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人気がなくなりつつある教師という仕事

教師が足りない

教員採用試験の倍率が低下しています。先日、茨城県の教員採用試験の志願者数が定員900人に満たないわずか600人だったというニュースがありました。ここまで教員採用試験の定員が割れる可能性が出てきたのは私が知る限り初めてです。

また、2021年4月1日の年度始めに教員定数(学校ごとに最低限必要とされる教員の数)を満たせずに欠員が出ている学校は、文科省の調べ(2022年1月発表)で1897校、2558人に上ることがわかりました。その内訳は、小学校の先生が1218人、中学校の先生が868人、高校の先生が217人、特別支援学校の先生が255人、足りていなかったそうです。担任が不在のまま4月に学校が始まるケースはもはや珍しくはありません。

教師で働き続けるにはやりがいだけでは厳しい

学校の先生という仕事はとても魅力的な仕事です。私は心底そう思います。なぜなら、子どもたちの成長を支え、その頑張りを間近で見ることができるからです。また、仕事内容も自分の好きな教科を教えることができるので、自分の特技を活かすことができます。非常にやりがいのある仕事です。

しかし、問題なのはその労働環境です。学校は仕事量が多すぎるのです。子どもたちと関わる時間は、仕事の4割ほどしかありません。残りの半分以上は、会議や書類作成などの事務仕事に追われます。

小学校では担任が多くの授業を担当しつつ学校行事の準備や事務仕事を行うので非常に多忙です。また、中学・高校では、授業はせいぜい仕事の3割ほどで、部活動がそれ以上の大きなウエイトを占めています。教科を教えるために教員になったのに、未経験で指導すらできない運動部部活動顧問を押し付けられることもあります。その場合には、勤務時間が過ぎても生徒の安全配慮義務のために部活を見ていなくてはならず、部活が終わってから夜遅くまで仕事をして、ようやく帰宅する、という働き方になってしまいます。そして、休日も無くなり、月の超過勤務時間が80時間を超える状態が何ヶ月も続くことは珍しくはありません。最悪の場合、病気になって教師を辞めざるを得なくなることも起こります。

雇用する側の問題

年度末では、教員定数(学校ごとに最低限必要とされる教員の数)を満たすために、教育委員会の方々が必死に免許をもつ人を探しています。教育委員会の方々が探しているのは、非正規雇用の講師や非常勤講師の成り手です。

非正規雇用の講師や非常勤講師は、多くは、教員採用試験に受からなかったが教師を目指している人にお願いすることが多いです。非正規雇用なので契約は1年のみです。来年度以降の契約があるかどうかは分かりません。また、正規採用された教諭と同じかそれ以上の仕事をこなす一方、賃金は教諭よりも低い傾向にあります。講師や非常勤講師は、雇用の調整弁として必要とされています。不安定な立場なのです。

誰も好き好んで非正規雇用で働こうとは思いません。一昔前の教職が人気だった時代ではそれでもよかったでしょう。しかし問題なのは、雇用する側が時代が変わっても殿様商売であることです。

世間の認識

『教員をしている』と言うと必ずと言っていいほど、『大変ですね』と言われるようになりました。

一昔前は先生なんて夏休み冬休みなど休んでばかりで楽だろう、などと思われていたようです。最近はメディアでも教員の長時間労働や学校や抱える問題が頻繁に取り上げられるようになりました。教員=大変な仕事、割りに合わない仕事、という状況が世間に周知されつつあるためだと思われます。

このままだと…

教師の担い手が足りない状況は決して良いことではありません。必要な先生が確保できていないのに4月を迎えてしまった学校では、生徒が授業を受けられず自習の状態が何ヶ月も続く、という場合もあります。

本来なら当たり前のように学校の授業で学べたことが、今の子どもたちはある日突然できなくなることが起こっています。教える人がいなくなりつつあるからです。そのせいで、未来を担う子どもの学ぶ機会が奪われつつあるのです。

教師の不足は労働環境の悪化による教職への敬遠が大きな理由と考えられます。教員の労働環境の早急の改善を強く求めます。

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