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飴の雨

昼飯に、南インドのカレーを食った。パクチーとトマト、ヨーグルトのきいている酸っぱいカレーだった。あまり好きな味ではない。あまり好きな味ではなかったが、なんとなくおいしい気がして、ぺろりと平らげた。こういう、あんまり知らない味は、慣れるまで、”あまり好きではない”という感想になってしまうのかもしれない。数回食うと、”なんか好き”になるのかもな。そんなことを思いながら、食後のホットチャイを飲んで、会計をして、店を出た。山奥なので、車である。 車を出そうとエンジンをかけたとき、声

    • 米粉のパンケーキ

      本日は仕事が休みなので、昨日知り合った骨の鳥と昼飯を食いに行くことにした。近場にうまいパスタ屋があるので、そこに行こうと提案したところ、小麦アレルギーなので無理とのこと。驚いて、「きみ、骨だけなのに、小麦アレルギーなんて本当かい」と聞くと、「アレルギーくらい、なんにでもあるさ。あんまり見た目で決めつけるもんじゃないぜ」とたしなめられた。確かに、先日、日光アレルギーを発症したチューリップが、酸素で栄養を取り入れることに成功したって、ニュースでやってたっけ。「そうか。偏見で話して

      • 骨の鳥

        本日は、仕事が休みだったので、ドライブがてら福井にやってきた。越前ガニが11月初旬で解禁されたらしい。食べてみたい。 高速道路を下りて、下道を走っていると、車の天井に、なにかがぶつかる音が聞こえた。なんだろうと車を路肩に止め、外に出て、車の上を見る。そこには、骨の鳥があった。わたしが驚いて動けないでいると、骨の鳥は、慌てた様子でまくし立てた。 「ああ、ああ、申し訳ない。こんなつもりじゃなかった。飛べるはずだったんだ。こんな、ううん、飛べずに。あの、落ちるとは。確かに、こんな

        • マクドナルドのハンバーガー

          わたしはマクドナルドのハンバーガーが好きなので、ときどき、食べに出る。セットにポテトなんかをすすめられるが、いらないので、いつもコーヒーとハンバーガーだけだ。総額、300円くらい。安上がりで美味いし、椅子もある。 本日は髪を切りに行く予定があり、早めに出たので、時間が空いてしまった。ちょうど昼飯時だったので、散髪前にハンバーガーでも食おうかと、マクドナルドに入った。それは良かったが、満席だ。テイクアウトにして、そのへんの公園で食おうかと思ったが、外で食うには寒い気温になった

          ヤマネコとのドライブ

          本日は仕事が休みだったので、ヤマネコを誘ってパンケーキを食いに出た。天気は、あいにくの雨。ヤマネコ宅の前に車をつけると、彼は、長靴を履いて外に出てきた。「お、長靴をはいた猫だな」と私が笑うと、「うるせえ。その本のせいで、しばらく、長靴を履くのが恥ずかしかったんだぜ」と眉間にしわを寄せた。「もう、吹っ切れたけどな。他人を気にせず好きな服を着れなきゃあ、どうしようもねえよ」 パンケーキの店は、郊外にある。しばらく車を走らせると、窓の外は、畑や田んぼばかりの絵になった。ヤマネコは、

          ヤマネコとのドライブ

          生ビール

          新しい仕事を教えてもらったので、本日は、少し、疲れてしまった。新しいことを覚えると、脳がしんどくなる。なんとなく、このまま、ひとりの家に帰るのが物悲しく思ったので、職場最寄りの立ち飲み屋に入って、一杯、ひっかけて帰ることにした。店に入ると、週末だからか、安価な店だからか、かなり賑わっている。ざっと見渡すと、カウンターに狭いスペースが空いていたので、そこに、体をねじ込んだ。店員さんに「すみません、生ビールを」と注文する。「はいよ」と声が返ってきたと同時に、目の前に、三十センチほ

          生ビール

          野良猫

          家に帰ると、猫がいた。最近、いたるところで、よく見かける猫だ。「勝手に入るなよ」と叱ると、ばつの悪そうな顔をした。ばつの悪い顔をしただけで、自分から出ていこうとはしなかったので、脇腹を抱えて、玄関から、無理やり外に出した。すると、猫は、さみしそうな顔をして、「勝手に入って、悪かったよ。外、暑いんだ」と言う。なんだか、かわいそうになってしまって、部屋に入れてやることにした。猫は、部屋の中におろされると、嬉しそうに伸びをして、腹を出し、ごろんと寝ころんだ。お礼は言わないんだなあと

          イナゴのつくだ煮

          仕事帰りに、パートさんから、イナゴのつくだ煮をいただいた。簡易な紙袋に入っていた。鮮度がよすぎるのか、紙袋ごと元気にガサガサと動いている。そのため、渡された拍子にうまく掴めず、床に落としてしまった。紙袋の入り口に隙間ができて、そこから、イナゴのつくだ煮がピョンと飛び出し、三匹逃げた。パートさんは、「あらあら」と笑っていたが、私は、もったいないなあという気持ちと、申し訳ないなあという気持ちで、どうにも、笑えませんでした。つくだ煮になっているから、逃げたとしても、誰かに食べられる

