東田直樹 (ひがしだなおき)

作家。代表作は「自閉症の僕が跳びはねる理由」 2022年9月29日に河出書房新社から アンソロジー「from under 30 世界を平和にする第一歩 (14歳の世渡り術) 」が発売です。

東田直樹 (ひがしだなおき)

作家。代表作は「自閉症の僕が跳びはねる理由」 2022年9月29日に河出書房新社から アンソロジー「from under 30 世界を平和にする第一歩 (14歳の世渡り術) 」が発売です。

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    練習すればするほど僕の音読がへたくそになる理由

    こんにちは、東田直樹です。 2月11日に開催されたKADOKAWAセミナーにご参加くださった皆様、どうもありがとうございました。 僕の発表は、途中からグーグルの音声読み上げ機能を使用する予定だったのですが、最初うまく使えませんでした。 思いがけないことが起きると、僕は人一倍大騒ぎしてしまいます。 このようなとき、僕が何を考えているのかというと何も考えていません。 何も考えていないというより、何も考えられなくなるのです。 どうしたらいいのだろうということさえ思い浮かばず、

      • 「ローマ字打ちって教えるのが難しいのでは」と思っている人へ

        こんにちは、東田直樹です。 僕は、文字盤ポインティングやパソコンで自分の思いを伝えています。 話そうとすると頭の中が真っ白になってしまうからです。文字盤を見ながら自分の言いたかった言葉を引き出しています。 僕の使っている文字盤は、パソコンのキーボードと同じ配列のアルファベットが書かれている画用紙です。ローマ字打ちをしています。   ローマ字打ちですが、ハンディがある人には教えるのが難しいのではないかと思われている方もいるかもしれませんが、僕は「ひらがな」がわかる人で

        • 2023年2月11日オンラインで登壇します

          こんにちは。作家の東田直樹です。 このたびオンラインで登壇することになりました。ご興味のある方にご参加いただければと思い、noteでもお知らせすることにしました。 2023年2月11日(土)14時~15時30分 (終了時間は延長されることがあります)  KADOKAWAセミナー オンライン特別イベント Zoom 「30歳の自閉症者の僕が伝えたいこと」 作家・東田直樹 + 母・東田美紀  東田直樹「自閉症という障害が僕に教えてくれたこと」 東田美紀「話せない自閉症者に言葉を

          • 変えられない状況の中で変えられるものは「思考」

            明日という日を心待ちにできる人は幸せな人です。 行きたい場所があったり、楽しみな計画があったり、自分が必要とされていることや幸福だと感じることがあるおかげで、人は生きていてよかったと思えるのでしょう。 僕は「障害があってもなくても、人は努力しなければいけないし、努力の結果幸せになれることがわかった」と以前書いたことがあります。 障害があれば、普通の人がしないような苦労をしなければいけないのは事実だと思います。 障害があるせいで生きづらさを感じたことのある障害者は多いです

            青空が顔をのぞかせた

            青空が顔をのぞかせた 「いいお天気だね」 僕が声をかけると 青空は きらりと輝いた こんな晴天は久しぶり そう思うだけで笑顔になる 5月の空は緑とよく合う どこにでもある葉っぱの一枚一枚が これ以上にないくらい美しく見える 青空が顔をのぞかせた 「いいお元気だね」 僕が声をかけると 青空は ぴかりと輝いた こんな晴天は久しぶり そう思うだけで恋しくなる 5月の空は花とよく合う その時にしか見ることのできない花びらの一枚一枚が これ以上にないく

            映画「僕が跳びはねる理由」を映画館で見ました。(その3)

            見た目の自閉症者の様子と心の中が違うなら、簡単には想像できないのではないかと考える人もいるでしょう。 見た様子のままの感情のときも、もちろんあると思います。けれど、いつでもそうだとは限らないのではないかと僕は言いたいのです。 誰だって、笑っているのに心の中では泣いていたり、嬉し過ぎて涙が出たり、怒りながら本当は謝りたかったりすることがありませんか。 僕は、この前Twitterで、 「人の心の中を想像するのは、誰でも同じです。障害があるからという前提を元に考え過ぎると、想

            「僕が跳びはねる理由」を映画館で見ました(その2)

            映画「僕が跳びはねる理由」では、5人の重度の自閉症の青年たちの生活がクローズアップされています。 ※前回のnoteはこちらです。 この前のnoteでもご紹介したインドのアムリットさんは人物画を描くアーティストですが、絵を描いている最中に、とても苦しそうな表情をするシーンが出てきます。 それを見て、「つらいことを思い出したのかな」「嫌なことがあったに違いない」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 その人の心の中は本人にしかわかりません。だから僕の意見も想像で

            「僕が跳びはねる理由」を映画館で見ました。(その1)

