮がコントロールできない不随意筋の2種類に分類できます。


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筋・筋肉系:骨格筋の分類と特徴
骨格筋は、関節など骨格の可動部を動かす筋肉です。
骨格筋は、人体の中で最も大きな器官系であり、その総量は体重比で成人男性の平均42%、同女性の平均36%を占め、全細胞体積の約89%を占めます。
哺乳動物の骨格筋の密度は1.06kg/ℓであり、同体積では脂肪よりも約15%重さがあります。
20代をピークに徐々に減り始め、65歳以降から減少速度が加速し、80代にはピーク時の30~40%台にまで減少すると言われています。


機能

1. 運動作用
骨格筋の筋収縮により、筋が付着する骨を動かします(例外 括約、散大)。
絶対筋力の強さは、体積に比例すると言われています。
絶対筋力は通常6~8(2~17※)kg/㎠程度ですが、トレーニングをしている人は10kg/㎠以上の絶対筋力を発揮する場合もあります。数値には報告により、かなり差があります。

2. 姿勢保持
抗重力筋の筋収縮により、立位姿勢を維持します。

3. 熱源作用
体内の熱産生を起こす諸因子には、『非ふるえ熱産生』と寒冷時に起こる『ふるえ熱産生』とがあります。

(1) 非震え熱産生
骨格筋が全体熱産生の60%を占め、次いで褐色脂肪細胞・腎臓・肝臓の順で続きます。
全エネルギー産生(=エネルギー消費)のうち、力学的仕事の占める割合を「熱効率」といいます。筋肉の熱効率は30%程度で、残りの70%は熱産生に使われます。

(2) 震え熱産生
全ての恒温動物は、寒冷環境の中でも細胞機能や生理的プロセスを継続するため、体温維持のための熱産生を行っています。
視床下部が低温を感知すると、交感神経活性化を介して、褐色および白色脂肪組織にノルアドレナリンが放出されます。これがβ3アドレナリン受容体を活性化し、ノルアドレナリンは白色脂肪組織で脂肪分解を起こすと同時に、褐色脂肪組織で熱産生遺伝子を活性化させます。
使用されるエネルギーの75%以上が熱として放出され、体温を上昇させます。

4. 筋ポンプ作用
骨格筋の収縮と弛緩の繰り返しにより、静脈・リンパ管を圧迫して還流を促進します。

5. 保護
骨格筋が衝撃から骨や内臓を保護します。

6. 内分泌作用
脂肪の分解を促進および脳の神経細胞の減少を抑制(「ミオカイン」インターロイキン-6〈IL-6〉)します。

7. 器官系の出入り口の開閉
骨格筋の随意運動により、嚥下・排便・排尿をします。
骨格筋の分類
骨格筋には、様々な基準による分類方法が存在します。
それぞれの基準によるグルーピングを理解することで、骨格筋の全体像が見えてきます。


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