          イナゴのつくだ煮

          晩飯のネズミ

          朝、起きたら、そろそろ食おうと思っていたネズミが逃げていたので、ひどい気分だった。入れていた檻の柵が広かったらしい。とにかく、腹が減ってはイライラがつのるばかりなので、朝飯にしようと思って、水槽で、うじゃうじゃと泳いでいるおたまじゃくしを数匹つまみあげ、口に放り込んだ。カエルにならない、おたまじゃくしだそう。数か月前に、最寄りのホームセンターで、メスとオスを2匹ずつ購入してみたのだが、どんどん増え続けている。飯には困らなくなったが、毎日、おたまじゃくしってのも飽きてしまった。

          晩飯のネズミ

          サバの塩焼き

          本日は仕事が休みだったので、朝は、映画鑑賞をしていた。加入しているアマゾンプライムの、おすすめに上がっていたものを観た。タイトルは覚えていない。昼過ぎ、腹が減ったので、外に飯を食べに出た。自宅から数件となりにある、定食屋だ。休みの日は、わりとここに来る。 店に入ると、見知った猫がいた。猫は入り口に向かって座っており、私に気が付いて、右手をあげた。そして、ニコニコ顔で、大声を出す。「よう!東じゃねえか!」 この猫は、やかましいので苦手である。「ああ、こんにちは。偶然ですね」と言

          サバの塩焼き

          野良の黒猫

          家に帰ると、部屋に、でかい黒猫がいた。ときどき勝手に、私の部屋に入ってくるが、野良である。テレビの前にどっしりと座って、何かのアニメを見ている。玄関ドアの開閉音に反応したのか、耳がピクリと動くのを見た。帰ってきた私に気が付いたのだろうに、かまわず、画面を睨んでいる。私は一応、アニメ視聴の邪魔をしないように、黒猫の後ろをそろりと抜けて、クロゼットの前に立った。コートを脱ぎながら、異様に部屋があたたかいことに気が付く。エアコンが稼働している。私が家を出るときに、電源はオフにしたは

          野良の黒猫

          月と黒猫

          気分がよかったので、少し遠くまで散歩をした。ふと、空を見ると、月があまりに綺麗だったので、挨拶をしてみた。 「こんばんは、とても綺麗ですね」 瞬間、月は燃えたように赤くなり、しゅっと山の方に隠れてしまった。月の光源がなくなると、だいぶん暗くなってしまったので、懐中電灯を懐から出して、電気をつける。すると、後ろから「おい、おまえなあ」と声がした。私は振り返って、声の主に懐中電灯を向ける。「まぶしいな」懐中電灯の光をくらって、声の主は眉間に皺を寄せた。でかい黒猫だった。 「おまえ

          月と黒猫

          ひどい腹痛

          本日は、ひどい腹痛により仕事を休んだ。起床時、腹に若干の違和感があった。なんだか変だなあと思いながら、シャワーを浴びて、服を着替える。そうしていると、違和感は、はっきりとした痛みとなり、それがじわじわとひどくなって、一時間後には、立っていられない。これはいけないと会社に遅刻の連絡を入れ、ロキソニンを飲む。下している痛みではないし、鎮痛剤を飲めば、長くても三十分ほどでおさまるだろうとたかをくくっていた。 それが、一時間たってもおさまらない。おさまるどころか、痛みが増すばかり。寝

          ひどい腹痛

          赤い靴を履いたネズミ

          目を覚ますと、まだ部屋は暗かった。数時間前まで、いつもの店で、顔なじみの客と酒を飲んでいた。良い気分で帰宅し、風呂に入って着替え、布団に入った、と思う。最近は、酒を飲むと、記憶がなくなっていけない。首を回して時計を見ると、針は、三時半をさしている。酒を飲むと、眠りが浅くなる。深夜に目を覚ますことは珍しくないが、それにしては、いつもより、頭がしゃっきりとしている。もう一度、眠らなければいけないと思い、目を閉じてはみたものの、眠気がない。眠れそうにない。 ふむ、と思って身を起こ

          赤い靴を履いたネズミ

          屋根裏のネズミ

          仕事が休みだというのに、朝早くに目が覚めた。外はまだ薄暗い。立ち上がって、ストーブの電源を入れる。せっかく早く起きたのだし、散歩に出ようと思い立つ。途中、サンドイッチとコーヒーを買って、適当な公園で、早い朝飯にすることにした。外出用の服に着替える。 突然、うしろで音がした。ポテンと何かが落ちるような音。振り返って見ると、ネズミが腹を上にして、床に転がっていた。腹を見せながら、私を見て言う。「うお、見つかった。隠れていたのにな」 おどろいて「なんだ、なんだ。どこから来たんだ」

          屋根裏のネズミ

          ジャケット

          とんでもなく寒いので、上着を買った。古着で二万円。首まわりと裏地に、ごついボアのついた、オーバーサイズのジャケット。あたたかくてよい。しかし、前に使用していた人の念がこもっているのか、ときどき話し出すので、どきっとする。 例えば、つい先ほどあった話。私は、職場最寄り、週に四回は立ち寄るスーパーをうろついていた。帰宅時間の夜九時には、売れ残った総菜が半値になる。元気があれば自炊もするが、最近はめっきり、安い総菜と安酒が晩飯だ。半値になった総菜たちをいくつか物色していると、ジャ

          ジャケット