            映画「僕が跳びはねる理由」をご覧下さった皆様、どうもありがとうございます。 僕も先日「僕が跳びはねる理由」を映画館で見ました。 映画だからこそ味わうことのできる映像や音楽、音響に改めて感動しました。多方向から響いてくるサウンド、大画面で見る映像は、その人の日常に入り込み、すぐ側にいるかのような距離感で見ることができます。 映画を見た際、僕が見ている世界観に近いと思うようなところがいくつかあったので、今回はこの中のふたつの場面について書いてみたいと思います。どちらのシーンも

            光を見てと言ったのに

            光を見てと言ったのに 暗闇ばかり見つめる人 そこには何もないんだよ 未来を見てと言ったのに 過去ばかり見つめる人 時間は戻ってこないのに 前に進もう 心配はつきないけれど 前に進もう 不安を抱えながら 反省も後悔も忘れちゃいけない それでも前に進むのだ 「悲しいね」ってつぶやいたら 「悲しいよ」って誰かが言った 光を見てと言ったのに 暗闇ばかり見つめる人 そこには何があるというの 未来を見てと言ったのに 過去ばかり見つめる人 時間は戻って

            よく晴れた日には

            よく晴れた日には いつもよりたくさん笑おう 嫌なことなんて忘れて お腹の底からアッハッハ 青い空が味方してくれるのだから 雲ひとつない空が 僕の心を照らしてくれる 悲しげな気持ちも 少し上向きに 心に羽が生えたなら 僕は鳥になれるのだろうか 自分の体についている2本の足を そっとさすりながら 空にお辞儀をする よく晴れた日には いつもよりたくさん笑おう 楽しかったことを思い出して 今自分が生きていることに感謝しよう 誰だって泣きたくなるよう

            悲しいんじゃない

            「悲しいね」って言われたら 「そんなことない」って答えます 「悲しいの?」って聞かれたら  黙って首を横に振ります 「悲しそう」って言われたら  無理に笑顔をつくってみせます 「悲しいでしょ」って聞かれたら  少しむくれて怒ります  みんなわかってくれないの  私の心を  誰もわかってくれないの  私の気持ちを  悲しいんじゃない  悲しいんじゃない  悲しいんじゃない  そう見えても言わないで  悲しみと寂しさは別のもの  悲しみと苦しみは

            人が人であるがゆえ

            人が人であるがゆえ うつろいやすい 人が人であるがゆえ 変化し続け 人が人であるがゆえ 死を恐れる 人が人であるがゆえ 孤独を求め 人が人であるがゆえ 誰かを愛する 人が人であるがゆえ 食べては寝る 人が人であるがゆえ 人を憎み 人が人であるがゆえ 人を赦す 人が人であるがゆえ 後悔し 人が人であるがゆえ 嘆き悲しむ 人が人であるがゆえ 自分にやさしく 人が人であるがゆえ 美しい 人が人であるがゆえ 私は私なのだ

            4月2日は「世界自閉症啓発デー」そして映画「僕が跳びはねる理由」スタートします!

            4月2日は「世界自閉症啓発デー」です。 イギリスで制作された映画「僕が跳びはねる理由」が日本でも4月2日から、公開されます。 この映画は、世界各地で暮らしている5人の自閉症者の生活の様子や思いを通して「生きる」とは何かということを問いかけています。自閉症者の視覚や聴覚など言葉では説明できない感覚や感性を映像という方法で表現してくれています。それは、とても興味深いことだと思います。 意識下で起きている感覚は、自分だけにしかわかりません。それを僕は、著書「自閉症の僕が跳びは

            逃げなくちゃ

            しんとしている静けさは怖い どこかに連れて行かれるのではないか という恐怖にとらわれる 「逃げなくちゃ」 どこへ? 「逃げなくちゃ」 どうやって? そんなことわからないよ じっとしたまま時をやり過ごす ああだこうだと言いわけしながら 首を振る もうだめだな すべての出来事が無意味に感じ脱力する  この世に終わりがあるなら 人生はどうなるの 人生に終わりがあるなら この世はどうなるの 時間に追われているのか 時間を追っているのか 僕の足元は

            朝起きて空をながめる

            朝起きて空をながめる 窓を全開に開け放ち 体中で風を受け止めよう 目を閉じて大きく息を吸う 昨日の失敗はもう忘れた うーんと背伸びしたら 少しだけ背が伸びるのかな 何だかいい感じ 笑われたって気にしない 鳥のように羽ばたけなくても 僕は両手を伸ばして 光をつかみ取る

            おぼろ雲

            暖かい日には気持ちが落ち着く 我慢できないと思っていた悲しみも薄れる 何ということもない出来事に振り回され あり得ない想像に惑わされていた心も 安らぎを取り戻す  植物の生命力に圧倒されながら 空の広さに癒された 僕なんてちっぽけな人間だ それがどうした 自分の存在意義を 自分で打ち消しながら 理由もなく明日の天気を心配するのはなぜなのだろう 何の苦痛もない人生なんてない そんなことはわかっているよ 誰に言い訳をするでもなく ひとりつぶやく僕の体