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ブラックな部活顧問制度で苦しむ教師

教員はブラックな職業です。どんな点でブラックなのでしょうか。ここではそのブラックボックスを開けてみましょう。


時間外労働の報酬はやりがいのみ

教員の勤務時間は8:15-16:45、または8:30-17:00です。しかし、運動部などの部活動では、教員の勤務時間以降も何時間も練習しています。そこでは、顧問が付き添い、指導していることも多いです。また、生徒が活動している以上、顧問は帰宅することはできません。しかし、定時以降の平日の部活動指導には一切金銭的報酬は出ていません。残業代の出ない超過勤務時間なのです。

なぜなら給特法という法律で、教員には一律4%の残業代しか出さなくて良いことになっているからです。時間外労働が80時間になっても、基本給の4%のみです。そのため、教員には膨大な仕事量を振ったり、長時間の時間外労働が必要な部活動をやらせても、コストが全く掛かりません。行政にはお金の負担がかからないので、『教員を定額で長時間働かせる』ことが最適解になってしまっている状態です。

運動部顧問になると土日も一日中活動で休みがない

学校の昔からの伝統だったり、土日には連盟のリーグ戦が強制的に入れられていたり、保護者からの要望だったり(管理職は一部の保護者からの要望にとても弱い)、管理職が高体連・高野連などの役員だったりなどするために、部活動の練習時間を減らして働き方改革などをすれば非難轟々で学校内での立場が悪くなります。そして、報復人事をされたり、嫌がらせをされたり、校務分掌(学校内の仕事)に関して他の人の倍の負担にされたり、など不利益を被るために、なかなか顧問自ら部活動を変えていくのは難しい現状があります。

労務管理無しで若手に重くのしかかる業務負担

若手には、ベテランが持ちたがらないほどの大変な部活動顧問が管理職によって振られる傾向にあります。若手は、まだ仕事が分かっておらず他の先生に仕事について教えてもらったりする立場にあります。立場が弱く大変な仕事でも断りにくいのです。また、赴任したばかりでその部活動の内情を知らされぬまま、『来年度来る人に持たせるしかもう他に手が無い』と管理職が嘆くようなきつい部活動顧問を若手はもたされることも頻繁にあります。結果、土日にほぼ無給の部活動顧問を強制されることで、若者の教職離れの原因の一つにもなっています。

ブラックの極めつけは部活動顧問

教員がブラックである原因の第一位は部活動です。部活動顧問になれば、様々な場面で自腹を切らせられて、さらには土日の休みが一切なくなることもあります。生徒や保護者から馬鹿にされることもしょっちゅうです。

顧問は校務分掌の一部なのに経費は自腹

部活を指導をするために必要な用具、生徒の大会引率に必要なウェアやシューズ、そして、協会や連盟登録費用など、部活動に関わる経費は原則教員の自腹です。協会や連盟登録費用などは、生徒が大会に出場するために監督や指導者章が必要なため、必須です。しかし、予算措置は全くありません。そのため、毎年顧問の先生は、自腹を切って日本連盟や県連盟などに登録料を支払っています。また、チームスポーツの場合は、顧問は審判も任されることがあります。この審判をするのに必要な用具やウェアや、審判登録費用も自腹です。部活動顧問を希望しないのに割り当てられて、『生徒のため』と生徒を人質に取られて渋々登録費などを払わされている顧問は多いと思います。

テニス部顧問なのにテニスをやったことのない先生

『なんでテニス部顧問なんかをやっているの?』『顧問は先生がやりたくてやってるんじゃないの?』『仕事なのに、素人ってどういうこと?』『ふざけてるの?』『やる気がないの?』

小見出しを読んで、おそらくこのような感想をもつ方が多いのではないでしょうか。しかし、学校の顧問は適材適所で任されているわけではないのです。ある学校に先生が30人いたとして、部活は大体10〜15位の種類があります。その全ての種類の部活の経験者を配置できるようには人事は動いていません。指導に長けている教員を配置できたのならそれはたまたま幸運だったのです。実際には、『卓球経験者なので同じようなスポーツのテニス部顧問に』『野球経験者なので、体力はあるからバレー部顧問』『若くて長時間労働できそうだから、毎日長時間練習のあるバスケットボール部顧問』などのような配置になってしまっています。特に、若手や初任、非正規雇用の講師の先生には、ハードな部活顧問が充てがわれる事が多いです。なぜなら、発言力のあるベテランにそれらの顧問が敬遠されて、立場の弱い若手が押し付けられる構図になっているからです。

素人が指導をせざるを得ない状況を合理化するために、上がよく使う手は『生徒と一緒に学ぶ姿勢を』です。ですが生徒にとっては、競技経験のない素人顧問が一緒にやってたりトンチンカンなことで口出ししても邪魔なだけ、という場合が殆どでしょう。このような場合、生徒も教員も不幸です。

文科省の調査によると、経験者が顧問をしているケースは5割ほどだそうです。学校側も、最適な人材がいなくて困っているのです。ですが、そんな事情は保護者には関係がありません。素人顧問は、学校への不信感を与える結果にもなってしまっています。

未経験部活はつらい

私の経験談です。部活動顧問になると、本来休みだったはずの日が、部活を見ているだけで終わりました。未経験素人が顧問を任された場合の悲惨さは身を持って体験しています。一日中自分の未経験で興味のないスポーツを見ているだけで何もできずに終わるからです。屋外なら日照りにやられてかなり体力を消耗しました。素人なので、生徒に指導しようにも引き出しが殆どありません。しかし、安全配慮義務があるために、生徒が活動している時間は顧問が付いていなければなりませんでした。ただ見ているだけで時間が過ぎていきました。

そして、一日部活につきっきりで疲れ切っても、次の日からはまた仕事でした。授業の準備はろくにできていませんでした。それが数ヶ月続いたのでした。少なくとも私には非常に苦痛でした。

保護者から心無い言葉を浴びせられることも

保護者の中には、素人なりに時間とお金と身を削って頑張っている顧問に対して、厳しい言葉をかける方もいます。

部活動の目標=勝つこと、が当たり前だと思っている保護者や、部活動に技術向上や部活動での成績による進学などを期待している保護者にとっては、素人顧問は『大外れ』でしょう。

悲しいかな、部活はブラックです

『学校の先生=部活動顧問』これが今の学校の現状です。そして、若手にはハードな部活動顧問がもれなく付いてきます。部活動顧問が教員の大きな負担になっていることは間違いありません。賃金の面や労働時間の面で、かなりのブラックな仕組みになっています。別の言い方をすると、教員という労働力を搾取する構造になってしまっています。

授業を頑張ろうと思っても、平日も休日も部活でへとへとになり、授業は二の次三の次になります。教材研究は満足にできない、何もできない部活顧問で殆どの時間をもっていかれる、休みはない、というような状況も珍しくはありません。こんな状態は『分かりやすい授業をしたい』『専門科目を教えたくて教師になった』という方にとってはストレス以外の何物でもありません。

このままの状態では、教職不人気に拍車をかけ、教員が若者に敬遠される職業として定着し、学校の人材が大幅に足りなくなってしまいます。具体的には4月になっても学校に授業を担当する教員が十分いなくて、学校が機能しなくなるのです。教育崩壊です。そうなる前に、この仕組を変えていかなければならないのです。

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