立ちすくむ人
夢で悲しいことがあっても、僕は泣いたりしません。
自分の中で夢と現実の区別が、ついているのだと思います。
夢が現実を壊すことはありません。
夢は夢、現実は現実、別のものだからです。
僕は本当に、この世界の中に存在しているのか、時々わからなくなることがあります。
現実の世界は、ありえないくらい不透明で、一瞬先のことも予想できません。
「ああ、困った困った」と頭を抱えているうちに、時は過ぎて行くのです。
起きたことは、みんな幻に感じて、自分がいつから、この場所に居たのかさえ、思い出せなくなることはありませんか。
この現実こそが夢ではないのか。
そう考え始めた時から、僕が自分のために涙を流すことはなくなりました。
人はこうして、夢と現実をさまよいながら人生の終焉を迎えるのでしょう。
少しずつ確実に。
誰ひとり残らず。
それを恐怖と呼ぶなら、不幸でしかありませんが、それを奇跡と呼ぶなら、幸せでしかありません。
ここに自分が生きていることを、誰かの記憶にとどめてもらう。
今が夢でないことを、自分が自分に証明する。
夢と現実の狭間で、いつも人は立ちすくむのです。
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